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フィーネとエルファンス

「ここで一生……? 私が出たいと言っても?」

「ええ、そうです」


 愕然とする私に対し、セイレム様は微笑を浮かべてサラリと答える。


「……この神殿が立っている場所は神が最初に地上に降り立った場所で神域です。

 この杖についた聖石の効果が一番発揮出来る場所でもあります。

 その聖石と地場を生かした結界により、長く修行し術を身につけた私は、神殿内では万能に近い力を発揮できる。しかし、外に出ると力は弱ります。

 ……ですので、あなたをここから連れて逃げるより、神殿に篭っていた方がずっと安全なのです。

 ここにいる限り、皇子といえどもあなたを取り戻すことは不可能でしょう」


「……安全って……私の意志は?」


「意志だなんて、おかしいことを言いますね。あなた自身が望んだことなのに……。

 だってそうでしょう? 自ら神殿へ入ることを希望し、つい先日も迎えを拒み、ここに残る選択をしましたよね?」


「……っ!?」


 そう言われても仕方がない。

 私はこれまでの二年間、セイさんに心を許しながらも肝心の秘密を打ち明けていなかったから。

 この世界が乙女ゲームの世界であることや、エルファンス兄様との約束、いずれは俗世に戻るつもりであることなど。

 荒唐無稽な話以上に、聖女になるために熱心に指導してくれている人に、愛する人がいるからいずれ神殿から出るなんて言えなかった。


「もちろん、あなたが一生の愛を私に誓ってくれるなら別です。私と一緒であれば、神殿の外でもどこへでも好きなところへ連れて行ってさしあげますよ……」


 即座にエルファンス兄様のことを考え、私はぶんぶんと首を振る。


「一生の愛なんて……無理です……」


「どうして? 先日の朝まであんなに私に懐いていたではないですか?

 お土産なんかいらないから早く帰ってきて、とあなたが言ったとき、私はとてもとても嬉しかった。あなたからのたしかな愛を感じ、非常に満たされた気持ちになりました。

 なのになぜ同じその口で、無理だなんて言うんですか?」


「……それは……」


「誰か他の男性が心にいるんですか?」


「……!?」


 図星をさされた私は反射的に目をそらす。

 セイレム様は表情を強ばらせてから長い睫毛を伏せた。


「……そうなんですね……私はつくづく恋愛運の無い男ですね……。

 それで、その相手はいったい誰なんですか?

 あの見目麗しい双子の、思い上がった金髪の皇子ですか?

 それとも皮肉屋の黒髪の皇子の方ですか?」


「……違います……」


「さて、あの二人以上に魅力的な存在があなたの周りにいましたかね? 私の調査不足でしょうか……」


 セイレム様は繊細な指を自身の顎に絡め、探るような視線を私に向けてくる。


「……い…言いません」


 大神官の地位にあり皇帝の末弟であるセイレム様の権力は公爵家より上だろう。

 私はエルファンス兄様に迷惑がかかることを恐れた。


「……エルファンス・ディー・ジルドア」


 名前を耳にしたとたん、無意識にギクリと肩が跳ね上がる。


「しばらく神殿の門の前で別れを惜しんでいたと聞きましたが……そうなんですね。

 あなたは本当に分かりやすい……なるほど……あの銀髪の……根の暗そうな……」


「……エ、エルファンス兄様は根暗なんかじゃありません……」


 恋愛関係を否定しきれず、苦し紛れに別の部分でお兄様を庇う。


「そうですか? セシリア様のペンダントを通して見た印象では、とても影のある人物に見えましたが……」


「……影……?」


「そうです……あなたは気がつかなかったんですか?」


 答えられずに口ごもる。


「……たしかに冷たいほど整った顔の美形でしたね。

 どうせあなたの事ですから相手に好意を示され、それが嬉しくて、自分も好きになったと錯覚したのではないですか?

 理由はわかりませんがあなたは非常に愛情に飢えている……だから愛されるだけでぼーっとなってしまう」


 見透かすようなセイレム様の指摘が私の胸に鋭く突き刺ささる。

 たしかにエルファンス兄様に生まれて初めて人格を肯定され、好意を示されて私は嬉しかった。

 そして自分を必要としてくれていると知った時は天にも昇る気持ちだった。


「あなたは子供だ。最初に会ったとき、その無防備さや純粋さに私はとても驚きました。

 だから好かれただけで簡単に相手を好きになってしまっても仕方がない。

 けれど簡単に好きになった相手への想いは、簡単に忘れてしまえるものなんです」


「か……簡単なんかじゃ……ありません!」


 否定する私の頬はかっと熱くなった。


「では訊きますがあなたは彼のどこが好きなんですか?」


「全部です!」


 これは間違いなく本心からで私はエルファンス兄様のすべて大好きだった。

 見た目も、低い声も、優しさも、甘さも。

 普段は冷静なのに私の前では情熱的な一面を見せてくれるところとか。


「全部と言いますが、あなたは彼のことをどれぐらい理解しているんですか?」


 私は一瞬言葉に詰まる。


「どうしたんですか? 答えられないんですか?」


「お兄様のことなら何でも知っています!」


 遅れてムキになって言い返す私を、セイレム様はさらに厳しく追求する。


「そうでしょうか? 私にはそのようには見えませんが?

 あなたは本当のところ、彼のことを何も知らないのではないですか?

 そうだとしたら、真実、彼を愛しているとは言えないのではないですか?」


 追い込むように問い詰めながらセイレム様が私の身体を上から囲うようにベッドに両手をつく。

 思わず危機感をおぼえてびくっと身を縮ませる。

 と、セイレム様が薄笑いした。


「――ああ、警戒しなくても大丈夫ですよ。あなたはまだ子供ですから、身体を求めたりはしません。

 先ほどの消毒のキスで怯えさせてしまったんですね……すみません……。

 安心して下さい、私はあなたを大切にするつもりですから……」


「……だったら、もう一人にして下さい……」


 胸の動機がおかしいほど高鳴り、嫌な汗が全身から吹き出ている。

 色んな意味でこの緊張状態から早く解放されたかった。


「いいでしょう。その代わりそこに置いてある食事をきちんと摂って下さい。

 次にこの部屋に来た時に手つかずだったら、口移ししてで食べさせますからね」


 最後に怖いことを言うと、セイレム様は青銀の長髪をひるがえし、すっと奥の間へと去って行った。


 ようやく一人になった私は安堵の溜め息をつき、サイドテーブルに置かれた料理に目を向ける。

 セイレム様なら本当に口移しで食べさせかねない。

 想像してぞっとすると、慌ててスプーンを手に取り、冷め切ったスープを飲み始める。


 前世の私が大好きだったヤンデレ展開なのに泣きそうだった。


 実際、悲しいかな、セイレム様がやりそうなことならだいたい分かってしまう。

 何しろ「恋プリ」で一番ハマったキャラなのだから……。


 だけどエルファンス兄様については、ゲーム知識とこの世界で幼い時から関わってきた記憶があるのに、いまいち思考や行動が読めなかった。


『俺らしい? お前が俺の何を理解しているのか疑問だが……?』


 思い返してみると、お兄様も私が自分のことを何も分かっていないと思っていた?


『……お前の幼い約束が守られることを祈るよ……』


 それどころかお兄様は私の心が変わってしまうかもしれないと――?


 そこまで考えて私は愕然とした。


「私は……本当のお兄様のことを知らないのに好きだと言っていた……?」


 ううん、違う、そんなことない!


 否定してもセイレム様の術中にはまったように、浮かんだ疑念が毒のように心を浸食し始める。

 おかげで空腹なのに食事は半分ほどしか喉を通らなかった。


 結局、それ以上そのことを突き詰めて考えるのが怖くなって、寝不足だった私はそのままベッドに身を投げ出し、泥のような眠りに落ちた――




 ――暗闇に沈んだ視界に、ぼうっ、と雨に打たれている銀髪の少年――記憶の中のエルファンス兄様の姿が浮かび上がってくる――


 そうして気がつくと、私の意識は幼い少女の頃に戻っていた。


 まだ6歳だった私は小雨の中に立ち、エルファンス兄様の実弟のグリフィスの葬儀に参列していた。


 溺愛していた二番目の息子が亡くなり、ライラ叔母様は悲しむあまり棺の前で酷く取り乱していた。


「エルファンス! お前が馬になど乗らなければ、あの子がまねして落馬する事もなかったのに! お前がグリフィスを殺したのよ――この銀色の悪魔!」


 逆上しながらお兄様に飛びかかろうとしたライラ叔母様の前に、まだ6歳だった私が両手を広げて立ちふさがる。


「エル兄様のせいじゃないわ! みっともない人ね!」


 夫のロジェ叔父様や兄であるお父様に取り押さえられても、ライラ叔母様はお兄様をののしるのを止めなかった。

 10歳だったエルファンス兄様は無表情にそれに耐え、葬儀が終わった後もずっと墓石の前に立ち、雨に打たれ続けていた。


 私は小さい頃から従兄弟であるエルファンス兄様が大好きで、親族の集まりではいつも傍について離れなかった。

 唯一違うのは、同じくお兄様にべったりだったグリフィスがもういないこと。


「気にする事ないわ。変なのはエル兄様のお母さまの方よ。自分の産んだ息子に悪魔だなんて」


 私はお兄様がこれ以上濡れないように頑張って背伸びして傘をさしていた。


「フィーネ……あっちに行って……」


 振り返りもせずにエルファンス兄様が呟く。

 その言葉が聞こえなかったかのように私はしゃべり続ける。


「私のお母様もおかしいのよ。何でも私の言いなりだし、まるで怖がっているような目で見るの。変よね、自分が産んだ娘なのに」


 皮肉げに言いながら、胸に寂しさとも悲しさからともつかないチクリとした痛みがさす。


「どうしてエル兄様のお母さまはその銀髪を嫌うのかしら? とっても綺麗なのに……。

 私は金色より銀色が好きよ。だって私の黒い髪と青い目には金色より銀色の方がよく合うんだもの。

 だから私達ってすごくお似合いだと思うの。

 私大人になったら絶対にお兄様と結婚するの――」


 あ……絶対……。

 私はこの時も絶対という言葉を使っていたのだ。


 ――叔父夫婦も亡くなったグリフィスも金髪で、家族の中ではエルファンス兄様だけが銀髪だった。

 

 後年知ったのは、エルファンス兄様の実の父親は婚前のライラ叔母様を弄んで捨てた男だということ。

 醜聞を恐れたお祖父様が妊娠した娘に夫をあてがったらしい。

 だからエルファンス兄様のその美しすぎる顔も銀髪も、ライラ伯母様にとっては憎悪の対象でしかなかった


 ロジェ叔父様も血の繋がらない息子に対して冷淡で、家族の中でたった一人お兄様に愛情を寄せていたのが弟のグリフィスだった。

 そんな弟を失ったのだからエルファンス兄様の喪失感は計り知れない。


 グリフィスがいなくなった今、孤独になったエルファンス兄様に私だけがくっついていた。


「フィーはそんなにエルファンスが好きなのか……。

 あの子はとても優秀だし、ライラもあんな態度だ。うちもフィー以降何年も子宝に恵まれていないから、そろそろ潮時だろう……。

 あの子をうちで引き取って後継者にしよう」


 葬儀の晩、お父様がお母様にそう話しているのを聞いた時、私はとても嬉しかった。


 エルファンス兄様がジルドア公爵家に引き取られたのはグリフィスの葬儀が終わってすぐだった。


 私は喜んだ。大好きなお兄様と毎日一緒にいられるのだから。


 同じ屋敷に住むようになってからも、寡黙なエルファンス兄様はほとんど口をきいてくれなかった。

 だけど私はお構いなしにつきまとい続けた。


「ねえ、お父様にお兄様と結婚したいと言ったら駄目だと言うの、酷いと思わない?」

「当たり前だろう。お前が皇家に嫁ぐのがこの公爵家のためには一番良いのだから」


 9歳になった私の遠回しのプロポーズに対し、13歳になったエルファンス兄様の態度はそっ気なかった。


「私だってあの二人のことは好きよ。美しいものは大抵好きなの。

 逆に醜いものは大嫌い。だから私は醜くなる前に死ぬ予定なの。

 でもね、お兄様を好きなのはただ美しいからだけじゃないわ。

 私は太陽や明るいところも嫌い。肌が焼かれて痛くなるし、まぶしい光を見ているとくらくらしてしまうんだもの。たまにアーウィンを見ている時も同じように感じるわ。

 私は夜が好き。だから夜のような雰囲気のお兄様が好き――」


 それは私なりの精一杯の愛の告白だった。


 やがて11歳になると私は隠し通路を使って、エルファンス兄様の部屋へ忍び込むようになった。


「媚薬、入れたのに、飲まなかったのね。

 あーあ……今夜こそ、求めて貰えると思ったのに……」


「出て行けよ。お前みたいな子供の相手をするわけがないだろ」


「もう子供じゃないわ……それに花の命は短くて、咲いたあとはすぐ実となって腐り落ちてしまう。

 私は美しいうちに、醜く腐る前にこの世から消えないといけないの。

 だからそれまでに人生を一刻も無駄にせず、余す事なく楽しみたいの!」


 私は本気でそんなことを考えているような早熟な破滅型の少女だった。


「俺と楽しんだら、お前の大好きな双子の皇子と結婚出来なくなるぞ?」


「別にそんなのどっちでもいいわ。私、お兄様となら墜ちてもいいわ、どこまでも……地獄までも……」


「俺をお前の地獄に巻き込むのは止せ……!」


 そう言うエルファンス兄様の顔はとても苦しそうだった。


「抱くのは嫌でもキスぐらいしてくれない?

 もししてくれないならこの場で悲鳴をあげて、エル兄様に襲われたって嘘をつくわ!」


 苦々しい顔でエルファンス兄様は私にキスをすると――すぐに突き放した。


「もう、いいだろう!」



 そしてまた場面が変わり、私は早朝の雨降りの中、中庭の東屋にいるエルファンス兄様の元へと近づいていった。

 その日はちょうど、グリフィスの命日だった。


「……今日も雨なのね。涙雨なのかしら……」


「フィーネ……あっちへ行ってくれ……」


 だけど私はその場を去らなかった。

 幼い頃から私は人の言うことなどきいた試しがないのだ。


「一緒にいたいの」


「お前がそんなことを言うのは、俺だけにじゃないだろう……?」


 エルファンス兄様が皮肉をこめて言う。


「だってしょうがないじゃない。エル兄様は魔導省の仕事で忙しくて、私の相手を全然してくれないんだもの。双子に構うぐらいしか暇つぶし方法がないのよ。

 でも安心して、二人に関しても別にどちらがより好きとかはないのよ。

 なぜならどちらでも同じだもの。エル兄様以外なら……。ねぇ、エル兄様はどうしたら、私を求めてくれるの?」


「……お前が生まれ変わって全く別人にでもならない限り、それは無理だろうな」


「じゃあなるべく綺麗なうちに早く死ぬわね。そうして生まれ変わったら、お兄様と結婚して貰う」


「馬鹿なことを言うな……」


「どこへ行くの?」


「……もう仕事に行く時間だ……」


「うふふ……行ってらっしゃい……さようなら」


 エルファンス兄様を見送ったあとも、私は一人で東屋に留まり、雨に沈む風景を見つめていた。

 ――そこに雷が落ちた――


「きゃぁっ……!」


 悲鳴をあげながら長い夢から覚めると、そこは最奥殿にあるベッドの上。


 どうやらエルファンス兄様のことを考えながら眠ったせいで、過去の夢を見ていたらしい。


 呼吸を落ち着かせながら夢の内容を反芻し、今まで前世の意識が強すぎて表層に出なかった今世の自分の心の真実を思う。

 そうだったんだ。私が一番エルファンス兄様につきまとっていたのは、誰よりも好きだったから。

 いくら毒にまみれた性格でも、その愛情だけは純粋で本物だった。


 だからどんな冷たくあしらわれても決して傍を離れようとはしなかった。

 ただ一緒にいたかったから……!


 ――そんな日々を送っていたのに、私は雷に打たれたあと屋敷でエルファンス兄様を避けるようになった。


 今までどんな時もお兄様の傍から離れなかった私が避けるようになったんだ。


『そうか、わかった! これはお得意の悪趣味な冗談、演技なんだろう? いくらなんでもここまで人が変わるわけないものな』


 エルファンス兄様はフィーネが本心から避けていると、認めたくなかった?


『今まで散々人を振り回しておいて、ただ放っておいて下さいだ? ずいぶん虫のいい話だな……』


 お兄様はフィーネがつきまとわなくなった事を寂しく思っていた?


 そうやって様々な記憶を一つ一つ紐解いていくと、たった一つの真実に辿りつく……。


 お兄様だけが毒のような私であっても愛してくれていたのだと。


 それは異性としてか家族としてかは分からなかったけれど――

 私にはエルファンス兄様もずっとフィーネに惹かれていたように思えた。

 だけど毒のような部分が受け入れがたく、それを認めたくなかったのだ。


「恋プリ」のゲーム内で「1万回劫火に焼かれても」と大げさに否定した理由もそうだ。

 本当に何とも思っていないなら、お兄様の性格上、もっと簡単な言葉で否定した気がする。


 そうして――


『待っている』


 最後に向けられたあの眼差し。


 あの瞬間、幼い頃からずっと一緒にいた私たちが初めて離れ離れになったんだ。


 私はお兄様の心を思って枕に顔を埋めて泣いた。

 今のお兄様は一人ぼっちなんだ。

 いつもそばにいた唯一の存在である私がいないのだから。


 こんな風に夢でエルファンス兄様との思い出を見せたのは、前世の記憶を取り戻す前の私、フィーネの意志なのかもしれない。

 セイレム様の言葉に心を揺らされる私に、エルファンス兄様は想う気持ちは本物だと思い出させたかった。

 そして何より――


『そうして生まれ変わったら、お兄様と結婚して貰う』


 フィーネのそんな想いが、雷に打たれる運命を呼んだのかもしれない――


 そうだ。簡単な想いなんかではなかった。


『小さい頃からあなただけを、あなただけを見つめてきたの……!

 血の雨の中を歩いてでも、この手を鮮血で染め上げても、私はあなたへと辿りつきたかった。

 エルファンス兄様、何をしても人を殺してでも、地獄に落ちてもあなたが欲しかった』


 私は「恋プリ」の断罪のイベントで、フィーネがエルファンス兄様に最期に訴えた台詞を思い出す。

 そう、私のお兄様への想いは血の雨の中を歩いてでも叶えたいほどに深いものだった。


 その気持ちをはっきりと意識した今、とても一生ここになんていられない。

 なんとしても帰らなくちゃ!

 このままお兄様を一人にしておけないし、伝えたい想いもたくさんある。


 私は改めてこの神殿から出ることを――必ずエルファンス兄様の元へ帰ることを、強く強く決意した――



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