片想い? とんでもない、両想いな上にヤンデレ拗らせてます。どっちが?
年末に投稿。珍しい上に新作とか、おいおい(笑)
朝、教室に入ったらいつもの光景があった。
「佐武くぅーん! お弁当作ってきたのぉ! 一緒に食べよぉう」
「あんたのマズイのなんていらないわよ。佐武くんあたしと食堂で食べよう?」
「まな板さんがおかしなこと言ってるー。まなぶはあたしと食べるのにー」
「あなた方みっともないわよ。学、私と生徒会室で食べましょう」
あー、いつものハーレムかぁ。
「おはよー」
あいさつして自分の席に座る。
「はよ。あれ、ダンナは?」
「お呼びだしー」
「ああ。朝から無駄な労力使ってんのね。フラれるのわかってるのにさ」
友達の麻ちゃんは呆れてるけど、いっちゃんはモテるから仕方ないのさ。
いっちゃんーー高橋壱李は私の幼馴染みで初恋の人で最愛の人である。優しくてイケメンで笑うとへにゃりとかんわいいのである。最強である。
対する私、天原寧依は平平凡凡だ。いっちゃんのとなりに立つのは不釣り合いだと陰口やら嫌みやらお呼びだしやらされるけど、でも好きなのでやめられない。片想いだしこれくらいは許してほしい。
「あんた相変わらず鈍ちんねー」
「麻ちゃん、今日中庭でお昼食べない? たくさん作ってきたんだ」
「高橋がいいって言ったらね」
「いっちゃんはいいって言ってたよ?」
「……あの独占欲の塊が?」
「? 誰のこと?」
「……なんでもない」
早起きして作ってきたんだ。三人で食べるの楽しみだな♪
「あ、天原!」
「はい?」
誰かと思ったら、ハーレムの主だ。名前はなんだっけ? まぁ、いいや。なんの用でしょう。
「天原、今日俺とお昼食べないか?」
「はい?」
なんですと? 聞き返そうとしたけど、ハーレムメンバーの悲鳴の方が早かった。
「まなぶ!?」
「佐武くんなんでそんな女なんかと!!」
「落ち着いて、学。保健室行った方がいいかしら」
「まなぶ、ころんだぁ? 頭打ったぁ?」
うん、一体どうした。今まで話したことなかったよね。
「転んでないし打ってない。そんな女は失礼だろ」
ハーレムメンバーを一刀両断したハーレムの主さんは私に向き直った。
「ずっと話してみたかったんだ。いいだろう?」
「いや、お断りします。いっちゃんと食べるので」
「は!?」
なんでそんなに驚くかな。断られると思わなかったと? うわ、どんだけ自意識過剰さんですか引くわー。
「ちょっとあんた! 佐武くんからのお誘いを断るなんて何様!?」
「なんて高飛車な女なのかしら」
「信じられなぁい」
「ブスのくせにー」
ブスは余計だと思う。高飛車もなにも、お受けしたらしたで怒るくせに。てか、私には受ける理由がありませんがなにか。
「天原、じゃあ明日はいいだろう?」
「悪いけど、明日もいっちゃんと食べるので」
「!? そんなにいっちゃんとか言う奴の方がいいのか!?」
「? なにをそんな当たり前のことを。いっちゃん以上のいい男なんていないでしょ?」
私の想い人は超いい男なんだから。なのに人懐っこいワンコみたいな笑顔は超かんわいいとか、なにそれ私の心臓止める気ですか? もう喜んで!
「呼んだ?」
ひょこん、といっちゃんが顔をだした。きょろきょろと教室を見回して、私を見てへにゃりと笑う。はぅ、かんわいい!
「どうしたの? 佐武、寧依になんの用?」
「いっちゃんって、高橋のことか」
「そうだけど。それ、寧依にしか許してないから呼ばないでね」
私の隣に座ったいっちゃんがこてんと首をかしげる。はぅ、かんわいい!
「っ、天原! 俺とつき合ってほしい! いいだろう?」
「お断りします。。いっちゃんと帰るし。そもそも、よく知らない人と出かけるのは嫌」
「俺とは?」
「いっちゃんとならどこまででも!!」
「うん、いつまでもどこまでも一緒にいようね」
「喜んで!!」
うわぁい! いっちゃんに一緒にいようねって言われた! 嬉しい!
「あんた、鈍すぎ」
「嬉しい!」
「はいはい」
「そう言うわけだから。もう話しかけないでね? 寧依は俺とずっと一緒だから」
「っ、俺は諦めないから」
「いいけど、望みは一ナノミクロンもないよ?」
「っ、そんなにか……」
なにを諦めないんだろ。買い物なら誰と行ったっていいだろうに。それこそハーレムメンバーと行けばいいでしょ。メンバーの生徒会会長さまは確かお金持ちって話だし?
「いっちゃん、お昼麻ちゃん一緒にいいんだよね? 中庭で食べよう?」
「うん、いいよ。でも、あーんするのは俺だけにしてね?」
「もちろん!!」
「あ、あーんて……」
なんですか。私の幸せな一時を奪おうとでも? 許すまじですよハーレムの主さん。
「佐武さぁ、寧依はずっと高橋しか見てないの。そんな寧依がよそ見なんてするはずないし、させるわけないでしょ」
しませんよするわけないさ! てか、佐武って誰? え? ハーレムの主さん? え? 覚えなくていい? いっちゃんが言うならわかった、忘れる。
「いや、覚えてくれよ!?」
「忘れた。だっていっちゃんが言ったもの」
「高橋至上主義かよ!?」
「いっちゃんの言葉は絶対なの」
「洗脳され済!?」
「いっちゃん嘘は言わないの」
「言わないだけだろ!?」
なんでハーレムの主さんに突っ込まれないといけないの。いっちゃん嘘はつかないの。当たり前でしょ、いっちゃんなのよ? カッコよくてかんわいいいっちゃんがそんなことするわけないの。
「私のいっちゃんとの時間を邪魔しないで? 貴重なの」
「天原!?」
「主さんはあっちにハーレムメンバーかいるでしょ、ちやほやされてたらいいと思う。あの人達うるさいし。囲みたい女子に、囲ませてあげたらいいよ。そうされたいから彼女達そのままにしてるんでしょ? お似合いだよ、きっと」
まったくもう。いっちゃんとの時間はプライスレスなのに。なにオーアールゼットしてるの、邪魔だなぁ。
「だよねぇ、寧依の時間は俺のだもんね?」
「うん!」
「大丈夫。寧依との時間は誰にも邪魔させないよ?」
「うん!」
「だから俺が18才になったら結婚しようね?」
「うん! ……あれ?」
「わぁい! 嬉しいな! じゃあこれにサインしてね?」
「うん! ……あれ?」
なにやら茶色い紙にサインしたけど、あれ? いいの、か? ……まぁ、いいや。いっちゃんすごくいい笑顔だし。うん、いっちゃんが嬉しいと私も幸せ♪
「これだけ独占欲の固まりに囲われてるのに気づかないとか、鈍い鈍すぎる」
「寧依はこれでいいんだよ。俺のなんだから」
「あ、そ。寧依泣かせたら許さないからね」
「それこそあり得ないな。これからそこのハーレムも黙らせとくし。寧依になんかしようなんてそれこそ何様なんだよ」
「あんたよくその本性、寧依に気づかれないわね」
「一生隠すに決まってるだろ。寧依の前ではかわいい俺だけでいいの」
「いや、寧依は多分どんなあんたでも惚れたままだと思うけど?」
「あー、早く結婚したい。独り占めしたい誰にも見せたくない」
「ヤンデレすぎる」
「うるさいな」
「16年も片想い拗らせるからよ」
「両想いだもん」
「だもん、て……」
「いっちゃん、麻ちゃんどうしたの?」
「「なんでもないよ」」
そ?
皆さま、今年もお世話になりました。
よいお年を!