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神…最近、出番なくていじけてます

明けましておめでとうございます。

久し振りの投稿です。

というか久しぶりのお休みです。

新年から申し訳ございませんが今月も忙しいです。

来月はさすがに大丈夫です。

新年という事で小説の大掃除(手直し)をしようかと思います。

いや、こんな駄文が徐々にではあるがランキングが上がってしまい、最初の方の話なんて目も当てられない状態なもので…っというか今も人様に見せられないような文章力ですが。

今月はできればもう一話以上の更新を目標とします。

時間はあまり無いですが頑張ってみます。

いつもは賑やかな商店街もこの日ばかりは違っていた。

威勢の良い声で客寄せをする商店街の店主達も…

少しでも家族に美味しいものを食べさせたいと願う主婦達も…

大人達に注意されながらも無邪気に遊ぶ子供たちも…

商店街のとある場所で行きかう人々が足を止め、ただその光景を呆然と見ていた。

人々の視線の先にあるのは死屍累々の光景。

ある者は骨を砕かれ、ある者は血を吐き、ある者は痙攣を起こしながら地面に倒れている。

その中心にいるのは風で靡く長く黒い髪を持ち、視線に貫かれたものは男女問わずにその鼓動を高鳴らせる鷹の目のような鋭い眼を持つ一人の女性。

平均以上の女性らしいスタイルを持ちながらも見る者が見ればその中に潜む力強さが窺えるだろう。

死屍累々の光景の中にただ一人、その中心で佇むその姿みれば普通は恐怖を抱かせるはず。

しかし、誰もが恐怖よりも魅了された。

それが例え、彼女に傷つけられた者でさえも恨みよりも美しいとさえ思った者も少なからずいた。

多くの仲間で囲み、一斉に襲ったにも関わらず、傷一つ付けられず、何をされたかもわからぬままに地に伏す自分達。

地に伏しながらも残る力を振り絞って彼女を睨みつけようと身を起こし、彼女を見た瞬間にその気が失せた。

自分が受けた時はただ痛みと屈辱のみがあった。

しかし、彼女が自分の仲間たちを余分な動きや隙が一切感じられないような身のこなしで次々と捌いていく姿に見惚れてしまった。


「ふぅ…」


息を短く吐くウリエルがポケットからハンカチを取り出し、自らの拳を拭った。

それは黄色い花の刺繍がされたかわいらしいハンカチではあったがそれはすぐに血に染まった。

とは言ってもウリエル自身の血は一滴も交じっては無く、全てが地に伏してる者達のものである。

真っ赤な妖しい薔薇のように染まった花のハンカチをウリエルはチラッと一瞬だけ残念そうに眺めた。

それも一瞬、すぐに怖いくらいの無表情で周りの地に触れ伏す愚者に視線を向けた。


「言っておくけどね……」


呟くように、それでも静寂な商店街には響いた声は周りにいた全ての者の耳に届いた。

血で真っ赤に染まったハンカチをウリエルはそのまま軽く上に投げた。


「これ以上増えるようだったら……」


宙に浮いたハンカチは重力に引かれて下に落ちる前にウリエルの手から放たれた炎によって一瞬にして灰となった。

紅い血に染まった薔薇は赤い焔によって漆黒に塗りつぶされ、雪のようにハラハラと散った。


「……同じ目に会いたい?」


ウリエルの視線の先には顔がボコボコに腫れて尻もちを付きながら涙眼でウリエルに怯える先ほどのリーダー格らしき男。

棘付きの鉄球はもはや原形を留めておらず、棘は取れ、元が何だったかもわからぬほどに歪んでいた。

男が着ている鎧も負けず劣らずボロボロであった。

かなり情けない姿になった男はウリエルの言葉に首を横にブンブンっと振る。

ウリエルはその様子に目をスッと細めるがそれにさらに怯える男に呆れたかのように溜息を吐く。


「そう…、ならこれから気をつけなさい」


そういうとウリエルは興味を失ったかのようにその場から後を立とうとした。


「……すげぇな。さすが、【焔魔】の姉御だ」


周りの観衆の中の一人がボソッと呟かなければ…

立ち去ろうとしたウリエルの動きがピタッと止まった。

それを見た観衆は先ほどの言葉を発した者を止めようとしたがその者の仲間らしき人物達それに気付かずに続いた。


「【焔魔】って…【煉獄の閻(焔)魔】のウリエルか!?」

「あの一夜にして三つの盗賊団をアジトごと滅ぼしたという、あのウリエル!?」

「遠国の生贄の娘を救うために炎竜を軽々と焼き殺した、あのウリエル!?」

「あの一晩で数多の男の心に火を付けたあのウリぐはぁっ!!」


一人を皮切りに次々と自分の噂について語っていたがとりあえず一番不快な噂を口にした男を思いっきりぶっ飛ばしたウリエル。


「まったく失礼ですね。私はただの喫茶店のか弱いウェイトレスだというのに…」


反論したいが下手のことを言うと先ほどの男たちと同じ目に逢うことが分かっている(ウリエルの鷹のような目がそう言っているように見える)ので無言でいる観衆。

すると突然、ウリエルの姿が消えた。

観衆は何が起きたのか分からずに目を見開くが観衆の輪の外の方から大きな音が聞こえたので皆がそちらに目を向けた。

見た途端に何とも言えない静寂が辺りを包んだ。

まず、そこにいたのは4人。


一人は素晴らしい笑顔でありながらも魔物でさえ逃げ出すような黒い邪悪なオーラを纏っているウリエル。

右手で何かを鷲掴みながらそれを器用に笑顔で睨みつけている。


その右手の先には頭を鷲掴みで持ち上げられてプラプラと揺れている小さなメイド。

こちらも笑顔なのだが眼にはしっかりと涙が零れかけている。


その横には黒いメイドが目を見開いてその光景をじっと見ている。

しかし、注意深く見ればその少女が恐怖で震えているのが見て取れたであろう。


その後ろにいた長身の女性も同じように目を見開くがすぐに苦笑する。

恐怖するでもなく、苦笑とはいえ笑える彼女は一番の大物か凄まじい人生を送っているに違いないであろう(事実、身分的には大物ではあるし、壮絶な人生は送っている。特にクロトスがこの世界に来てから…)。


ウリエルはゆっくりと口を開け、黒いメイドに詰問する。


「エル、私の耳には貴方が『何処が…』といったように聞こえたのですが…気のせいですよね?……ねぇ?」


ちなみに、先ほどウリエルがいた場所からエル達のいた場所までは20mほどある。

その距離を一瞬で詰め、エルを鷲掴みにした。

その光景は閻魔様と罪を犯した魂の地獄裁判。


「…キノセイデスヨ……エヘッ…」


カタカタっと人形のように語るエル。

動きもそうだが眼に生気が宿ってないように見える。


「そうよね、ちょっとイライラしていたものだから空耳でも聞こえたのかもしれないわね。ごめんなさい、エル」


申し訳なさそうに謝っているがエルを掴んでいる手からはミシミシを音が聞こえる。


「キニシナ…ィ……デ……ェ…」


片言な言葉が徐々に小さくなり、エルの目が潤みだす。


「(壁が降ってきた事と今の事。もしかして、今日は運が悪いのかな?)」


ティニアはちょっとだけ今日、脱走したことを後悔した。


………

……


それから時間が少したったとある路地裏。

そこにはボロボロになった大柄な男。

手にはもはや原形を留めていないモーニングスターを引きずりながらズルズルと怒りで顔を歪ませながら歩いていた。

男の頭には如何にして復讐するか、ということしか頭にはない。

傭兵を数十人ほど雇って夜襲を仕掛けよう。

男はそう思い立った。

幸い自分は数十人の傭兵を雇うぐらいは金に余裕はある。

もちろん、貴族とかというわけではなく、表沙汰にできない仕事で得たものであり、ウリエルの働いている喫茶店もこの国では有名であるので問題ない。

男は頭の中では如何にあの女を痛めつけるかを考えるだけで醜悪ではあるが笑みを浮かべる。


もっとも、男がそれを実現できる日は永遠に来なくなったのだが…


「こんにちは」


男の前にいたのは入国する際に自分と契約をした商人。

この国は確かに人数が多ければ多いほど入国税は安くなるがそれは正規の手続きをしている者のみ。

手続きのできない前科者等は入国できない。

この商人からは隣国の酒場で仲間と飲んでいたところに現われ、密入国の依頼を受けた。

酔いに任せて普段の数倍の値段をふっかけたのだがこの商人はすぐに了承した。

その時はこの商人の馬鹿さに仲間と共に大笑いした。

だが、この商人は本当にあの時と同じ男なのだろうか?

そもそも…


「そして…」


あの男の後ろにいるのは【何】なんだ?


「さようなら」


あれは生物なの……


………

……


「綺麗に食べなよ。っと言っても理解するほどの知能はまだ無いか」


男の前には貪り、啜る様に何かを喰らう【何か】。

地面には紅い液体が広がるが男の足元に来る前にその【何か】が啜る。


「さっきのお姉さんが倒したこれの仲間たちも喰らってまだこの程度か。先は長いね…」


やがて、【何か】は貪るのを止めた。


「それじゃあ、次行こうか」


そう言って、自称、商人と【何か】はその場から立ち去った。

その場には黒く腐食した地面以外は何も残っていなかった。

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