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神だって予想できません!?

ストックが49話完成まで完成。

いざ、50話番外書こうにもネタ無し。

今月中にもう2話ぐらい投稿を目標。

次回作の長編も2話まで完成。

リンは勉強時間中に脱走したティニアと姉のエルと一緒に商店街を通りながらいつもの喫茶店に向かっていた。


「リンが手伝ってくれると脱走が楽になって助かるわ」

「……本当なら止めなきゃいけない立場ですけど爺さんを困らせ……、こほんっ……姫様のためですから」


リンは咳払いで誤魔化そうとするがそれには無理があった。

彼女の姉がその話題を手に持った串焼きを頬張りながら広げたからだ。


「リンちゃんって本当にジュニちゃんの事嫌いだよね。私はそれほどでもないけど」

「姉さん、ジュニちゃんって……」


口の周りについたソースを拭いながらエルはリンに言う。


「アイシャちゃんがそう呼んだ方が執事長は喜ぶって言ってたから。それにそう呼んだらジュニちゃん、お顔を真っ赤にするほど喜んでたよ」


それは怒りで顔を真っ赤にしていたのでは……というつっこみも無く、エルは言葉を続ける。


「そしたらジュニちゃんが私のほうに何かを叫びながら走ってきたけど私のところに来る前にソフィアちゃんに問答無用で連れて行かれちゃった。あっ、2人ともジュース飲みませんか?あそこのお店って最近じゃ評判良いんですよ。お持ち帰りできるんで歩きながらも大丈夫ですよ」

「そうね。脱走で体力使ったからちょっと喉が渇いたかも」


ティニアの言葉にリンも頷く。

それを見たエルは笑顔を浮かべると皆の分を買いに走っていった。


「ところでリン。ソフィアちゃんって誰?」

「……私も知りません。爺さんを問答無用で連れて行ける人ならそれなりの地位にいる人だとは思いますけど」


2人には心当たりが無く、3人分のジュースを持ってきたエルにティニアが直接尋ねた。


「ねぇ、さっきのソフィアちゃんって誰?お城の人?」


それを聞いたエルはきょとーんとした表情で不思議そうに聞き返す。


「えっ……、何言ってるんですか?いつも会ってるじゃないですか。ねぇ、リンちゃん?」

「……知らない」


知っていて当たり前かのようにリンに聞くエル。

ということは意外と身近な人物のようだ。


「それで誰なの、そのソフィアちゃんって?」


ティニアはエルが持ってきてくれたジュースを飲み、何気なく空を見た。

空は暗雲が広がり、今にも降り出しそうな感じである。


「王女様もリンちゃんも今まで『メイド長』の名前を知らなかったんですか!?」


ティニアは空に向かって勢い良く噴出した。

一瞬ではあるがティニア達にジュースの色の雨が降りかかった。


「あの人の本名ってあの見た目でそんなにかわいらしいの!?」


かなり失礼な発言ではあるが彼女の見た目を見たことのある人なら否定する者など誰一人いないだろう。

リンでさえあまりの衝撃で放心状態だ。


「あの人はあんな化け物じみた見た目でも中身は名前負けしないほどの優しい女の子ですよ」


エルもティニアより酷い事は言ってはいるが彼女の事をフォローした。


「どんなに忙しくても月一回は孤児院にお菓子と寄付金を持っていきますし、お城に来る小鳥達に餌もあげますし、メイド達の仕事も文句を言いながらもたくさん手伝ってくれますし、花壇のお世話も自ら進んでしているような立派な人ですよ。……あのとても人とは思えない見た目を抜かせば天女のような方です!」


フォローしているのか貶しているのかよくわからないが力説するエル。


「……まぁ、どちらかと言えば限りなく微妙だけど良い人ではありますね」


搾り出すように言うリン。

その様子からすると本当に微妙なのだろう。


「けど、やっぱり名前負け……」


ティニアがそのセリフを言い切る前に3人のすぐ横で異変が起きた。

いきなりの爆音と衝撃。

すぐ近くにいた3人はその衝撃で吹き飛んだ。

3人はすぐさま起き上がり、辺りを見渡すと土煙が立ちこめ、ほとんど何も見えない。

その近くにいた人々が何事かと辺りを見回していると風が吹き、辺りの土ぼこりを吹き飛ばした。

そして、先ほどティニア達がいた場所のすぐ近くには…


「…………(ビクビクッ!)」


大きな岩がいつのまにか出現していた。

いや、岩にしてはきれいな円柱の形をしていて不自然である。

しかし、それは大きな問題ではない。

その下を見ると一人の男性がその大岩の下敷きとなっていた。

ジワリジワリと男から赤い液体が流れ出し、地面に広がる。

男は痙攣を起こし、うめき声一つ上げない。

そして、その大岩の横にいた女性と子供の親子連れは茫然としていたが徐々に顔を青ざめる。

そして…


「あっ…あんたーーーーッ!!!」

「とうちゃぁぁぁあああああんっ!!!」


必死に岩の下敷きになっている男を助け出そうとしている親子。


「医者を呼べっ!商店街のケーキ屋の旦那が大岩の下敷きになったぞ!!」

「誰でもいいからこの岩を退かすのを手伝ってくれ!早く助け出すぞ!!」

「血が止まらないぞ。医者はまだか!?」


阿鼻叫喚の光景である。

呆然とするティニアだったがすぐさま正気に戻り、リンとエルに指示を出す。


「リンは大岩の破壊。その後、周囲の警備隊と連絡を取って周囲の警戒を。エルは彼の治療を頼むわ」

「「了解しました」」


指示を受けたリンは大岩を動かそうとする男たちに声をかける。


「…退いて」

「嬢ちゃん、危ないから下がって……」

「退きなさいっ!!」


普段大声を出さないリンが声を張り出す。

その気迫に大岩の周りの男たちはズザッと大岩から離れた。

リンは大岩に近づくとポケットから白い布を取り出す。

タオル程の大きさの薄い白い布をリンは端を持って軽く振るとその布はまっすぐに延びた状態で固まり、その布の先を大岩に向けても重力で下に垂れることはなかった。

そして、リンはその布をまるで剣のように大岩に向って振った。

それは確かに金属音を立て、その大岩の一部を斬り落とした。

それだけで唖然とする周りだがリンは気にせずに次々と布を振るう。

その白い布はまるで名剣の如く次々と大岩を斬り落としていき、最後には男を傷つけないようにギリギリまで斬り落して小さくした岩が乗っているだけであった。


「…姉さん」

「お疲れ様〜」


リンが布を軽く振るうと軟らかい状態に戻り、ポケットに戻した。

エルはそんなリンの頭をポンっと撫で、今も痙攣している男の元に向かった。


「手持ちで足りるかな?」


エルがそう呟くとその手元には包帯や治療用の糸、針などが指の間に挟まっていた。

そして、周囲が見守る中で治療を開始する。

それもブツブツと何かを呟きながら治療を行い、その手元も淡く光っているように見える。

どうやら治療しながらも回復呪文も同時に行っているようだ。

言葉では簡単だが実際は片手で絵を描きながらもう片方で料理をするぐらい難しい。

しかも、どちらもその技術は高く、医者が到着しても自分が手伝うと逆に足を引っ張ると周りで見守るしかできないほどだ。


「あっ……まぁいいや」

「「「「「何がっ!?」」」」」


っと所々でエルがやばそうなセリフを吐くがおおむね大丈夫そうだ。

ティニアは近くにいた巡回中の兵士にこの周辺の警戒等の指示を出す。

一通り目処がついた処でリンがティニアの袖を引っ張り、呼んだ。


「御苦労さま、リン。異状は無い?」

「…それなんですけど…」


リンは言いづらそうに言葉を濁らすがやがてボソッと言った。


「…あの岩はさっきの脱出で開けた壁です」

「へっ?」


その言葉にティニアはリンがバラバラにした破片に目を向けると確かにあんな感じの色の壁だったという記憶が残っていた。

しかも、破片の一部に人の足形のような窪んだ跡を見つけてしまった。


「あの爺さんにばれましたね」


そう言って飛んできた方向に目を向けた。


「それがここまで飛んできた…しかも、私たちの真横!?」


ティニアもそちらに目線を向けるがここから先ほどの部屋の壁までは結構な距離がある。


「つくづく化け物ですね」

「ということはこれって間接的に私たちが原因の一部?」


目線を前に向けると呼吸が安定し、顔色も良くなった男の横で涙を流しながらエルにお礼を言う母親と父親に抱きつく子供。

真っ赤になって照れるエルを2人は先ほどの親子並に顔を青くして心の中で謝った。

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