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神と幽霊の思い出

資格試験合格!

1級の検定が通りました!

なんの検定かは秘密。


「【万物創造 《回帰》】」


俺は幽霊の思い出の中のイメージを参考に力を発動させた。

俺の足元を中心に光が部屋を包み込む。

しばらくすると光が収まっていった。


「全員目を開けていいぞ。」

「「…あっ!」」

「…おお〜!」


わずか数秒。

その間に別世界が広がっていた。

いや、場所は変わらない。

在るべき姿に戻っただけなのだ。

埃だらけだった店内は綺麗に輝き、ピカピカであった。

椅子やテーブルもきちんと配置されており、カウンター内の棚にはカップや皿が整理された状態で収納されていた。

ティニアとリンが目を丸くする中、幽霊はテーブルやカウンター、棚をフワフワと飛んでまじかで見ていた。


「《このテーブルの足の傷…この子が爪を研いだ時の傷だ…。こっちは常連のお客様方からいただいたカップや皿…。…なんで?私が亡くなってから処分されたはずなのに…。》」

「本物じゃないぞ。あんたの記憶から作り出した偽者だ。でも、これこそがあんたの店だろ?」

「《はい。まったく同じです。…あの時に戻ったみたいです。》」

「あんたの店を俺が自由にしたらあんたから許可を貰った意味がないだろ?あんたの思い出の店とこのネコの家は俺が守っていく。だから、安心してくれ。」

「…私も守る。」

「私もね♪」

「《本当に……ほんとぅに…ぁりがと……ございます…。》」


幽霊は顔を覆い、涙を流す。

この人だったら大丈夫だ。

この人達に会えてよかった。

色々な物が胸の中を渦巻く。

ただ、歓喜。

身を震わすほどの喜びが体を駆け巡る。


「成仏の仕方はわかるか?」

「《言葉では言い表せませんがわかる気がします。もう未練はありません。》」


清清しい顔でそう答える幽霊。


「そうか。それじゃあ、お疲れ様。」

「…さよなら。」

「お元気で…っていうのもおかしいか。」


死んでる奴にそれはないと思うぞ、ティニア。


「《それでは…。》」

「…ねぇ。」

「《はい?》」

「…この子の名前はなんていうの?」


そういえば、聞いてなかったな。

幽霊は苦笑しながらも答えた。


「《決めていませんね。元々は野良猫だったので。よろしければ、貴方が名付親になってもらえませんか?》」

「…いいの?」

「《貴方がいいのです。この子の心を開いた貴方が。》」

「…わかった。」

「《それでは…》」


幽霊は淡く光り、霧散した。

ネコが寂しそうに小さく、本当に小さく鳴いた。


「逝ったな。」

「…うん。」


俺たちは幽霊が消えた空間をしばらく見ていた。

しかし、いつまでもそうしてはいられないのでリンにさっそく聞いてみた。


「リン。名前はどうするの?」

「…ゆっくり考える。」


確かに。

このネコの一生に関わることだもんな。


「いい名前つけてくれな。」

「…うん。クロにぃ。ありがとう。」


リンの嬉しそうな顔を見ると本当にリンにロリコンという言葉の意味を教えなくて良かったと確信する。


「言ったろ。取引だって。俺も得したからお礼を言う必要はないさ。」

「うそつき。…でも、やさしい嘘は好きよ。」


即行で嘘がばれた。

恥ずかしいので話を変える。


「さて、コーヒーでも飲むか?さっきので道具も材料もあるし。」

「そうよ。クロトスって喫茶店なんてできるの?」

「言ったろ。勉強以外はある程度できるって。」

「…コーヒー牛乳。」

「私はブレンドで。」

「少々お待ちを。」


ウォータドリップが好きだが時間がないのでネルドリップの準備をする。

ミルで豆を挽き、それを抽出。

店内にはコーヒーの匂いがたちこむ。

抽出したコーヒーをカップに注ぐ。


「はい。お待たせしました。」

「いい匂い…。」


ティニアは砂糖も何も入れずにそのまま飲む。


「………。」


1口飲んでそのまま固まった。


「不味かったか?」

「…クロトス。お世辞抜きで城のよりおいしいわよ!」


本当らしく、ティニアは目を輝かせる。


「それは良かった。はい。リンのコーヒー牛乳。」

「…ありがとう。」


甘えに仕上げたがコーヒー豆の味も楽しめるようにした。


「城のは高級な豆を使ってるのになんでこっちのほうがおいしいの?」

「入れ方で味は大分変わるからな。」


下手な奴のは本当に不味いからな。

ティニアは両手でカウンターを叩き、立ち上がって俺に言った。


「クロトス。毎日私にコーヒーを入れに来て!」

「店があるから駄目だ。」


店を譲り受けた意味がないだろ。


「じゃあ、私が毎日来る!」

「…駄目です。お城が大変なことになります。今日だってお勉強さぼりましたでしょう?」

「ウグッ!?」

そういえば、そうだったな。


「…クロにぃ。私はネコを見に毎日来るね。これもおいしいし。」


そう言ってコーヒー牛乳を1口飲む。

どうやら気に入ってくれたようだ。

リンの口の周りにコーヒー牛乳のお髭が付いたのでハンカチで拭きながら答えた。


「ああ。いつでも来な。」

「リ〜ン〜!それはないんじゃないかな!?」


睨みつけるが今までとは違い、やさしい感じがする。

本気で怒ってはいないのだろう。


「…私は休憩時間やオフの時に行きます。」

「ズルイ!」


ティニアはむくれた。

俺は苦笑しつつも二人をなだめる。


「おやつも作ったけど食べる?」

「「食べる!」」

「…それはそうとさ。」

「何?」

「…どうしたの?」


さっきから疑問に思っていたんだが。


「エルって何処行ったの?」


………

……


「「あっ!?」」

「どうするの?」

「「…後で。」」


そう言ってデザートに手を伸ばす。

エル。ごめん。

大丈夫……だよね?



―エル視点―


「ヒック…ヒク、スンッ…グスッ」


ケーキ28個目に突入。

泣きながらケーキを食べていた。


最近思うんですけどこの話ってコメディじゃなくてファンタジーじゃないのか?

あと、10話突破したら番外でも書こうかなと思っています。

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