神と闇と真実と…
久しぶりの2連休。
一気に書き上げ、ストック58話まで完成。
これに伴い、完結に向けて話を纏めていきます。
プロット通りにいけば70〜80話で完結かな。
同時進行で第1話から徐々に手直し開始。
60話の番外のアイディアは…無し(泣)
今月は短期出張が2回、監査部の調査、学生の職場体験etc。
今月は何回投稿できるのかな?
クロトスは深い洞窟を進んでいた。
地下水が染み出しているのであろうか、歩くたびにドロドロとした地面はグチャグチャと音を鳴らす。
しかし、上の地層を触ってみるとひんやりとしているが固い岩盤のような手触りが伝わってくる。
この洞窟にクロトスが入ってから数時間が経過した。
全ては喫茶店でのグラムの誘いのためである。
あの時のグラムの誘いの言葉をクロトスは了承したもののその目的は一切、聞かされていなかった。
ただ、グラムに誘われるがままにとある洞窟に誘い込まれたのが今の現状である。
この暗闇の中を数時間、手探りと前方を進むグラムの気配のみで進んでいる。
視覚に頼らず、ひたすら前に進む。
それはクロトスの精神を徐々に削っていく。
今も前方のグラムの気配と足音のみが自分を先導している。
「何が目的なんだ、こんな所まで連れてきて?」
グラムの足音が聞こえなくなった。
気配は前方から感じるので止まったのであろう。
グラムが口を開くまでの一瞬の静寂。
己の手のひらすらも見えぬ暗闇。
本当に今の自分には肉体があるのだろうか。
一寸先も見えぬ暗闇のため、何処か死を連想させるような現実味がない雰囲気に満ちていた。
しかし、それを破るようなからかい口調のグラムの声が見えない前方から聞こえてきた。
「なぁに。主に調査の結果報告と報酬を貰うためにわざわざここまできたのだ」
「調査?そんな事を頼んだ覚えは…ああ、前の腐食した道か?」
以前にグラムが発見した森にあった腐食した道。
何かが通ったと思われるそれは生物かもしれないし、他の何かかもしれない。
その何かをグラムに調査を依頼したことがあった。
しかし、グラムからはいささかトーンを落とした声が返ってくる。
「いや、それに関してはまだ途中だ。ある程度は調べが付いているがそれはまだ主に報告する程度の代物ではない。今回のは私が勝手に行っていたことだ。しかし、その結果は主が私に報酬を与えるに十分な価値がある」
「明かりを魔法で出す事を禁じ、この穴潜りの苦労に見合う価値があると?」
返ってくるのは沈黙と足音だった。
クロトスはそれを追うように足を進める。
このわざわざ暗い道を進むのはグラムの提案だった。
理由は話さなかったがすぐに着くという言葉を信じ、その結果がこの様である。
まぁ、悪戯にそのような事を言うグラムではないのでクロトスもその言いつけは守っている。
それからさらにしばらく進むと…
「ここだ」
滑り落ちるように下った通路を通り、辿り着いた開けた空間。
今までとは違い、踏みならす地面は硬い岩盤、上を見ると鍾乳石がその鋭い先をこちらに向けている。
天然の半球状のドームのようなその空間はなぜかうっすらとだが光があった。
苔か鉱石か、何かが光を放つ特性を持っているようだ。
その広い空間の中心点にぼんやりと光に照らされるグラムがいた。
背中をこちらに向け、ジッと俯いている。
微塵の身動きもしないグラムにクロトスは歩み寄るがしばらくすると聞きなれた音が聞こえてきた。
定期的なリズムを奏でる弱弱しい音。
聞き覚えがあるはずなのに、懐かしささえ感じるのだがそれが何の音かが思い出せない。
それはグラムから、いや、グラムの立っている足元から聞こえてきた。
弱弱しいのに何処か力強い不思議なリズムはその音を徐々に大きくする。
そして、次第に地面から淡い黄色のように輝く筋が浮きあがってきた。
それが徐々に浸食し、次第には全ての地面がそれに飲み込まれた。
それはさながら、魔方陣に近い物があったがそれが胎動している事に気づくとそれが血管のように見えた。
「地脈、ライムストリーム、龍脈等のいくつかの呼び名があるが…我は『星脈』という呼び名を使っている。そのままの意味で解りやすいのでな」
その生命を形作る魔方陣の中心にいるグラムはこちらを振り返り、この正体を語った。
「我が調べたのはこの世界…というよりは宝玉。ずっとここにいるというのも我は構わないのだが神界が大変な事になるからな。暇つぶし程度に調査をしていたのだがそうも言ってられない結果が解ってしまってな」
そう言って何処か苦笑交じりに頬を掻くグラム。
「主にのみ反応した宝玉。外に出ることもできず、我を召還した時に感じたこの世界を包み込むような壁。そして、この星脈の状態…」
「結論から言え。話が長い」
イライラした口調のクロトスにグラムは口を紡ぐ。
胸騒ぎがあった。
この光の筋を見た瞬間から生まれた不快感。
クロトスの内を廻る何かが訴えていた。
「…この世界は主がこの中の入ったと同時に生まれた世界。そして、すでに崩壊が始まっている」