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神と共犯者との宴

久しぶりの休み。

うまくいけば今月中にもう1話投稿できるかも?

そういえば、50話番外のネタがまだ決まってないんですけどリクエストありますか?

「これは…?」


グラムは一刻も早く、自らの目で見た不可解な光景を主に伝えようと山を下山し、町を風のように駆け抜け、喫茶店の扉を開けた。

そこに広がっていたのは…


「ニャ〜♪」

「「ニャ〜♪」」


それぞれが持つグラスをぶつけ、一気に中の酒を浴びるように飲む3人。

乾杯のつもりのようなのだが掛け声がなぜネコの鳴き声なのだろうか?


「クロトス君、酒も酒の肴もぜんぜん足りないよ〜」

「足りないニャ〜♪」


見ず知らずの男が体を振り子のようにフラフラさせながらクロトスに催促し、レイが妙にテンションを高く、顔を真っ赤にしながらそれに続く。


「よ〜し、それじゃあ…今度はこれだー!!」


クロトスがカウンターをドンッと拳で叩くとカウンターの一部がくるっと回転し、そこから…


「これは…遥か東方の国の銘酒『碧衣乃姫』!『十六夜物語』に『緋月恋歌』まで…」

「それにこの皿のは…もはや幻の珍味と言われたあの…」


どういった仕組みなのかはわからないがカウンターには山のような酒と料理が並んだ。


「そして…!!」


クロトスはもう一度カウンターを叩くと…


「わが店のウェイトレス達のへそくりのお菓子の数々!しかとご賞味あれ!」

「主ッーーーーー!!!」


密かに楽しみにしていたとある有名店でこっそり買い、今度一人でゆっくりと食べようと思って隠していたお菓子等がばれていただけではなく、勝手に客に出そうとしている自分の主に護身のために持っていたナイフを投擲する。


「よっと…トワッ!」


それをなんなく指で挟んで受け止めるがそのナイフの死角に飛針が飛んできているのに慌てて体を逸らす。

飛針は壁の棚に置いてあるカップに衝突し、貫通。

そのまま壁に衝突し、ようやく止まる…ことも無く壁すら貫通し、店の外に飛び出す。

どうやら回転がかかっていたらしく、貫通したカップの飛針の穴は若干溶け、赤くなっていた。


「ちょっ……ッッ!!」


文句を言おうとするクロトス。

グラムの方に視線を向ける……と同時に耳に伝わる風を切る音。

それは先ほどと同威力と思われる飛針が次々とクロトスに向かう。

その数、勢いは暴風、豪雨の嵐の如く。

何処にそれだけ隠し持っていたんだ!?とツッコミをする暇も無くクロトスに迫る。

クロトスは慌てて先ほど受け止めたナイフで次々と弾く。

次々と弾いているとあることに気づいた。


『手加減無しっ!?』


飛針は急所はもちろん、ナイフでは弾きにくい箇所である足元や右手で持つナイフが届きにくい左半身を中心に飛んでくる。

足元はカウンターに隠れているのにカウンターを貫いて足元を襲う飛針の数々にさすがのクロトスも冷や汗が止まらない。


弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く

弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く弾く――――――ッッ!!!!


………

……


嵐が止む。

息切れをするクロトスがフッとナイフを見ると摩擦熱で真っ赤になり、かなり欠けてボロボロであった。

だがこれでも良く持った方であろう。

そして、後ろを振り返ろうとするが…やめた。

見なくても唖然とするレイとロレオの様子と背中を撫でる風の感触で大体わかってしまった。

クロトスの後ろの壁には窓が無かった。

なのに風が【後ろから】クロトスの背中を撫でる。

補修費が……と嘆く前にクロトスはグラムに怒鳴る。


「殺す気かっ!?」

「我の秘宝に手を出すようであれば主といえども容赦はせぬ!主を殺して我も死ぬ!」

「いや、お菓子だけでそんな『他の女に手を出すなら貴方を殺して私も死ぬわ!』みたいな修羅場はやめないかいっ!?」

「ロレオ。この店ではこれぐらいは当たり前の光景なのよ。むしろ、まだ大人しいわ」

「これでっ!?」


目の前の修羅場に一気に酔いの覚めた2人。

とりあえず、しばらく口論する2人だが次第に落ち着き…


「ともかく、我の秘宝は元に戻せ」

「ウリエルのは?」

「無論、我らで食す。これは対価だ」


グラムが自分の秘宝へそくりの隠蔽と宴に参加する対価として出したのは見ただけで高そうなワインのビンが数本。

それを見たクロトスはこくりと頷く。


「了解だ。新たなる共犯者よ」


ニヤリと笑う2人。

そして、クロトスが再びカウンターを叩くとグラムのへそくり(秘宝)だけがきカウンターの隠し空間に消えていく。


「それでは我ら、共犯者達によるこの宴に…ニャ〜♪」

「「「ニャ〜♪」」」


可笑しな掛け声の乾杯の合図だが皆が気にせずにそれぞれが酒を煽った。


………

……


「腐食した獣道?」

「しかも、この町に向かって伸びていた」


グラムはクロトスに自分が見たものを告げた。


「辿ってはみたが途中で忽然とその後が消えていたな。それもこの町の入り口付近の森の出口で…」

「魔物か?」


クロトスは頭の中で色々な魔物や魔獣、悪魔を思い出すがどれもぱっとこない。

そもそもこの世界にもいるかどうかもわからないので無駄な考えであろうと考えるのをやめた。


「…もしかしたら弟子の仕業かもしれないね。いや、正確に言うと弟子の実験生物かな」


ぽつりと洩らすロレオの言葉にレイは呆れた口調で言った。


「本当に…アンタの周りってろくなのがいないわね」

「「「お前が言うなっ!!」」」

「どういう意味よ!」


3人のユニゾンつっこみに反論するレイだが3人の言葉のほうが正論である。


「後、主よ」

「ん?」


グラムがクロトスにこっそりと耳打ちをする。


「残っている気だけでの判断ではあるが…『堕ちている』可能性がある」

「………へぇ〜」


グラムの言葉にクロトスは最初は面を食らうがすぐに笑みを浮かべる。

無邪気ではあるが黒い笑み。

見る者が見れば鳥肌が立つであろう。

だがロレオとレイは先ほどの言葉で口論中。

グラムは慣れている。


「確証は無いが事実だとすれば…面白そうではないか?」


そして、グラムも笑みを浮かべる。

クロトスの笑みにきわめて近い笑み。

だが、クロトスには無い妖美な色気がある。


「グラム」

「はっ!」


クロトスの雰囲気が変わる。

それは以前、王城に侵入する前にウリエルの報告を聞く際に見せた神王の威厳と迫力を纏っていた。


「この世界は…実に興味深い。そうは思わんか?」


それはグラムが腐食した獣道を見つけたときにふっと洩らしたこの世界に対する感想そのままであった。


「世界は…いや、人とは時に我らの考えている範囲を超えた行動を起こす。それが良くも…悪くもな。………?」


フッとクロトスが周りを見渡すと先ほどまで口論していたロレオとレイがこちらを凝視していた。


「…くっ……くくっ……クックックハハハハッハッハッハッハッ――――!!!」


突然、ロレオが笑い出した。


狂ったように。


壊れたように。


そして、ピタッとそれが止まるとクロトスをじっと見つめる。


「君は実に面白い。君との出会いは必ず僕にとってかけがえの無いものになるだろう!」

「そうだな。この出会いも興味深いことには変わりない」


そして、2人は笑い出した。

歪に歪んだ笑い声は狂気に近い何かを含んでいた。

それを遮るようにドアのベルが鳴る。


「ただいま戻りました。ずいぶんとたのし…そうで……すねぇ………」


店に入ってきたウリエルはまず笑うクロトスと見知らぬ男に目を向け、それを呆然と見るレイとグラムに目線を向ける。

…そして、カウンターに所狭しと並んだ酒瓶と皿。

……クロトスの後ろの大きな複数の風穴。

………自分が隠していた大事な、大事な超有名店のデザートの【空箱】。


「フフッ、フフフッあはハハはハハはハハはハハはハ――――――ッ!!!」


先ほどの2人とは比べ物にならないほどの狂気に満ちた笑い声。

それは黒い笑みを通り越した鬼や悪魔、魔王よりも凶悪で死に満ちたものである。


………

……


「レ、レイ……?」

「……何よ?」

「君はさっきの修羅場さえこの喫茶店では当たり前で大人しい方だと言ったけど…納得した」


ロレオの目の前ではとても言葉で言い表せないような地獄が広がっていた。

とりあえず転がっている焦げた黒い2つの物体からは目を逸らす。


「言っとくけど…これにとある3人が加わるとさらに酷いわよ」

「これ以上があるのかいっ!?」


さすがに王女とそのメイドの御用達のお店とは言えない。

さらに王女がこの風景をみても『いつもの事でしょう?』と流すほど逞しくなったとはとても言えない。


「…よくこの店が続いてるね」

「大丈夫。明日には店もアレも元通りだから」


視線を向けずに黒焦げの物体を指差すレイ。


「…さすがに嘘だろう?」


ロレオはその黒い物体をチラッと視界に入れ、さすがにそれは…といった感じで聞く。


「明日になればわかるわよ」



≪次の日≫


「いらっしゃいませ〜。おっ、ロレオか」

「…ねぇ、解剖させてくれないかい?かなり本気で」


本当に一日で喫茶店は元通り、クロトスも火傷の跡1つ無かった。

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