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神と来訪者

もう開き直って月一更新でいいんじゃないですか!?、と自虐に走る蛹です。

読むほうが好きなんですよ!

でも、書くのも好きなんですよ!?

毎日のように更新している作者ってすごいですね。

「どうすればいいかしら?」


ウリエルの目線の先の真っ黒な体毛の子猫とウルに向かって困惑の声を上げた。

生まれたばかりであろう、目も開かぬ小さな子猫。

それを愛おしそうに舐めて、毛繕いをするウル。

くすぐったいのかモゾモゾと身動きをしている子猫は実に愛らしかった。

実際にリンとエルは子猫に顔を寄せ、口元を緩ませている。

実に微笑ましい光景なのだが…


「何も洗濯物の上に居座らなくても…」


太陽の光をたっぷりと浴びた、フワフワの洗濯物。

その上で微笑ましい姿を晒されても少し複雑であった。


「とにかく移動してもらわないと…」


そう言って手を伸ばすと今まで子猫を愛でていたウルの顔がクルッとこちらを向いた。

威嚇する訳でもなく、ただジッと見つめてくる。

そう、ただジッと見つめているだけなのだが…それだけでウリエルの動きが鈍った。


「ちょっとだけ。ちょっとだけ移動してもらうだけだから」


そう、自分に言い聞かすようにブツブツとウリエルが呟く。

フッと視線を落とすとリンとエルがジッとウリエルの顔を凝視していた。

エルはちょっと眼に涙を溜め、リンは無表情だが今はそれが逆に怖い。


「あぅ、ね…猫の毛ってね、服に付くと洗濯が大変なのよっ」


まるで子供が親に悪戯の言い訳をしているかのようだと傍目で静観しているティニアは思う。

うろたえているウリエルに3対の目がジッと何かを訴えるかのように見つめる。

その視線を受け、見る見るうちに挙動不審になっていくウリエル。


「落ちにくいしね、他の洗濯物に移…るぅ……ぅぅっ…」


湧き出すような罪悪感がウリエルの口を石のように重くしていく。

ウリエルは自身が正論を言っていると思ってはいるがそれなのに自分が悪い事をしたかのような気がしてくるという間逆の感情で混乱していくのであった。


「……今日だけね」


観念し、絞り出すような声で呟くとリンとエルがパンッとハイタッチを交わし、再びじっくりと子猫を観察する。

ガックリと肩を落とし、カウンターに向かうとカウンター席でクスクスと笑みを溢すティニアを見つけた。


「フフッ、災難だったわね」


ティニアの笑みに殺意を覚えるも大人げないので感情をコントロールするウリエルであった。

ウリエルは息を大きく吸って深呼吸し、落ち着いたところでティニアの隣に座った。


「ウルの子供…だったりしてね?」


ティニアがそう言って子猫を指さすがウリエルは首を振る。


「それだったらお腹が膨らむはずよ。何回か見かけたけど特にそんな様子は無かったわ」


2人が後ろを向くとエルが子猫に手を伸ばそうとしてた所をリンに注意されたようだ。

ウルと子猫。

体毛の色は正反対だが傍から見ると親子にしか見えない。


「この子も飼うの?」


ティニアがそう問うとウリエルは首をかしげた。


「飼わないわよ。それと、王女なんだから言葉は正しく使うべきよ。『この子も…』ってまるで私がペットを飼ってるように聞こえるわよ」


そうティニアに注意するが返ってきたのは呆然とした顔であった。


「えっ!?だって、ウルが…」


そう言ってウルに指を指すがその手をウリエルが掴み、手で覆う様に包み込んだ。

さらにズイ―ッと顔を寄せ、子供に言い聞かせる様に、まるで諭すように語った。


「あの子は飼ってるんじゃなくて住み着いてるの。喫茶店を営んでるのにペットなんて買えるわけないじゃない。衛生上の問題があるんだから」


ティニアに言い聞かせるように一言一言をゆっくりと告げる。

確かに飲食物を扱う店でペットを飼うのは問題だ。

だからと言ってそれは無いんじゃあないかなぁ、とティニアは思う。


「専用の餌入れがあるのに?」


実際にエルの名前の刻印が施された専用の食器があったりする。

それも先ほど、ティニアの目の前の人がピッカピカに磨いていたりもしていた。


「ええ」


そんな人はティニアに対して実にさわやかな笑顔で返答された。


「名前も付けて、グッズも販売しているのに?」


売上は好調で一枚噛んでいるリンも最近はホクホク顔であったりする。


「ええ」


そういった売上の会計処理をしている筈の当の本人は聖母のような笑顔でご返答されていた。


「たまに一緒に寝てあげて、寝る前には語尾に『ニャン』を付けて語りかけているのに?…くすっ」


情報提供者:Gさん


「……ええ、グラムには後でお仕置きしないとね」


笑顔…、から一転して般若降臨。


「痛い痛い痛い痛いっ~~~~ッ!?」


ビキビキッとウリエルに包まれていた手から嫌な音が聞こえてきた。

ちなみに、遠くで情報提供者:Gさんは悪寒とくしゃみが止まらなかったそうな。

今にも砕け散りそうなティニアの手を救ったのは来店を知らせるドアのベルであった。


「お客様、申し訳ございません。本日は定休日となっております」


般若から一転して商売人となった神界では偉い立場だったはずのお方。

ティニアは真っ赤になった手を冷やすように息を吹きかけ、チラッとウリエルの影からお客を確認した。


「いえ、御客ではないのですが。申し訳ございませんがクロトスさんはいらっしゃいますでしょうか?」


そこにいたのはいかにも商人といった男であった。

大きなリュックを背負った小太りの無精髭を生やした男。


「失礼ですが貴方は?」


というウリエルであったが彼女にはこの男に見覚えがあった。

それもごく最近。


「あ~、これはしつれいしました。私は…」


ふっとデジャブを感じるそのうそんくさそうな笑みは…


「自称、七つの顔を持つ商人です」


以前、ウリエルが町で大男達に絡まれた時にいた男であった。


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