最悪の戦いⅩ
今回は二倍くらい長い……
エイドは改めてアジトを見渡すと壁にはひどい顔のシェリアがいて、違うところには同じように気を失っているミラン、地面には大きな穴が空いていた。
「クリアにレイス、セイラにニック、そしてミレアか。ウェンデルはどこだ?」
「穴の中」
「そうか」
エイドはクリアの頭を撫でるとゆっくりと腰を上げた。
いくらでも攻撃できる機会はあった。だが、ガノンは攻撃できなかったのだ。
しないのではなくできなかった。
その圧倒的な実力の前に驚いたのだ。
「俺の他にここまでオーラを出せる奴は初めてだぜ」
「そうか。俺はこれで二回目だな」
エイドは振り返ってガノンを見るとそっと息を吐いた。
「やられたぜ。まさか俺とギュレンをここまでうまく嵌めるとは思っていなかった」
「俺はもっと遅いと思ってたんだがな」
二人の静かな対決に割って入ってきたのは空気を読まないでお馴染みのセイラだった。
「ドルガン王国で何を見てきましたか?」
「普通のドルガン王国だよ」
セイラの問いに答えたのはギュレンだった。
「ドルガン王国はなくなってなかった。新聞自体が嘘だったんだよ」
「……新聞が嘘だった?」
「エイドが見た新聞の表紙にはこう書かれていたんだよ。『シューレン、一夜にて壊滅! 『最悪』による影響か!?』ってね」
「嘘……」
「信じられないのは俺達も同じさ。だけどエイドはそれ以外考えられないと思ったんだよね」
ギュレンがエイドの方を向くとエイドはその続きを言う。
「まさか俺達を倒すためだけにずいぶん前から画策していたとは思ってもいなかった。こいつらメディアをずいぶん前から脅してやがった。俺達のアジトだけに嘘の新聞を配達しやがった」
「え、それってつまり今日のために新聞会社に余計な新聞を九、いえ十人分作らせたってことですか!?」
「そういうことだ」
「待って」
「……おかしい」
エイドの言うことの中に一つだけ無理があった。いくら『最悪な罪』を嵌めようと画策していたといえ、一つだけ予定外の事態が起きていたことは間違いない。
それはエイドも知っている。
「ミレアの分の新聞もあることがおかしいってか?」
クリアとニックは同時に頷くとエイドは「おかしくない」と断言した。
「普通に考えてみろ。今日新聞が届いたのは何人分だった?」
「十」
「それだ」
『え?』
エイドも新聞が嘘だということに気付いて初めてそこに気付いたくらいだ。わからなくてもおかしくない。
「おかしいだろ。昨日仲間になったばかりのミレアの分の新聞が届いたんだぞ?」
「あ」
「え、ってことはまさか……」
四人は揃ってミレアを見た。ここに入ることを自ら知っていればその分の新聞を作ることなど造作もない。そういう顔でミレアを見る。
だがミレアは慌てて手を振る。
「待って! 違う! 私は関係―――!」
「すみません、動かないでください」
ミレアの腕を掴んだのは教育係でもあるセイラ。その目にはミレアに対する怒りとそんなミレアを仲間にしてしまった自分への怒り。
ミレアは怯えたように身体の震えが止まらなくなった。
「待てよ。ミレアは関係ねぇよ」
エイドはため息をついて拘束を解くように命令する。
「そいつが協力者ならそもそも仲間になるような真似はしねぇ。今はたまたま上手くいったがいかない可能性もあったんだ。リスクとリターンがつり合ってねぇ」
それを聞いてセイラはミレアを解放した。ミレアはホッと息をついたが恐怖は簡単に拭い去れなかったようで顔色はまだすぐれていない。
「……でもならなんで十枚の新聞が」
「考えられるのは二つ。予備で作らせたか、もしくは誰か一人増えることをあらかじめ知っていたか、だろ」
「あらかじめ知っていたなんて……! いや、まさか……」
セイラはレンの方を見た。
レンは人を馬鹿にするような笑みで肯定する。
「今更気が付くなんて遅すぎますよ。ボクが何度ヒントを出したと思っているんですか」
「どうやら後者らしいな」
「未来を見る能力……ですか……」
セイラが驚き、レンが不敵な笑いを浮かべているとギュレンがにこやかな殺気を向ける。その瞬間、レンはビクッと肩を揺らした。
「未来を見る能力であればこの程度でビクリとはしないはずだ。似て非なる能力だろうな」
ギュレンがそう言うとレンは「チッ」と舌打ちする。
そこで別の方向から殺気が向けられる。
「話が盛り上がってきたところ悪いんだけどよぉ。テメェらも殺していいんだろうなぁ?」
「ガノン、まだ二人の能力だけはまだわかっていないんだけど」
「関係ねぇよ。俺の絶対的な強さがあればよ」
「調子に乗るなよ、クソ野郎。テメェこそさっきの言葉を忘れたわけじゃねぇだろうな」
エイドが睨みを利かせてガノンを見ると、ガノンは鼻で笑う。
「テメェらが『最悪』と呼ばれる時代はもう終わりだってことだ。これからは俺が『最悪』なんだよ」
「そうかよ」
その瞬間、爆風が二人の間から発生する。
気が付くとエイドとガノンは先ほどまでいた場所から消えていて、爆風の発生場所に黙って立っていた。
「へぇ、俺の拳とお前の拳が相殺とはどうなってんだ?」
「俺としても今の結果に驚いているくらいだ」
二人はそれからものすごい速さで拳がぶつかり合うが、互いに無意味な打ち合いだと判断したのか、互いにその場から離れた。
それを見て驚いているのは『最悪な罪』の仲間達。
「なんであいつエイドと互角に戦えてんの!?」
「ありえない」
「……あの能力の抜け穴ですか」
「いや、能力を知らない相手が抜け穴を知っているなんてありえないですよ」
先ほどまでのガノンの速さについて来れなかったメンバー達は今もエイドとガノンの戦いがどうなっているか視認できない。だが、そのすさまじい風圧からこの場にいるのが危険であることは容易に理解した。
「とりあえずここは危険です。離れましょう、ほら、ミレアさんも」
「あなた、さっき私にしたこと後で覚えておきなさいよ」
「期待しています!」
「期待してんじゃないわよ!」
やはりセイラは空気が読めない男である。
◇◆◇
五人が避難し始めているのを見てギュレンは微笑みを絶やさずにレンと相対する。
「さて、俺達もそろそろ始めようか」
「能力は未だ不明ですが戦っている内にわかりますか」
「別に大した能力じゃないんだけどね」
ギュレンは手を後ろへかざすと手の中心から突風が起きる。その威力でレンへと直進すると拳を振りかざす。
「それくらいの攻撃にボクが怯むと思ってんの?」
ギュレンの拳を軽く避けたレンはギュレンの顔へと拳を振り上げる。ギュレンはそこでも微笑みを絶やすことはない。
「……ッ!」
レンの拳がギュレンへと当たる前にレンは焦ったように手を引っ込め、バックステップで距離を取った。
「どうしたんだい?」
「どうしたも何も今の攻撃が当たっていればボクの右手が使い物にならないところだったでしょう?」
「本当に未来を知っているみたいだね」
ギュレンはそれでも臆することなくただただ笑い続ける。それがレンの癪に障る。
「さっきからずっと笑ってるけど、何がおかしいの?」
「ああ、ごめん。何もおかしくはないよ。これは癖みたいなものだよ」
「気にくわない顔だね」
「よく言われるよ」
そしてギュレンは「どうしたら気に入ってくれるんだろうね」とレンに聞くが、レンはそれに答えず足を踏み出そうとしたところで、
「……ッ!」
ギュレンから殺気とはまた別の威圧というものがレンに向けて放たれる。その威圧はすさまじくレンの身体が震えだした。
だが。
「……ふぅ」
レンは長い仕事を終えたかのような声で短い息を吐いたと思うと、先ほどまでとはうって変わったように、その威圧をビクとも感じさせずにギュレンへと歩き出す。
「へぇ」
ギュレンは興味深そうな声を出す。
「一瞬にして俺の威圧をなんとも思わなくなるなんてどうなってんの?」
「君とはくぐってきた修羅場の数が違うだけだよ」
「これでもその数には自信があったんだけどなぁ」
ギュレンの困ったような顔にレンが一瞬鼻で笑ったときだった。
「隙を作ってはいけないよ」
その一瞬の油断の間にギュレンの身体はレンの懐へ完全に入っていた。そして左手の指を大きく開くと、指先をレンへと向ける。
「……取った……かな?」
その指がレンの首へと向かうと、
「どこが?」
レンは首を横に振ることでそれを避ける。
ギュレンはレンの横を通り過ぎた手首を回して軌道変更するが、それを読んでいるかのようにレンは膝を曲げる。手首をいくら回しても下までは届かない。
だがギュレンはそれすらも読んでいた。腕を下に振り落とすことで追撃する。
「いくらボクの行動を読んでも無駄だ」
レンは手を地面へと突きだし、足をギュレンの首の横を通り過ぎるように伸ばす。
レンの目の前をギュレンの指が通り過ぎて、ギュレンの指は地面へと突き刺さる。普通であればつき指しそうなものだが、ギュレンの指は地面へと埋まっていた。
「ギリギリで躱せることも全部知っているからね」
レンは伸ばした足をギュレンの首下に巻き付けると、重心が前に言っているギュレンの頭を地面へと叩きつける。
ギュレンの頭も地面へと突き刺さり、一瞬だけ垂直になるが一回転するようにギュレンは倒れた。
「これなら少しは効いたでしょ」
ギュレンは倒れたまま動かずにいるがレンは知っている。
「動けることは知っているよ。早く立ってよ」
「……頭に衝撃が来たんだよ? 少しくらい待ってもいいじゃないか」
「大した衝撃もないくせに何言ってんの」
「全部お見通しか」
ギュレンは首を左右に動かすと背伸びをした。
「久し振りにダメージを受けたせいか、少し楽しくなってきたよ」
「ドM?」
「それはセイラであって俺ではないよ」
それからギュレンは腕を馴らすように振ると、懐から透明な液体の入った試験管を取り出した。
「君はもう知っているかもしれないがこれを見てくれ」
「ッ!」
ギュレンはその試験管をそのまま下に落下させた。
もちろん試験管は落下と同時に割れ、中の水が飛び散るのだが。
ドンッ
普通の液体では起こりえない音がし、液体の落下地点には小さなクレーターが出来ていた。
「さて、この液体を君は躱せるかな?」
ギュレンは懐から二十本近くの同じ試験管を取り出し、レンへと放つ。
「ッ……」
レンは一瞬だけ険しい顔をしたが、すぐにその顔を崩す。
「余裕だよ」
レンはそう言って笑うと身体をうまく変えることで大量の試験管をすべて躱す。
だが、それを見てギュレンは先ほどまで以上の笑みを浮かべる。
「やっぱりそういう能力だったのか」
レンは目を大きく見開くと、唇を噛んで、
「……やられた」
「悔しがるってことは、俺は未来で当ててるみたいだね」
「むかつくよ」
「それもよく言われるんだ」
するとギュレンの近くで衝撃が起きた。しかし驚く様子をまったく見せず平然とした様子で言う。
「君の能力は名前までは知らないけどずばり未来を経験する能力だね」
「……はぁ。現実で言われるとやっぱり結構ショックだね」
ギュレンの言うとおりレンの能力は【予習】という名前の能力で、先の未来を見るのではなく経験することができる。
人によっては未来視より強いと思われるかもしれないが最低でもギュレンはそうは思っていなかった。すべての未来を経験できるのであればそれは間違いなく強いだろうが、それはできないとギュレンは考えている。
なぜなら。
すべて経験できるのであればギュレン達が来たときや戦闘の時にわざわざ驚く必要がない。
だが驚いたということは驚くことで何かしらのメリットがあるか、はたまた普通に驚いたのどっちかになる。
ギュレンの予想では後者の方で、つまりレンの能力には何らかの制限がかかっていると考えるべきだろう。
「能力の発動条件はその相手を見なければならないってところか?」
「……」
図星だった。
【予習】というくらいだ。その相手を知らなければ予習なんてできるはずがない。ミレアが仲間になることを知っていたのはセイラを予習していたときにそれを経験していたからだ。
だが【予習】のデメリットはまだあった。予習で出会った人物を予習することはできないということだ。だからミレアやギュレン、エイドの能力を知らなかったのだ。
「いや、だとすれば皆を外に出しておいてよかったよ。じゃないとこの戦闘すらも読まれてたかもしれない」
「【予習】さえできれば君なんかにここまで苦労することはなかったのに。本当に残念だったよ」
「へぇ、【予習】って言うんだ。なるほどね。それじゃその【予習】で俺がなんて今から言うか当ててみてよ」
「ッ! ……ふざけてんの?」
「本当だよ。それじゃ答え合わせといこうか?」
「予習していたら殺せなかったから……だって?」
「正解」
つまりギュレンが言いたいことはこういうことだ。
レンが予習していればレンは自分がギュレンに負けることを経験することになる。自ら死ぬ道に行くわけもないのでレンはこの作戦を必死に止めていたであろう。ということだった。
レンはギュレンを睨むと、
「傲慢な考えだね」
「それは初めて言われれるよ。実際俺は強いからね。傲慢でもなんでもない。事実だよ」
「それを傲慢と言うんだよ……!」
「そうなのかな。よくわからないな」
「腹が立つ……!」
「それは悪いね」
ギュレンとレンの静かなにらみ合いが続いていると、そんな二人の真ん中で衝撃が起きる。
さすがにギュレンも嫌そうな顔を浮かべた。
「ちょっとエイド。もっと遠くでやってよ」
「そんな暇ないんだよ……!」
「……へぇ」
エイドがそんなことを言うのは珍しいなと思っていると、そんなギュレンを腹ただしそうにレンは睨む。
「さっきからずいぶん余裕そうにしているけどボクには勝てないよ。さっきまでと同じく【予習】さえできれば戦闘で負けることなんてないんだから」
「君はさっきからずいぶん自分の能力のデメリットを差し出すんだね」
「どうせもうバレることは確定しているんだ」
「そうなんだ」
【予習】のデメリットにはまだあって、戦闘に関してはその戦闘が始まったときにしか予習できない。これも先ほどと同じように相手の戦い方を知らなければ予習ができないからだ。
「それより未来の俺は君に能力を教えないんだね」
「それは君が一番知っているだろ」
「まぁね。教える気はないね。俺は認めた奴にしか教えないんだ」
「君とエイドの能力だけは日常会話でも使われることはなかった。ボクが何度君たちの接触しても、仲間達の会話を聞いても言うことはなかった。なぜだ?」
「俺達の能力を知ってしまったら誰も俺達二人に近寄るものがいなくなってしまうからだよ。どこで誰が聞いているかわからないからね。俺達は人を殺すのを趣味にしているんだよ? 知りたいなら当てるしかない」
「ホントむかつくよ……」
レンはその瞬間に【予習】を使う。しかしギュレンを予習の中で何度揺さぶっても結局能力を言うことはなかった。
「はぁ、もういいよ。それなら君の言うとおり戦闘の中でその能力を掴んでやる」
だが、レンが動こうとした瞬間だった。
「……? なんだ、これは……?」
レンの身体は動かない。必死に身体を動かそうとしても何かに押さえつけられているように動けなかった。
さすがのレンも慌てた。予習時には動かせた体が動けなくなっているのだ。
「お前! 何をした!?」
「二人称が変わってるよ。でも、これで気付いたんじゃない? 俺の能力」
「……言えよ」
「未来の俺は頑固のようだね」
「いいから早く言えよ!」
「そう焦らないでちゃんと考えて。君を今押さえつけているのは空気なんだから」
「……は? 空気?」
「そう空気だよ」
「ふ、ふざけんな! だって戦闘の予習がまだ……!」
「予習する前に戦闘が終わっちゃったんだね」
「そ、そんなわけないだろ! これがお前の能力かよ!」
レンは一向に信じようとしないが、本当にギュレンはレンが戦闘に入ると同時に空気でレンを押さえつけただけだ。
「それより答えの方はわかったかな?」
「ちょ、【超圧】……だと?」
「どうやら未来の俺が言ったみたいだね」
「あらゆる『圧』を急激に増加……」
「そう、正解」
つまりレンが今動けないのはレンの周りの空気の大気圧が急激に高いため。先ほどの液体も水圧が高いだけのただの水。指で地面に穴が空くのも圧力を高くしただけで、『圧』の中にはもちろん威圧も入っている。
ギュレンは嬉しそうに笑うと、
「俺が本気でやればとっくに勝負はついていたんだ。ずいぶん遊んじゃったよ」
「……や、やめろぉぉぉ……」
「どうやら予習で未来の自分を経験したようだね。そう、君がいくら予習したところで俺には勝てないよね。もう動けないんだし。それじゃ、どう殺そっかな」
【予習】したところで避けられなければ意味がない。【予習】できたところで【予習】する前に戦闘が終わってしまえば【予習】の意味はない。
それをレンはやっと気付いた。
何度【予習】してもレンは勝てない。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
すべて同じ殺され方だった。
ひたすら衰弱させられ、無意味に殴られ、斬られ、燃やされ、溺れさせられ、感電させられ、曲げられ、窒息させられ、埋められ、食べさせられ、吐かされ、絶食させられ。
そして一人で寂しく死んでいく。
「やめろおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「うるさいよ。本当なら声を出したところで空気が君の肺の中に入っていくんだぞ。それを俺がわざわざ調整しているんだからな。俺は優しいから顔から上は自由にしてやってんだ。だから感謝しても叫ばれる気はない」
「やめろ! やめろ! あぁ……! あ、ああああああああああああああああああああああ!」
「どうやら予習することもできないくらい取り乱してるね」
「早く殺してくれよぉぉぉぉぉ……」
「もしかして能力の暴走でずっと【予習】してんのかな」
普通【予習】は一瞬で何回でも行うことができるが、一度取り乱したギュレンは能力が暴走しずっと【予習】されていた。
一瞬という小さな点の連続で時間は動いている。誰にもわからない回数をレンは苦しんでいる。それでもギュレンはそれをただ笑って見る。
レンは無意識で救いを求めるような目でギュレンを見る。
レンが予習で何を見たのかわからないがそんな目で見られてギュレンが言えることは一つ。
「それこそが『最悪』だよ」
その言葉だけが通じたのかレンはすべてを悔やむような目で、
「ぁ……―――」
レンは気を失い、それと同時に【予習】が切れる。
「君はよく頑張った。だから未来を変えてあげるよ」
そしてレンの身体は空気に押しつぶされグシャグシャになった。
それはレンの予習を越えた力と言えるだろう。




