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神に祝福された夜

「それで?城下でのティニアはどうなの?」


ワイン片手に赤い顔でクロトスに聞くアイシャ。


「元気いっぱいの子供って感じだな。近くの商店街では人気者になってるぞ。たまに店に来る途中で商店街の人から貰ったとかでお菓子や果物を抱えてくるぞ」


よくティニアはお菓子や果物を手に持ち、ホクホクした顔で店に来ることが多々ある。


「よく王女だって事がばれないわね」

「いや、うすうす感づいているみたいだな。けど、皆は気にしていないみたいだ。本人も王女として扱われるのは望んでないしな」


パーティーも中盤に差し掛かり、皆が思い思いに食事をし、酒を飲み、語り合う。

クロトスはアイシャと共にワインを飲みながらテーブル席に座り、ティニアの事を語る。

そこには2人の他に…


「だったら今度は俺も行くかな。ここ最近は城下には視察しかしてないしな。エイン、今度お忍びで出かけるか?」

「いいわね。明後日までは特に重要な会議も執務もないし、久しぶりに2人で何処かにいきましょうか」

「うちにくるならサービスするぞ。予約してくれれば特別料理も出すし」

「あら、それは私も興味あるわね。その時はお邪魔しようかしら」

「アイシャ、せっかくのデートに水を差すような真似は慎んでもらいたいわね」

「それもそうですね、申し訳ございません」

「「はっはっはっはっ」」

「「うふふっ♪」」

「ってちょっと!!」


いきなりティニアが吼えた。


「「「「何?」」」」

「ハモるな!っじゃなくて、なんでパパとママがいるのよ!?」


クロトスとアイシャと同じくしてテーブルを囲んでいるこの国の王と女王。

ティニアの言葉に女王であるエインはにこやかにティニアに微笑む。


「なんでって…楽しそうだったからよ♪」

「いや〜、たまたまこの部屋を覗きに…ゴホンッ、偶然に部屋の前の通りかかったらあまりにも楽しそうな声がするものでついな」

「〜〜〜っ!!!」


お酒が入って少し赤い顔の自分の両親の顔を見て、頭を抱えるティニア。


「クロトスも何落ち着いてるのよ。あんたは私が許可したとはいえ王城に不法侵入したのよ!」


興奮するティニアの叱責にワインをコクコクと飲んでいたクロトスは王の方を向く。


「王よ。俺達は罰せられるのか?」

「かまわん。娘の友達をこの程度のことで罰するなどしはしないさ。後、敬語もいらんぞ。今はプライベートだ」


豪快な笑みを浮かべる王。

クロトスはその姿に同じ王としても好感を持てた。


「ありがとう、ジャンファーさん」


ガシッと王はクロトスの手を握った。


「お礼を言うのはこちらのほうだ!初めてっ、初めて俺の名前が…本当にありがとう!!ジャンファーなんて堅苦しい!気軽にジャンと読んでくれ!!」


涙を流してクロトスに今にも抱きつきそうな勢いの王。

名をジャンファーという。

39話にしてやっと名前が出た哀れな男。


「哀れって言うな!そもそも貴様のせいでブフォラギャアァァァァ〜〜!!」

「「暑苦しいっ!!」」


涙と鼻水を流しながら激怒するジャンにエインとクロトスのダブルアッパーが炸裂した。

弧を描くように吹き飛ぶジャン。

エインとクロトスは高々と掲げた拳を下げ、お互いにアイコンタクトをしたかと思うとガシッと固い握手をする。

何か通じるものがお互いにあったようだ。

その様子にアイシャは目を丸くするもすぐにきゃっきゃっと笑い出す。

もはやカオスであった。

ティニアには理解できない光景である。

ティニアは視線を逸らすとそこには…


「よって個人ないしは集団による能動的想像力で構築する原型を持ちえれば明確な概念のよる地図のような媒体を用いなくとも能動的創造で再構築されたあいまいな概念でも固定は可能です」

「しかし、それでは投影された概念が管理、調整されたエーテルによる半作用により理解、分解、構成というループの流れを…」

「それを補うために…」

「なるほどのぅ…」

「………」

「………」


あそこも理解できない空間が構成されていた。

一体何の話をしているのかさえわからない。

いや、それよりも…


「いや〜、勉強になるのぅ。お主、若いのにたいしたもんじゃ」

「いえ、そんなっ!貴方のほうこそ執事とは思えないほどの博識ぶり。それに先ほどのお考えも実にすばらしい」

「いやいや、貴方のような美しい方にそうまで褒められると照れるのぅ」


完全に意気投合するジュニアールとウリエル。


「(ジュニアール!?アンタさっきまで警戒心バリバリだったでしょうが!何もう順応してるのよ!)」


じろりと睨むティニア。


「ふむ。これはさっそく今後の姫様の教育内容に盛り込まなければならんのう」


さっと視線を逸らした。

うん。聞かなかったことにしよう。

そして、ティニアが視線を逸らした先には…


「へ〜。そうなの?」

「ああ、実に滑稽だったぞ」

「…フフッ」


ちびっ子3人が仲良くケーキを食べながら話に華を咲かせていた。

リン、エルにとってはお城にきてから初めての同世代の友達がグラムであった。

お城では大人の人しかおらず、ティニアやクロトス、ウリエルも自分達とは年が離れている。

その中でもグラムは自分達よりは年上だが見た目で言えば自分達に一番近い。

もっともグラムの実際の年齢は2人よりも遥かに上なのだが2人は知らない。

楽しそうに話すその光景に思わずティニアは微笑む。


「そうよ。貴方達にはもっと幸せになってもらわないと…」


そう呟くティニアだったが…


「料理したこともないのにドボシュ・トルテを作りたいと言い出してな」

「え〜!」

「…いくらなんでも…無謀」


ティニアはグラムの言うドボシュ・トルテという言葉に聞き覚えがあった。

そう、あれは…


「実際に作ろうとすると『ボールって何?』とか『粉がボールに入らない〜!』とか言ってたな」

「お姉ちゃん…」

「…そこまで…」


話が進むにつれて頭を抱えるリン、エル。

そう、これは2人にプレゼントするためにケーキを作った時の日の…


「ーーーっ!!!」


全力でダッシュするティニア。


「後、笑ったのが卵を割ったときに…」


ティニアがそこに乱入し、はちゃめちゃとなる。

そんな2人のメイドの誕生日。

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