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神の人外魔境潜入

久しぶりの投稿。

先月は忙しかったのもそうなんですが40話番外編が手間取ってしまい、それを書き上げないことには今回の話は投稿しないという自分ルールのおかげで今日になって投稿。

今月の目標は40話突破

「ふむ…。誰かいたような気がしたんじゃが」


ジュニアールはそう言いながら先ほど声がした方へと歩み寄る。

そこには姿を隠した3人がいる。

クロトスは息を潜め、じっとやり過ごそうとするが…


「ふむ…。2人、いや、3人か?それも人の気配ではない。…人外の者か?」


呟く様な声に心臓が飛び跳ねた。

マントは視覚は誤魔化せるが音や気配は誤魔化せない。

無論、今は気配は消しているがいきなりの事だったのですぐに隠し切れなかったごくわずかなものをこの執事は感じ取ったのだ。

クロトスにとっては計算外だった。

こんな身近にこのような凄腕の男がいたとは…。


「さて、何処の輩じゃ?素直に出てきてはくれんかのぅ」


口調は穏やかだが老人が放つ威圧感は空気を振るわせるほどだ。


「今じゃったら…」


老人の袖から蛇のように鎖が勢いよく飛び出し、鎖の先に繋がれたクナイが先ほど、グラムの手から零れ落ちたパンを貫いた。

ジュニアールがさっと手を引くとそれが引き寄せられ、貫かれたパンはジュニアールの手の上に乗っかる。


「このパンのようにはならんぞ?」


パンを持っていない方の手の袖から銃口が飛び出し、数多に連続して発射される銃弾。

しばらくすると銃口の先にあった床に落ちていた他のパンは粉々に粉砕されていた。


「さぁ、どうするんじゃ?」


クロトスは思考する。


【このまま動かない】=あの袖の銃で乱射されれば高確率で当たるだろう。


【交戦】=問題外。ティニア、リン、エルの知り合いの可能性大。


【逃走】=逃走後、警備が強化されるだろう。結果、誕生日に間に合わないだろう。


【説得】=リスクが高い。牢獄行き、営業停止。ティニアやリン、エルのも迷惑がかかる。


「反応なし。…仕方ないのぅ」


思考が止まる。

老人がこちらの方に袖を向け…


「何をしてる?」


老人の動きが止まった。

心なしか顔が青ざめている。

クロトスが声のする方に目を向けると…


「(オーガス!?)」


そこにはメイド服を着た人型の怪物、失礼、女性がいた。

オルガとまではいかないがそれでも十分に巨大なでっぷりしたメイド。

まるで魔界にいる凶暴な怪物、オーガのようである。

オーガとは人の数倍の巨大な図体をしたヘドロような緑色の皮膚をした人型の魔物である。

ちなみに男をオーガ、女をオーガスと言い、日本では鬼と呼ばれている。

クロトスの目の前にいるのはまさにソレである。

三つ編みツインテールの女性?のメイド?は廊下の角からドシンドシンとこちらに近づいてきた。

執事の目の前まで近づいたそのメイド?は鼻息を荒くしてじろっと執事を睨む。


「…ジュニアール?」

「な、なんじゃ!?」


すぐさま振り返り、メイド?の方へと向く。

執事は冷や汗で執事服の中がびっしょりである。

メイド?はフシューと鼻息を立てながら低い声で唸るように言う。


「メイド長たる私が(フシュー)汗水垂らしながら仕事している中で(フシュー)執事長の貴方がこんなところで(フシュー)パンを食べながらサボっているなんて(フシュー)理不尽とは思わないかい?」

「なっ!?違っ…!」

「しかも…(フシュー)床にそんなにパンくずが散らかるほど(フシュー)食べていたなんてあんたはどれだけサボっていたんだい?」


興奮のためか話の途中に聞こえる大きな鼻息が徐々に大きくなっている。

青ざめる執事が周りを見ると自分の手にはパン。

床には散らかるパンくず。

侵入者はまだ見つけていない(実際にはすぐ近くにいるが)。


「これはわしじゃないっ!これは…!」

「言い訳無用!こっちに来な!そんなに暇なら私がいやって言うほどの地獄を見せてやるよ!」


メイド長は執事の首襟をガシッと掴み、ズルズルと廊下の奥へと引っ張っていく。


「はっ離さんか!わしは侵入者をっ…いやだっ!誰か助けてくれっ!おい、侵入者!何処かにいるのじゃろ?わしを助けろ!頼む、後生じゃ!わしはまだ死にたくないんじゃ〜〜!!」


執事の叫びは廊下の角へと消えた後もしばらく続いた。


「(執事の方。貴方とは別の形でお会いしたかった。もし、生きてお会いできたならその時は友と呼ばせていただきたい!)」


ちなみにクロトスの場合はサボリが見つかったらウリエルの炎に黒焦げにされる。

なぜか、そういう時のウリエルの炎を避けれた事は無い。

結果、黒焦げになったクロトスはウリエルに連行され、ウリエルの見張りつきで仕事の量が増やされる。

クロトスは拳を握り締め、他人とは思えない執事のことを想った。

しかし、それはそれ。

クロトス達には時間が無い。


「さて、早く行くぞ」


クロトスがそう言うがウリエルとグラムの反応が無い。

マントで見えないが自分にしがみついている感触があるのでいない訳ではない。

首を傾げるクロトスはマントを脱ぐと…


「「………♪」」


なぜかご機嫌な2人が自分にしがみついていた。


「何やってるんだ?」

「「…あっ!?」」


クロトスの言葉にはっとする2人はパッと離れた。

3人は心なしか顔が赤い。

しがみついていたというよりは抱きしめていたウリエル、グラムはもちろん、抱きしめられていたクロトスも顔が赤い。

気まずい雰囲気の中、ウリエルは軽く咳払いをし、2人に言う。


「じっ、時間が無いから…ね?」

「あっああ、そうだな!」


慌てて答えるクロトスと無言のまま赤い顔を背けるグラム。

3人は再びマントを被り、ティニアの部屋へと急いだ。


………

……


「私はこれで失礼するわ」

「あら、もう部屋に戻っちゃうの?」

「今夜は少し用があってね…」

「ふ〜ん。…まぁ、いいわ。部屋まで送るわ。それでは王様、王妃様、私も今日はこの辺で」

「そうか。アイシャ殿も今日は城でゆっくりとくつろいでくれ」

「はい、王様。王妃様もお休みなさいませ」

「ええ、おやすみなさい」


謁見室から出たティニアと一緒に出てきたのは漆黒の長い髪の女性。

着ている黒いローブは胸元が大きく開き、生地も薄いために体のラインがはっきりとわかる。

ティニアよりも年上であろう女性の纏う空気は妖美な甘い匂いを漂わせる。


「それで用事って何かしら?」


その声は聞くだけで男を魅了するような甘美な刺激が含まれていた。


「アイシャ様には関係ないわ」


素っ気無く返答するティニアにアイシャと呼ばれた女性は目を細める。


「つれないわね。昔みたいにアイシャお姉さま(ハート♪)って呼んでくれないのかしら?」

「そんな気持ち悪い声で呼んでいないわ!それにそんな呼び方もしてない!」


クスクスとおしとやかに笑うアイシャと憤慨するティニア。

2人が通路を通ると兵士やメイドは廊下の端により、道を空ける。

目を引く2人が通るたびにすれ違った人は2人に目を向ける。


「そういえば、最近の貴方って少しお痛が過ぎるんじゃないかしら?」

「…何のこと?」


ティニアは動揺を隠すように足を速めるがアイシャはその後ろでクスクスと口元を隠して笑う。


「昔からそうだけど、最近は脱走の回数が極端に増えたらしいじゃない?」

「………」

「しかも毎回行く場所は同じそうじゃない?」

「………」

「そんなに…」

「………」


アイシャの問いから逃げるようにティニアの歩くスピードが上がるが後ろで歩くアイシャは涼しい顔でピッタリとその後ろをついていく。


「そんなにその喫茶店のマスターが好きなの?」


グシャーとバランスを崩したティニアは顔で廊下をスライディングするように滑っていった。


「この前なんて朝帰りだそうじゃない。おめでとう♪それで初めてを捧げた感想は?」

「違〜う!!!!!」


叫びと共に跳ね上がるように立ち上がったティニアはアイシャに詰め寄る。


「クロトスとはそういう関係じゃないです!」

「あら、片思いなの?」

「違…わなくもないけど」


言葉の最後はほとんど聞こえなかったがきちんとアイシャの耳に届いた。

にんまりとするアイシャは囁く様にティニアの耳元に言う。


「それにしても貴方が年上趣味だったとはね」

「…はいっ?」

「だって喫茶店のマスターっていったらダンディーなオジサマ以外いないでしょう?口ひげ生やしてコップを拭く渋い男性」

「クロトスは違うわ!」


アイシャの首を掴み、揺さぶりながら怒鳴るティニア。

それでもアイシャの顔は涼しげだ。


「まぁそのクロトスさんの事は後日聞くとして…部屋、通り過ぎたわよ」

「あれ?」


2人はいつのまにかティニアの部屋の数メートル先にいた。


「…ごほん、部屋によらない?紅茶ぐらい出すわ」

「それじゃあ寄らせてもらうわ」


顔を赤くするティニアの後ろでクスクス笑うアイシャ。

ティニアは部屋の扉を開け、中に入ろうとするとアイシャに肩を掴まれた。


「どうしたの?」

「…どちら様かしら?」


アイシャはティニアの問いに答えずに部屋の真ん中、テーブルの辺りに鋭い目線を向ける。

ティニアもそちらに目線を向けるが特に変わったところはない。


「…さっきのカラクリ執事といい、メイド?といい、ここは人外魔境か?」


そういってテーブルの辺りの景色が歪むとそこには…


「失礼しました。ご無礼をお許しください」

「よくぞ人間の身で見破ったものだ」


椅子に座るクロトスと頭を下げるウリエル、そして、感心するように腕を組んだグラムがいた。

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