わたしの国はこんな国です2
「ところでルティ、あなたこんなところにいていいの?」
わたしの記憶だとルティはお兄様に呼ばれていたと思うのだけれど、記憶違いだっただろうか。お兄様は優しくて家族や国民をとても大事にしている方だけど、厳しい方としても有名だ。でもその厳しさも理不尽なものではなくて道理の通ったものだから不満はあまりない。
ただしこちらの兄も堅物で今年二十三になるのに婚約は纏まっていない。悲しいものね…
「問題ありませんわお姉さま。お兄様には朝一番でお話してきましたもの」
ルティは胸を張ってわたしに宣言する。
わたしは失礼だと思ったが少し意外に感じてしまった。なにしろルティは大体言いたい事言ったら切り上げてしまうのだ。そのためルティと話す際、前置きをせずにいきなり本題に入って口を挟ませずにこちらの用件を言うという高いテクニックが要求される。
お兄様はもちろんそのテクニックを持っていらっしゃるから話せたのだろう。
と、思ったら…
「ルティ!!兄上が探しているぞ!!」
これまたやかましく登場した少年はわたしの弟であり、第二皇子のシリウスだった。
ルティとよく似た顔立ちをしているが、目元がキリッとしているし、髪も短い。
ってそんなことより、
「どうしてあなたたちはもっと静かにできないの…」
廊下をバタバタ走るのは百歩譲ってよしとしよう。朝から叫ばないで欲しい。
「申し訳ありません姉上。ですが兄上がかなりお怒りですので急がねばと…」
「ルーティー…?あなた話は済んだと言ったわよね」
ルティは気まずそうにわたしから目を逸らす。
「ルティ」
「はい…」
「わかってるわね?お兄様を待たせないで」
ルティは過去最速のレベルで走っていった。
ふと弟を見ると青褪めていた。なんで?