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神の償い

今回は文字数が多くなったので前編。

次回に話が続きます

ウリエルは商店街にきていた。

とは言っても今日は喫茶店で使う食材の仕入れにきたのではない。

先日、楽しみに隠していたへそくり(お菓子)のほとんどをクロトス達に食べられてしまった。


ザイニンタチニハソレナリノバツヲアタエタガ……


それでも怒りの治まらないウリエルにクロトスとグラムはウリエルに弁償代と数日の休暇を送った。

黒焦げの状態で必死に土下座する2人を見て、ようやく怒りが沈静化していった…かに見えたがウリエルがチラッとカウンターを見ると自分が一番楽しみにしていたケーキ(1時間以上行列に並んでやっと手に入れた人気商品)が綺麗に食されていた。


………

……


消えかけた赤い炎が禍々しい黒い焔へと変わり、喫茶店内の罪人たちを襲った。

阿鼻叫喚の光景となったがそれは今は関係なかろう。

ともかく弁償代+αと数日の休暇を手に入れたウリエルはへそくりの補充にこの商店街に来ていた。


「ウリエルの姉御!今日は活きの良いのが入ったんだが見てかねぇか?」

「だから、姉御はやめてくれませんか!?私には似合わない呼び名だと思うんですが」


ウリエルが商店街を進むとあちこちで声を掛けられる。

お店の人はもちろん、近所の子供にまでウリエルの名前を知られている。

しかし、なぜか必ず皆がウリエルの事を『姉御』と呼ぶ。


「そうは言ってもなぁ……。なぁ、肉屋の大将?」

「ああ、姉御は姉御だもんな、魚屋の旦那」

「いえ、姉御と呼ばれるとなんか私が悪っぽく聞こえるんですけど」


苦笑しながら話してるとこの近くに住む子供たちが元気よく走りまわってこちらに近づいてきた。


「あっ、ウリエルのあねごさんだ〜。こんにちわ〜!」

「「「「あねごさん、こんにちわ〜!!」」」」


ガクッと脱力するウリエルに肉屋と魚屋は大声で笑う。

一部始終を見ていた周りの皆も笑みがこぼれた。

ウリエルは引き攣った顔を隠しながら子供たちの頭を撫でる。。

頭を撫でられた子供たちは照れながら走って商店街の先へと行こうとするとその中の小さな男の子が屈強な男と正面からぶつかった。


「痛ってな!気をつけろっ!!」


そう言って男は地面に尻もちを付いた男の子を蹴り飛ばそうとした片足を上げた……瞬間に軸足を駆られ、地面に転がった。


「何しやがるっ!!」


男が起き上がると男の子を立ち上がらせるウリエルの姿があった。

ウリエルは男に目線も向けずに怯えて震えている男の子を立たせ、土を払い、慰めている。

無視された男は怒りで顔を真っ赤にし、背負っていた袋から大きなモーニングスターを取り出した。

そこで初めて男に目線を向けたウリエル。

ウリエルの前にいるガラの悪い男は分厚い鎧を身に纏い、柄に鎖で繋がれた鉄球を、しかも、殺傷能力を高めるために鋭い棘が所々に付けられたモーニングスターを振り回しながら怒りで真っ赤な顔でウリエルを睨む。


「大会の憂さ晴らしに貴様らをヘブシッ!!」


何やらしゃべっていたがウリエルは気にせずに跳んで男が振り回していた鉄球を片手で掴み、そのまま男の顔目掛けて叩きつけた。

そのまま地面を転がって行った男を確認するとウリエルは子供たちの方を見る。


「怪我はないわね。アレも悪いけど君たちも気をつけないと駄目よ」


涙眼の子供たちを先ほどとは違い、やさしく、労わる様に頭を撫でた。

すると徐々にではあるが笑みを浮かべるようになった子どもたち。


「さぁ、もう行きなさい」


そう言うと子供たちは笑顔で走り去り、途中で振り返って手を振りながら消えていった。


「さて…と……」


ウリエルが振り返ると先ほどの男が顔を真っ赤にしながら立ち上がっていた。

怒りだけではなく血で顔を真っ赤にしているが……。


「ぎじゃまあぁぁぁぁあああああっ!!!」

「呂律が回っていないわよ。後、それはお友達?」


見ると男の周りに8人ほどの男がいた。

どいつも手に獲物を持ってウリエルの方をニタニタと笑いながら見てる。

しかし、一人だけ大きなリュックを背負った商人のような男がいた。

ガラの悪い男たちの中で一人だけ異色を放っている。


「貴方は何?」

「私ですか?自称、七つの顔を持つ商人です」


ウリエルはうそんくさそうに男を見る。


「自称?」

「実際は商人じゃないですからね。これは変身用で七つの顔の一つです」


周りのガラの悪い男たちはびっくりした顔で彼を見た。

どうやら彼らも知らなかったみたいだ。


「ぎじゃま、ゆじゅじゃんじょ!ぎじゃぎじゃにぎでやる!!」


叫びながら再びモーニングスターを振り回す男。

それを呆れたように見るウリエルと自称、商人。


「呂律が回ってないわよ。何言ってるかわからないわ」

「有料で翻訳しましょうか?」

「セコイわね」

「言ったでしょう?自称、商人なんですよ。……今はね。それでは」


そう言って男たちから離れる。


「仲間じゃないの?」

「この国って人数が多ければ多いほど入国料が安くなるんですよ」


そう言って人ごみの中に消えていった。


「この世界って本当に変わり者が多いわね…って溜息ぐらい吐かせなさい!」


溜息を吐こうとした所に鉄球がウリエルを襲った。


………

……


「諦めたら?勝てないのは解ったでしょう」


ウリエルの前には傷だらけの三人の男。

他はうめき声を上げながら地面に倒れていた。


「まじゃまじゃぁぁぁぁあああああっ!!」

「だから何言ってるかわからないわよ」


そう言って睨む男を呆れたように見るウリエル。

すると…


「『まだまだー!』だそうですよ?」


先ほどの自称、商人が人ごみの隙間からやってきた。


「消えたんじゃないの?」

「いや、面白そうだったんで遠くから見てたんですけど遠くからじゃ物足りなくて戻ってきました」

「変わり者ね」

「『面白ければすべて良し』っていうのが私の人生のモットーなんですよ。それより、あっち」


ウリエルが男の指さす方を見ると…


「兄貴〜、応援を呼んできたぜ!」


そう言って6人ほどの男がこちらにやってきた。

まだ仲間がいたようだ。


「それでもまだまだ…」


ウリエルがそう言うと…


「兄貴〜、応援を呼んできたぜ!」


ウリエルが先ほどの方向を見るとさっきの奴とは別の男たちがこちらにやってきた。


「何人いるのよ…」

「兄貴〜、応援を呼んできたぜ!」


げんなりしながら同じ方を見ると案の定、男たちがこちらにやってきた。


「しつこいわね…」

「兄貴〜、応援を「しつこいって言ってるのよっ!!!」」

「言ったでしょう?多い方が入国税が安くなるって」


切れるウリエルに飄々と声をかける自称、商人。


「もういないわよね」


そういってウリエルは周りを見渡す。


「それなんですけどね」


自称、商人は苦笑する。


「まさか……」


ウリエルの顔が引きつると同時に…


「兄貴〜、応援を呼んできたぜ!」


ガクッと肩を落とすウリエルに自称、商人はついに笑いだした。

それをジロッと睨むもすぐに気を取り直した。


「あ〜もう、好きなだけかかってきなさい!!」


そう言って叫んだ。


「あ〜、そんなこと言っていると…」


自称、商人の呟きと共に…


「兄貴!」

「兄貴!」

「兄貴!」

「「「応援を呼んできたぜ!」」」

「いい加減にしなさい!!!」

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