神に願う古の呪い
今って38話?
でも次は番外のはずじゃあ…計算間違えた!?
本当はここで誕生日話が終わるはずなのに39話目がありませんでした。ストックには40話記念番外と43話まであります。
急いで39話を書き上げ、今月中に投稿します。
頑張れ、俺。
「「「「「「かんぱ〜い!」」」」」」
「…かんぱい」
「………」
無口のためか若干遅れる者、納得いかずにしかめ面の者。
色々いるがとりあえず誕生日パーティーが始まった。
照れる2人に色々な者達がプレゼントを渡す。
すでにテーブルの上にはこの日のためにティニアが作ったケーキが置かれている。
もっとも最初はティニアが作ったということを2人は信じずにティニアがいじける場面があったが。
「なっとくいかん」
ジュニアールはワインを片手に壁を背にしてその様子を見ていた。
流されるままにパーティーに参加したまではいいがクロトス達を信用した訳ではない。
「まあまあ、そういわずに」
「…何当たり前のように隣にいる?」
いつのまにか隣にクロトスがいた。
ワインを片手に皆の様子を微笑ましそうに見ている。
「せっかくの誕生日パーティーなんですから。笑顔じゃないと♪」
「そうよ。ささっ、ジュニちゃんももう一杯♪」
「ジュニちゃんはやめてくれんかの。いや、アイシャ様もいつのまに!?」
酔ったために顔が赤いアイシャはワインをジュニアールのグラスに注ぎ、ビンをラッパのみする。
「おっ、やるね〜。俺もそうしよう」
そういうとウリエルに片手を挙げて合図する。
するとウリエルの顔は若干歪むもしぶしぶワインのビンをクロトスに投げ渡す。
受け取ったクロトスはさっとコルクを開け、ラッパのみをする。
「以心伝心?ラブラブ〜♪」
「もったいない飲み方をしよって…」
それぞれ違う箇所に感想をいうが気にせずに飲み続ける。
「それで、真面目な話。…貴方達って何者?」
アイシャの質問に3人の周りの空気が重くなる。
「さて、何でしょう?」
平然と受け流すクロトス。
ジュニアールは目を細めるがアイシャはクロトスの片腕に腕を巻きつける。
「いいじゃない。せめてヒントぐらい、ね♪」
耳元に口を近づけ、囁くように尋ねるがクロトスは平然と…いや、少しだけ悲しそうに前を見る。
「…決めてるんですよ。最初にその話をするのはあいつらだってね」
クロトスの目線の先にはウリエルから貰った自分達と同じぐらいの大きさのぬいぐるみを抱きしめながら照れくさそうに笑うリン、エル。
そして、それを羨ましそうに見ながらも一緒になって喜んでいるティニア。
「いきなり現れた素性の知れない俺達と友人になってくれた恩人ですからね。店の手伝いも何度もしてくれました。何度も店に足を運んでくれました。何度も俺達と一緒に笑い、喜び、困った事があったときも一緒に悩んでくれました。」
自分を兄と呼び、すぐに懐いたエル。
忙しいメイドの仕事の間を縫ってまで店の手伝いに何度もきてくれるリン。
身分を気にせずに自分と接するティニア。
彼女らにどれだけ救われたであろうか。
神王としてしか見ない者達に囲まれた神界での生活。
寂しかった。
ウリエルとグラムのような1部の者にしか心を許せなかった。
怖かった。
周りのやつらの妬み、嫉妬、恐怖で歪む表情。
悲しかった。
夜中に一人で泣いた日は数え切れない。
「だから俺はあいつらに…」
クロトスは言葉を区切り、いきなり笑い出した。
「ハハッ…何を言ってるんだ、俺は。今のは忘れてください。少し酔いすぎました」
クロトスはポケットに入れている小さな箱を2つ取り出し、皆の所へと行った。
その様子を見たジュニアールは小さくため息を吐いた。
「それで…どう思ったのかしら?」
「…保留じゃ。もう少し様子を見る。…文句あるのか」
「いいえ……フフッ」
2人の目線の先はクロトスからプレゼントを開けるリン、エル。
箱の中にはお揃いの形のイヤリング。
鮮やか青の宝石のイヤリングはリン、透き通るような赤い宝石のイヤリングはエルへと送られた。
ウリエルとティニアにそれぞれイヤリングを付けてもらった2人はお互いの顔を見合う。
揃ってうれしそうに微笑み、2人はクロトスの両腕に抱きついた。
「あの光景を見て、疑えという方が酷じゃろうが…」
「…私ね、あの子達があんなに笑う所なんて久し振りに見たわ」
アイシャはグラスのワインを掲げ、赤いワインを通して目の前の光景を覗くように見る。
「ワインに何か入ったのか?」
ワインに異物が入ったための行動かとジュニアールは思ったがアイシャは首を振った。
「昔の呪いよ。願いを叶えるっていう古い呪い」
ワイン越しに見えるには幸せそうなリン、エルと心底羨ましそうなティニア。
「【彼女らに今後とも幸多からん事を、笑顔に満ちた日々を送れることを我は望む。この杯を我の血とし、我を通して神に捧げよう】」
そうしてアイシャはグラスのワインを飲み干した。
「願わんとも送れるに決まっておろうが…」
と言いつつも自分も常日頃から同じ事を願っているというのは秘密であった。
何といっても彼女達が幼い頃から見守ってきた彼である。
アイシャは微笑みながら再びワインを注ぎ、ジュニアールのグラスにも注いだ。
ジュニアールはそれを見て、少々ぎこちないがアイシャの真似をして、リン、エルをワイン越しに覗く。
「【彼女らに今日のような笑顔でいられる日々が未来永劫続かんことを我は望む。この杯を我の血とし、我を通して神に捧げよう】」
ジュニアールはワインを飲み干そうとすると隣でアイシャがワイン越しにクロトスを覗いていた。
「【彼の者が我の伴侶となり、永遠の愛を我に誓うこと我は望む。この杯を我の血とし、我を通して神に捧げよう】」
半分ほどワインを口に含んでいたジュニアールは勢い良く噴出した。
アイシャはこくこくっと余裕でワインを飲み干した。
「ゴホッ、ごほっ…な、なんじゃと!?」
「…手に入れて見せるわ。私の王子様♪」
酔いとは別に顔を赤くするアイシャにジュニアールは大きくため息を吐いた。
「(若造、同情はせぬぞ)」
と思いつつもクロトスに向ける視線はなんともいえない哀れみが混じっていた。
「あっ、ちなみに呪いのワインは飲み干せなかったら災いが自分に降りかかるわよ」
「何じゃと!?」
ちなみに、次の日にジュニアールはメイド長が大切にしていた花瓶を割ってしまった。
ティニアの脱走を止めようと追いかけた時に服のすそが花瓶を載せていた台に引っかかったためである。
さらに、その現場をメイド長に見られていた。
さらに言えばその時のメイド長は大変機嫌が悪かった。
さらに言えばその時のメイド長の手にはつい先ほど研いだばかりの包丁がなぜか握られていた。
呪いのせいかはわからないが惨劇は確かに起きた。