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神VS魔女&執事

「異空間の創造だけでもすごいのになんの魔法具も無しにこんな小さい水筒に空間を捻じ曲げて繋げるなんて…すごいなんてものじゃないわね」

「貴方こそ初見で私たちの存在を見破り、その水筒の仕組みを一瞬で理解するなどとても人間とは思えませんね」

「別に敬語はいらないわよ。大体にして貴方…いえ、貴方たちも普通の者にはとても見えないわよ?人外っていうレベルじゃない。とても強大で神聖な何かが感じられるわ」

「それは秘密だ。簡単にばらしたら楽しみがなくなるだろう?」

「それもそうね。私も賢者と言われて長いけどまだまだ知らない事が多いわね。だからこそ…この世界は愛しい」


意気投合するクロトスとアイシャ。

アイシャはクロトスが魔術加工した水筒を色々な方向から観察する。

この技術はこの世界には無い異界のものであるためにアイシャが見たことがないのは当たり前である。

それでもこれだけ理解できるのは驚愕に値するだろう。

ウリエルとグラムはリン、エルの誕生日パーティーの準備をしている。

なんの変哲も無い布の袋からテーブル、椅子、テーブルクロス、料理、ワイン、ジュースにお菓子等々と明らかに布袋の容量をはるかに上回るものが次から次へと出てくる。

質量保存の法則やらなんやらを無視したこの袋も水筒と同じく魔術加工が施されたものである。

この世界の住人からしたらかなり理不尽な代物であろう。

ティニアはベッドに腰掛け、クッションを抱きしめながらというよりは絞めつけながらテーブルに座る2人を睨む。


「あんたらなんでそんなに意気投合してるのよ…」

「あら、嫉妬?」


アイシャの顔目掛けて、クッションが飛んでくるがスッとアイシャは避けた。


「普通はもっと警戒するんじゃないの!?もし、暗殺者とかだったらどうするの!?」

「そういえば自己紹介がまだだったわね」

「聞きなさいよ!」


スッと立ち上がったアイシャはローブのスカート部分の端を掴み、どこかの貴族のお嬢様のように優雅に頭を下げる。


「名をアイシャ。恐れ多くも王より賢者の称号を戴いた東の森に住む魔女にございます。以後、お見知りおきを」

「名をクロトス。しがない喫茶店を経営している者だ」


クロトスも立ち上がり、片手を胸の高さに掲げ、貴族風の挨拶で返す。


「ただの喫茶店のマスターが誰にもばれずにお城に侵入できるのかしら?」

「さて…ね」


化かしあいが続く中、会場準備が終わったウリエルとグラムが近づく。


「お初にお目にかかります。私はウリエルと申します。喫茶店のウェイトレス兼クロトスに絶対なる忠誠を誓いし盾にございます」

「我はグラム。同じく喫茶店のウェイトレス兼主の前に立ちふさがる愚者を切り裂く剣なり」


言葉と同時に放たれるプレッシャー。

重い空気の中、アイシャはそれを涼しそうに受け流す。


「本当に…愛しい」


その言葉ははたして何に対してなのか。

恍惚の表情で3人を見るアイシャはまるで子供のようだ。


「まぁ、話はこれぐらいとして…ティニア、2人は後どれくらいでこの部屋にくるんだ?」

「えっ?…あ〜、そうね。もうそろそろかしら」


いきなり話を振られたティニアは慌てて答える。

それと同時に部屋をノックする音。


「誰?」

「姫様。ジュニアールにございます」


あっ、生きてたんだ。とクロトスは心の中で思った。


「失礼いたします」

「えっ!?」


ティニアが慌ててテーブルの周りを見るとクロトス達はマントを被り、姿を消した。

それと同時に部屋へと入るジュニアール。


「ジュニアール。私は貴方を部屋に入れる許可を出した覚えはありません」

「失礼しました。しかし、ここにいるのは本当にお二人だけですかな」

「…どうゆうことかしら?」


動揺を隠すティニアだがジュニアールはじっとテーブル周りを見る。

そこにはニコニコを微笑むアイシャのみ。


「失礼…」


ジュニアールの袖からクナイが飛び出し、アイシャの対面席へと飛ぶ。

それが空中で止まった。


「ジュニアール!?」

「何者か?」


空間が歪み、椅子にはクナイを指で挟んで掴むクロトスとその横で佇むウリエル、グラムであった。


「実に興味深い。アイシャといい、この執事をいい、実におもしろい。」

「何者かと聞いている!?」

「ジュニアール!」


クロトス達を警戒するジュニアールにティニアは諌めようとするがジュニアールは警戒を緩めない。


「何者かと聞かれてもな。何といえば納得する?町の喫茶店のマスターでは駄目か?」

「ただの喫茶店のマスターがそのようなことができるわけなかろう。それに貴様等、人外だな?」


ジュニアールの言葉にティニアはクロトス達を見る。


「ほう。それで?」

「それも強大な何か。隠しているようだが竜種をも上回る存在だな。その子供からは血の匂いがする。その血も人外だけではなく、人を気が遠くなるほどの数を斬らなければその匂いは染み付かない」


ぱちぱちとクロトスが拍手をする。

静かに、不気味にゆっくりと。

口元は裂けるのではないかというぐらい横に広がる。


「人間風情が…。ばれては仕方ない。クックックッ…」


静かに楽しそうに笑うがクロトスから放たれるプレッシャーは先ほどとは比べ物にはならないほどにまで膨れ上がる。

それは建物が揺れ、空気が固体化したような錯覚が生まれるほどだ。


突然、クロトスは体制を低くした。


ジュニアールは袖から出した剣を構える。


アイシャは椅子から立ち上がり、突如として現れた杖を構え、魔法を唱え始める。


ティニアは止めようと叫ぼうとするが声が出ない。


そして、クロトスがにやりと笑うと…




「すみません。どうかそのことは秘密にしてください!」


………

……


土下座した。

実に綺麗な土下座。

神々しい土下座?


一瞬の静寂の後、再びノックの音。


「王女様、失礼します」

「…失礼します」


このなんともいえない空気の部屋に本日の主役予定だった双子メイドが入ってきた。

2人は入ったとたんに固まった。


ベッドから転げ落ち、頭から床に衝突したティニア。


唖然とするジュニアールはこれ以上はないというぐらい口を大きく開けている。


アイシャはあまりの事態に呪文詠唱中に舌を噛み、涙目で口を押さえる。


クロトスは見事に土下座をしている。


その様子をウリエルとグラムは苦笑いで見ている。


「リンちゃん、これって何なのかな?」

「…理解不能」


とりあえずなぜか自分の足元にいるウルを抱き、この状況をどうしようか考え始めた。


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