神と狂人の宴
仕事が大変忙しい時期に入ってました。
朝6時起きで戻るのが夜の11時過ぎ(場合によってはそれ以降)。
この前、やっとそのピークが終わりました。
これで更新速度が上がる……のかな?
喫茶店では雨音をBGMにクロトスとロレオが酒を飲みながら談笑に華を咲かせていた。
「そうか、君はあの大会に出場しているのか。じゃあ、解説役のレイは元気にしていたかい?」
「ああ。たまに店にくるぞ。知り合いか?」
「昔、同じ研究所の仲間だった。4年前に僕は自分だけの小さな研究室を建ててそこに移ったけどね」
遠い目をするロレオ。
懐かしむように、微笑ましく語る。
そのロレオにクロトスは前々から気になっていた事を聞いた。
「…あいつって昔からああなのか?」
ロレオがピクッと動く。
苦笑し、何処か疲れた様子で答える。
「もしかしてネコ好きかい?」
「ああ」
「「………」」
クロトスは同情の視線をロレオに向ける。
ロレオはその視線を受け、目頭を押さえた。
「最初の頃はまだ大人しかったんだ。書類のサインの端っこにネコのマークを付けたりとかコーヒーカップがネコ柄だったりとかわいいものだったよ。次第にメスや白衣、実験器具、仕舞いには研究所の壁の至る所にネコマーク…。まるでウィルスのように侵食していって…」
クロトスはロレオから目線を外した。
ロレオがそれを語る姿があまりにも痛々しくて見ていられなかったからだ。
「ノイローゼになった奴が出始めた頃に数人が抗議にいったら…数日間、行方不明になって見つかった時には手遅れだったよ」
「手遅れって…」
ロレオは微かに呟くようにボソッと答えた。
「…改造されてた」
「洗脳じゃなくてか?」
クロトスの予想としてはいかにネコが素晴らしい存在かを数日間、監禁して洗脳するというものだったのだがロレオは『改造』と言った。
ロレオは首を振り、かなり重い口を開いた。
「40代の脂が乗り切った主任がな…数日後…ネコ耳「やめてくれ、想像もしたくない!!」……うん、僕もこれ以上思い出したくない…」
ズ〜ンっと2人に重い空気が圧し掛かる。
ちなみにネコ耳の他に彼の服装は露出度が高く、言葉の語尾も……ということは言っておこう。
それを見た研究者達もあまりの気持ち悪さに病院送りになったという。
「そっ、それでロレオはどうしてこの町に着たんだ!?レイに会いに着たのか?」
「あ〜、それもあるけどね…」
慌てて話の話題を変えるがその話題もロレオにとっては良いものではなかったようだ。
「僕の弟子が実験体を外に持ち出したみたいでね。しかも、大会に出場してるから見に来てくれっていう手紙が届いたんだ」
「実験体?」
「言ったろう。僕はマッドサイエンティストで趣味は化け物の解剖と禁忌の探求だって。僕の弟子も才能はあるんだけどネジがいい具合に取れててね」
クックックッと低く、愉快そうに笑う。
「馬鹿だよね。『研究は発表しないと意味が無い。他人に見せずに自己満足で終わる貴方はただの愚者で死人も同じだ』だって。禁忌を研究してるのに発表したら禁忌じゃなくなるだろうに。研究者は知的探究心という自己満足のために未知に挑んでるのに、彼は研究者をアイドルか何かと勘違いしているんじゃないのかな?」
「んでお前は彼を止めるためにここに来たのか?」
クロトスの言葉にキョト〜ンとするロレオだが弾けるように笑い出した。
「ハッハッハッ、ちっ、違うよ。彼は手紙に『貴方に教わることはもうない。私は貴方をすでに超えた。死人は死人らしく地面に這い蹲って私の足跡でも舐めてろ』って書いたんだ。だから、彼の研究成果をぜひ、この目で見たくてね」
腹を押さえて笑うロレオ。
涙を浮かべるその姿は正に『壊れていた』。
「んでそのお弟子さんがしていた禁忌の研究ってのは?」
ピタッとその笑いを止める。
そして、先ほどとは違い、ニヤリと笑みを浮かべる。
「無論、この世でもっともタブーとされる禁忌といえば…命の冒涜さ」
「…死者の復活か?」
クロトスの言葉に首を振るロレオ。
「いくらなんでもそれは無理だよ。魂を理解出来てもいないのに死者の復活なんて……」
「不可能を可能にするのがお前達『研究者』だろう?」
「はっ、それもそうだね。君は実に面白いよ。君に会えただけでこの町に来た甲斐があったよ」
手を叩き、喜びを表現するロレオに苦笑いを浮かべるクロトス。
「それはどうも。んで結局、そいつの研究は?」
「肉体の融合さ。神話にもいるだろう」
知ってる。
クロトスは実際にこの目で見たことがある。
「伝承ではライオンとヤギとヘビの化け物」
自分はその神話の中の住民なのだから。
「科学的には同一個体内に遺伝情報が異なる細胞が混じっていることを指す言葉だけどね」
どちらも同じ言葉で言い表す。
「『キメラ』もしくは、化け物の方はキマイラとも言うけどね」