神と影纏う神剣と
仕事でミス続きの凹み中の蛹です。
しかも、新入社員がするようなミス連発。
昨日はとうとう特大のを1発(泣)
頭がうまく回らないし、物忘れが激しい。
仕事中のメモ、マニュアル確認はもちろん、部屋の塩まき、お祈り、マッサージ、早寝、日記etc
普段しないことやここ最近していなかった事を初めて見ました。
同経験がある人、アドバイス頂戴。
剣を構えたグラムに対し、クロトスも自身の力を使って剣を創造した。
現れたのは大剣。
見た目は重厚で斬るというよりは潰す、砕く目的で使用されるような剣とは言えぬ物。
しかし、神剣グラムに対してこれぐらい丈夫でなければ剣ごと両断ということもあり得る。
クロトスが剣を構えると…
「先手は貰うぞ」
すでに目の前でグラムが剣を振り下ろしていた。
一瞬で距離を詰められた事に驚き、動揺するが寸での所で後退した。
見切った訳では無く、運よく紙一重で避ける事が出来た。
唯の一太刀、この一太刀だけでクロトスに冷汗が流れた。
振り下ろされたグラムの剣は唸りを上げながら深々と地面に突き刺さる
その衝撃は硬い鉱石で出来た足場を砕き、辺りに一つ一つが凶器になる飛礫を撒き散らす。
その破片がまるで流星群のようにクロトスを襲った。
クロトスは舌打ちしながらさらに一歩、ニ歩と後退しながら、襲い来る飛来物を次々と剣で弾く。
重厚な大剣だからこそ、このように楯代わりとして扱える。
ふっと、その飛来物の隙間に何か鋭い切っ先のようなものが見えた。
クロトスは無理やり体を捻り、唸る勢いで突き出されたグラムの突きを避ける。
突き出された剣先に服が切り裂かれ、体中を礫に襲われるがその勢いに逆らい、体を回転させるように剣に勢いを乗せ、グラムに切りかかる。
そして、突きの状態で腕を伸ばしたままのグラム。
剣で防ぐには刹那に間に合わぬ。
そう判断するも腕はその剣を引き戻した。
剣では間に合わない?
間に合わないのは刃の付いた剣身。
ではそこ以外で補えば良いッ!
グラムは己が握っていた剣の柄でクロトスの刃を受けた。
しかし、所詮は柄。
柄は剣を握り、剣の動きを制御し、支えるための箇所。
クロトスの一撃を受けていられるのは一瞬である。
その一瞬でグラムはこの状況を覆した。
一瞬の間に体制を立て直し、刃の下を潜る様に交わす。
クロトスが刃を返す前に軸足を捻じり、この回転を乗せた蹴りをクロトスの腹部に放つ。
動きを察知に後ろに飛ぶことで衝撃を緩和させる事は出来たクロトスであるがそれでもジンジンと痛みが走る。
「なんて避け方するんだよ。一歩間違えば手が落ちてたぞ」
クロトスが痛む腹部を押さえる。
その様子は先ほどまでの戦いから結び付かない、実に楽しそうな笑顔であった。
「あり得ぬな。我が我を使うのだぞ。我以上の使い手などこの世には存在するはずがないだろうが」
そう言って妖美な笑みを浮かべるグラムはまるで玩具を扱うかの如く、剣を肩に担ぐ。
「それとな。今の我だったらこんなこともできるぞ?」
そう言って地面に剣を突き刺す。
刺した先には淡い光に照らされて、うっすらと見えるグラムの影。
一瞬の間の後、その影がゾワッとその色を濃くし、ザワザワと蟲の塊のように蠢く。
まるで生き物のように見えるその影は徐々に成長するかのように地面から盛り上がり、ヒュンッと音を立てて影の塊で出来た触手のような物が複数飛び出した。
その内、半分程が上へと伸びあがり、まるで一つ一つに意思があるかのように自身を撓らせる。
それは天井に連なる鍾乳石のつららを砕き、天然の槍を振り落とさせた。
「シャレにならんぞっ!?」
上からは天然の槍、地からは残りの影が蛇の如く、地を這うようにこちらに向かってくる。
クロトスは一旦、剣を消し、新たな武器として自身の身長より長い昆を創造した。
昆の両端は共に少し膨らんでおり、殺傷力を高めるために棘も付いている。
クロトスはそれを回転させ、地を走る影の蛇を弾き消し、鍾乳石を砕き飛ばす。
影の蛇はそれを学習したのか、クロトスを囲むように回り込み、一斉に襲いかかる。
クロトスは昆のスピードをさらに速め、弾き、砕き、弾き、砕き……
体を回転させ、腕を回し、襲い来る全ての物を自身の領域から弾き飛ばす。
そこでフッと目に入った光景があった。
グラムが生み出した影が螺旋を描く様に高々とグラムが掲げている剣に纏わりついていた。
その光景から次にされるであろうグラムの行動を推測された。
グラムと目が合い、その表情がニヤッと笑みを浮かべた。
瞬間、グラムはその剣を振り下ろす。
その刃から放たれる衝撃は影を纏い、黒い斬撃となって地を切り裂きながらクロトスを襲う。
避ける間もなく、クロトスはその斬撃に襲われる。
昆で防御は出来たがその衝撃で壁まで押され、叩きつけられた。
同時に斬撃がクロトスを襲い、砕けた鉱石による粉塵で辺りは覆われた。
ほとんど密封空間と変わらぬこの場所。
舞い上がった粉塵は只でさえ薄暗いこの空間をさらに覆い隠す。
地に横たわるクロトスはズキズキと痛む自分の体を起こし、剣を構える。
「(この視界の悪さでは下手に動くと相手に場所を知られる。まぁ、方向ぐらいは見当付くが…)」
自身が吹き飛ばされた方向に目線を向けながらもジリジリと場所を移動させる。
しかし、足を動かすたびに鉱石や砂を踏みにじる微かな音が鳴る。
クロトスは動きを止めた。
その音を警戒したのもそうだがその音に混じって微かに風を切る音。
その音の方向には…
「ーーッッ!!」
粉塵の隙間を縫うように黒い影が蛇のように襲いかかった。
クロトスは昆を回転させ、影の鞭を霧散させる。
粉塵で視界が悪く、あらゆる角度から襲いかかるため休む暇もない。
徐々に視界が晴れていくとうっすらとだが遠くにいるグラムの輪郭だけは確認できた。
クロトスは一瞬の攻撃の合間を縫って、その方向に昆を横薙ぎに振るう。
その勢いで吹き飛ぶ粉塵により晴れた視界の先にはグラムとその周りに浮かぶ黒い球体。
その内の一つから影の鞭が伸びていたようだ。
「(…ということはーーッ!?)」
嫌な予感がクロトスの頭を横切り、それを肯定するかのようにグラムが笑みが広がった。
瞬間、唸るような音と共にその全ての球体から無数の影の鞭が襲いかかった。
先ほどから襲いかかってきていた数のおよそ十倍以上。
もはや壁である。
クロトスは昆を地に勢いよく突き刺す。
それに連動するかのようにクロトスの前に地面が盛り上がり、強固な壁となってこの空間を分断した。
クロトスはもたれかかる様に昆にしがみ付いた。
肩で息をし、肩も大きく上下に動く。
本当はこの場で倒れこみたいが壁の向こうからは連続する衝突音が絶え間なく鳴り響いている。
今にも壁をぶち破りそうな状態の今、一瞬でも一息付けただけでも儲け物である。
「あいつ、実はこれを機に俺を始末しようとか考えてないか!?」
所々で垣間見えるグラムの表情。
笑顔・笑顔・笑顔…
クロトスが逃げ回るのを実に楽しそうに観察していた。
クロトスはその光景を思い出し、寒気がしてきた。
「…このまま帰るか」
「何を言うか」
何とも情けない一言を漏らすクロトスに返すグラムの声。
バッとクロトスは声がした方向を向く。
そこには突き刺さった鍾乳石のつららの影に佇むグラム。
「手合わせの了承したにもかかわらず、それを覆すなど男子のするべき事ではないぞ?」
「いや、了承してないし」
クロトスがそう返すとグラムは怪訝な顔をする。
「お前、了承する前に襲いかかってきただろうが」
グラムはピクッと体を硬直させる。
ジト〜としたクロトスの視線を受け、冷や汗を流すグラム。
「コホン。……さて、休憩は終わりにしよう」
「流すな」
グラムはクロトスの言葉を無視し、両手を掲げる。
それはさながら指揮者のように佇む。
「第二ラウンドだ」