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たぬきさんのぼくと、きつねさんのぼく

作者: 365day


 あるところにたぬきさんがいました。

 たぬきさんはいつもなやむことがありましたが きょうはいつもとちがってもっとこまっているようでした。


「ぽんぽん、こまったぽん」


 おめめのまわりのくろいもようが、いつもよりたれているのでとてもこまっているようです。

 こまった、こまったぽん。と、じめんにおしりをつけてなやむすがたは、まるでいぬのよう。


 なやんでもなやんでも、たぬきさんにはこたえがだせないようです。


「ぽん、ぽん」


 そんなところできつねさんがやってきました。

 どうやらぽんぽんとなやんでいるたぬきさんをみかねてでしょうか。


「こんこん、なににこまっているこん?」


 きつねさんがたぬきさんにききました。

 すると、たぬきさんはいいました。


「ぽんぽん、ぼくはみんなみたいにへんしんすることができないぽん」


 どうやらうまくばけられないことで、なやんでいたようでした。 


「みんなはこのはっぱをつかわなくても、へんしんできるけど、ぼくははっぱをつかわないとできないぽん」


 ぽんぽんとなやんでいたたぬきさんは、しだいにぽんぽんとなきはじめてしまいました。


「ぽんぽん。ぼくもみんなみたいにへんしんしたいぽん」


 そこできつねさんは、こういいました。


「こんこん、じゃあぼくといっしょにへんしんのれんしゅうしようこん」


 ぽんぽんとないていたたぬきさんは、くろいもようのくろいめできつねさんをみました。

 そんなきつねさんはたぬきさんのめをみながらいいました。


「こんこん、じつはぼくもうまくへんしんできないこん」


 そのことにたぬきさんはおおよろこび。

 ぽんぽんとなやんでないていたことは、まるでうそのよう。


 こうしてたぬきさんときつねさんは、へんしんのもうとっくん。


 くるひもくるひもまいにちまいにち、もうとっくん。

 はれのひも、あめのひも、かぜのひも、ゆきのひも、もうとっくん。


 けれども。


「ぽんぽん、できないぽん」


 たぬきさんはいつかみたときのように、ぽんぽんとないてしまいました。

 それもそのはずです。


「ぽんぽん。きつねさんはへんしんできるのに、ぼくだけはっぱがないとできないぽん」


 たぬきさんは、まいにちとっくんしても、やっぱりはっぱはひつようでした。

 くらべてきつねさんはへんしんできました。

 それどころかじつはたぬきさんにはなしかけるまえからへんしんできていました。

 けれども、それをかくしていました。

 かくしてかくして、きつねさんはかくしました。

 きつねさんはいいました。


「こんこん、ぼくだってできるんだからたぬきさんもできるこん」


 ぽんぽんとないてしまったたぬきさんはなきやんで、きつねさんとがんばりました。


 くるひも、くるひも、あめのひも、かぜのひも、ゆきのひも、まいにちまいにちがんばりました。


 けれども、たぬきさんのへんしんにはやっぱりはっぱがひつようでした。

 じょうたつしないたぬきさんは、きつねさんにいいました。


「ぼくはなにをしてもどうやってもできない。けれどもきつねさんはできる。

ぼくはこんなにできないのに、おしえてくれるきつねさんのことがすきぽん。でも、こんなぼくだからもうしわけないぽん。

だってきつねさんのやさしさにあまえてたぽん。

だから、ぼくなんかよりも、みんなのところにいったほうがいいぽん」


 そういってたぬきさんは、きつねさんのまえからきえてしまいました。


 あとかたもなくきえてしまいました。

 そのことにきつねさんは、こまってしまいました。

「こんこん、かってにきえないでこん」


 きつねさんのめからなみだがこぼれました。


 たぬきさんはきつねさんのことが、だいすきでした。

 ずうっとずうっとすきでした。


 けれども、きつねさんはやさしくて、めんどうみがいいから、それがとてもたぬきさんにはつらかったようでした。



――※――――※――――※――――※――


 実はきつねさんもたぬきさんのことが好きでした。

 けれども、最初は嫌いというよりは無関心でした。

 変身のできない動物は、そもそもとして自分の相手にはならないとされていたのです。

 だからきつねさんはたぬきさんをいないものとして考えていました。


 けれども、そのぽんぽんと泣く姿が、妙にきつねさんの気を引きました。

 気を引いて……、見下すことにしました。

「こんなことも出来ないのか」といった見下しです。

 けれども、最初から出来ていることを武器に使っても、面白くありません。


 どうせなら、と最初は出来ない振りをして、ここぞとばかりに出来るようになって一抜ければ、きっとたぬきさんは泣いてしまう。そう考えてたぬきさんといっしょに練習をするようになりました。

 けれども、きつねさんは。


 いいえ、彼女は。

 たぬきさん、いえ彼の姿がひどく眩しく見えました。

 どうしてかは分かりません。けれども、柔らかい光で彼女を包みました。

 それは彼女にとって未知の出来事でありました。


 それからはたぬきさんのことを(おもんばか)るようになりました。

 ごはんを食べるときも、寝るときも、練習するときも、いつでもどこでも、たぬきさんのことが頭にちらつくようになりました。

 そうして彼をしぜんと視界の中に入れてしまうようになりました。

 考え事をしている内にうっかり変身出来ることがバレてしまいました。

 こうなってしまってはたぬきさんとは疎遠になってしまう。


 焦った彼女は、

「こんこんじゃあ、こんどはたぬきさんが変身出来るように、ぼくが先生になるこん」

 と、しぜんと口に出ました。


 ほぼ無意識でした。あんなにもたぬきさんのことが眼中になかったのに、あんなにも見下してやろうと息込んでいたのに。

 けれども、……二匹の奇妙な関係は続きました。


 続いて……続いて。

 結果は依然(いぜん)として、変身できないたぬきさん。

 変身できる先生役のきつねさん。

 きつねさんにとって、(たぬきさん)がいるこの環境は幸せでした。


 でも、たぬきさんは「ごめん」と言って、きつねさんに「さよなら」を切り出しました。

 これにはきつねさんは驚きました。

 だから、

「なぜ?」と聞きました。


 直して欲しいところ、不満点があれば教えて欲しかったのです。

 そこを直せば、きっと……という意志でした。

 けれども、たぬきさんの答えはきつねさんにはどうすることも出来ませんでした。


「ぼくはなにもできなかった」

 きつねさんはなにも言い返しませんでした。何故ならまだたぬきさんの話は終わっていなかったからです。

「比べて、きつねさんはなんでも出来た」

 一呼吸分置いて、続く独白。

「ぼくはなあんにもできない。みんなが出来る変身もはっぱがなければ出来ない。ぼくはきつねさんの足を引っ張っている。だから」


 きつねさんは頭が混乱しています。

 その中でたぬきさんは、

「だから、別れよう。きつねさんはなんでも出来る。その隣にぼくがいていい訳がない」


「ちがう、ちがう」

「ごめん、きつねさん。物覚えの悪いたぬきで」

 うわ言を述べるきつねさん。対して、その台詞を最後に、ふっと消えるたぬきさん。


 影も形もありません。

 たぬきさんは消えました。

 葉っぱもなしに消えました。


 きつねさんは謝りたいことがありました。最初に考えていたことをでした。

 きつねさんはたぬきさんが考えているほど、よい性格はしていないと伝えたかったのです。


 そして何年も諦めずに練習、努力を続けていた姿を見ていたときに感じたことを、伝えられませんでした。

 だからきつねさんは、たぬきさんのことを いつまでもずうっと探しているとのことでした。

 彼の眩しい姿が忘れられなくて。





 深夜の一時間と出勤途中の三十分で書くものじゃないなと思いました。

 皆さんも締切ギリギリにどうこうするのはやめましょうね。

 ちゃんと時間に余裕を持ってやりましょう。

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