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神、侵入開始

ストックが39話まであります。

実は40話の番外のアイディアがまったくない。

とりあえずはキャラクターの誰かにスポットを当てようかと考えています。

存在を忘れていた事に対する償いも兼ねてウルにしようかな?

それともあえてレイとか伯爵にしようかな?

《城門の兵士A,Bの会話》


「今日、王女様は脱走しなかったよな?」

「そうだな。…今日ほど平和を実感した日はないよ…グスッ」

「いや、泣くなよ。…気持ちはわかるけど」

「そもそもあいつがこの国に来なければ俺達はこんな苦労をしなかったんだ!」

「あいつ?…ああ、他国からきたっていう喫茶店のマスターか」

「あいつが来てから王女様は毎日のように脱走するようになった。その度に脱走を止める俺達は重症だぞ!俺達は王女に怪我させるわけにもいかないし、あの双子メイドも邪魔するし!」

「そういえば、あいつらは今日が誕生日と聞いたが?」

「知るか!あんな捨て子のやつらなどどうでも良い!大体にして誕生日じゃなくて協会に拾われた日だろうが!女王様が協会から引き取らなければ乞食同然だろうに!」

「おい、言いすぎだぞ!」

「それに俺はあいつ…らに……?」

「…おい、どうした!?………誰か!医者を呼べ!!」


………

……


―【王城の倉庫の一角】―


「ちょっと休憩」


誰もいない倉庫の一角。

食料貯蔵庫の中でもワインを保管している一角のようだ。

少しひんやりしており、薄暗い。

しかし、埃などは無く、掃除が定期的にきちんとされているようだ。

そこから囁くような小さな声がすると空間が歪むように3人の人影が現れた。


「ウリエル。あとどのくらいなんだ?」


最初に現れたのはタキシードを着たクロトス。

細身ながらも鍛えた体は少々高価なタキシードを纏うと貴族のような気品を醸し出す。


「目的地まで…後2/3といった所ね。」


背中がパックリと割れた大胆な紅いドレスを着たウリエルは肘まで覆われた純白の手袋をはめた手で地図を指差しながらクロトスに示す。

長い髪はシルバーの髪留めで纏められ、首には天使を模った宝石のネックレスをかけている。


「………」


無言のグラムはシックなデザインのハイウェストのドレス。

青いドレスにグラムの白銀の髪はよく映える。

頭にはささやかな花飾りに両手にブレスレットを付けている。

これで不機嫌な表情でなければ完璧であったのに…。

クロトスはウリエルとの話を切るとグラムをじっと睨んだ。


「さて、グラム。…気持ちはわかるが他の方法はなかったのか?」

「………」


クロトスの言葉を無言で返す。


「お前…【魂を喰った】だろう?」


魂を喰らうとは如何なる事なのか?

まず、肉体から魂が離れる=死ぬという事ではない。

魂無き肉体は起きない肉体、生きるだけの肉体という言ってしまえば植物人間状態に限りなく近いものになるというだけだ。

植物人間と違うのは魂が宿っているかいないかの違いだ。

前者であれば目覚める可能性はあるが魂のない人形は起きることは永遠にない。

例外として別の【何か】がその魂の代わりに宿れば別だが…。

グラムの行った行為は先ほどの兵士の魂を略奪、吸収。

すなわち、先ほどの兵士の魂を吸収=【喰らった】のだ。


「…ちょっとだけだ」


むくれるように言うグラム。

ちなみに魂の1部分を喰らうとどうなるか?

詳しい説明は省くがあのリン、エルを侮辱した兵士はあの瞬間、発狂するような痛みに襲われ、数日の昏睡で白髪と化し、毎日のように幻聴、幻惑に襲われ、寿命は大分縮んだ。

ちなみに怒りで思わず喰らったので予定より喰らい過ぎたのはグラムの秘密だ。


「お前なぁ……」


クロトスは呆れ半分、怒り半分でため息を吐く。

その横で地図を仕舞ったウリエルも頭を押さえる


「ばれる所だったろうが。始末するんだったら後日にこっそりと始末しろ。」

「それに未発見の病気とか他国の仕業とかの騒ぎになったらどうするの。偶然の不幸か何かの形で駆除しなさい。」


2人にはあの兵士の魂喰らいなどで怒ってはいなかった。

2人もリン、エルが侮辱された事に対しては怒っており、グラムが何かしなければ2人が何かしらの行動をしていたであろう。

むしろ、グラムが1番軽い罰だったかもしれない。


「すまない。あれの暴言を聞いたら思わず…」


俯くグラムにウリエルは頭を撫でた。


「…しかたないわね。後で情報操作しとくわ」

「すまない」


後日、この兵士は他国で発見された新種の病気と診断され、治療のためにその国に移送された。

しかし、その国にその兵士は運ばれる事は永遠になかった。


「それにしてもこれって便利よね。感触はフワフワして気に入らないけど」


ウリエルが持っているのは包んだ者を透明にする不可視のマント。

この町でクロトスが買った漫画に出てくるこの道具をクロトスが【創造】したものだ。

この城に潜入する前に3人はドレスに着替え、時間がかかったウリエルとグラムの着替えをクロトスが待っている間にこの存在を思い出したクロトスはさっそく【創造】したのである。

ちなみに3人は城近くの知り合いのプティックで着替えた。


「…おい、ウルは何処だ?」


クロトスは先ほどから見当たらないウルを2人に聞いた。


「我は知らんぞ」


クロトスとグラムはウリエルを見るがウリエルは首を振った。

ドレスに着替えて、不可視のマントを被るまでは一緒にいたはずである。

3人になんともいえない空気が流れた。

するとウリエルが持つ不可視のマントがもぞもぞと動き出した。

ウリエルはマントを裏返すと爪で一生懸命マントにぶら下がっているウルが前足をプルプルさせていた。

自分に気づいた事がわかると爪を離して地面に降り立つ。

そして、3人を恨めしそうに睨み、いや、ネコの表情はわからないが確実にそうであろう。

その証拠に鳴き声が低く、怒っているように聞こえる。


「あ〜、…ごめんな。お前の事すっかり忘れてた」


クロトスの言葉にウルはクロトスの足にネコパンチを放った。

痛くは無いが罪悪感がクロトスの心を刺激する。


「ウル。我の頭に乗っていろ。今度は忘れん」


そう言って自分の頭にウルを乗せるグラム。

ウルは器用にグラムの頭の上で丸まり、ふてくさった。

ウリエルは苦笑し、再び自分達に不可視のマントを被せる。


「ティニアの部屋は3階の角よ。慎重にね」


ばれたら牢屋行き、喫茶店は営業停止である。

それを念に入れて3人+1匹は貯蔵庫から足音を立てないように出た。

ティニアからの情報によると他国からお客が来ているらしく、城のメイド達はドタバタと慌しかった。

3人がキッチンの前を通りがかると目を輝かせたクロトスは皆を引っ張り、中へと入った。

城の厨房は喫茶店のマスターには興味があるらしい。

厨房は広く、コックも十数人はいる。

慌しく、コック長と思われる人の怒声が幾重にも響く。


「スープあがりましたっ!コック長、味見お願いします!」


その声にコックというよりは山賊といった感じの眼帯をした大男がのしのしと近づいていった。


「おう!……バカやろう!このスープはハバダイ鳥の骨のみで出汁を取るんだ!肉は使わねぇ!!スープに臭みが出るだろうが!」

「しっ、しまった!」


コック長はスープを味見をした瞬間に手に持っていたスプーンをスープを作っていたコックに投げつけた。

コック長の指摘にそのコックの顔が一気に青ざめた。


「時間がねぇ!貯蔵庫からバイダルとコクガンの皮を持って来い!」

「いや、この味だとバイダルより貯蔵庫にあった隣国の酒を少量加えた方が味が引き締まる」

「それだ!そこの給仕のメイド!貯蔵庫から前に仕入れた酒もってこい。棚の隅にある酒だ!」

「はっ、はいっ!」

「助かったぜ。ありが…おい、今助言したのはお前か?」

「コック長に俺達が助言できるわけないでしょう?」

「…じゃあ、今のは誰だ?」


………

……


2階の廊下隅で3人はマントを取った。


「貴方は何してるんですか!」


ウリエルはクロトスに詰め寄った。

怒鳴っているが場所を考えて、声は絞っている。


「いや、思わず…」


アハハッと冷や汗を流しながら両手を上げて笑うクロトス。


「姿消しているのに料理を摘み食いして、さらにコック長に助言するなんてバカですか、貴方は!?」

「つい、料理人に血が騒いで…」

「貴方は料理人じゃなくて神王でしょう!」


グラムは詰め寄るウリエルと後ずさるクロトスを見ながら床に降ろしたウルと一緒にパンを食べている。


「グラムも何処からパンを持ってきたのっ!?」

「さっきの厨房からだが?」


首を傾げるグラム。


「グラム。俺のは無いのか?」

「無論、余分に持ってきたぞ」


グラムは何処からかパンを取り出してクロトスに渡す。


「偉い!」

「バカですかっ、貴方達は!?」


ウリエルは2人に拳骨を落とした。

2人は揃って頭を押さえる。


「リンとエルの誕生日は今日なのよ!今は夜!後もう少しで日付が変わるんですからね!それを分かっているんですか!?」

「「はいっ!」」


怒りでウリエルのバックが轟々と燃える炎のようなオーラ見える2人。

思わずグラムの手からパンが落ち、地面に転がる。


「いいですか!私たちは…!!」

「何じゃ、騒々しい!」


廊下の角の影から聞こえてくる老人の声にクロトスは2人を抱き寄せ、不可視のマントを急いでかぶった。

角から出てきたのは…


「ふむ…。誰かいたような気がしたんじゃが。」


元傭兵、ティニアの武術の師匠でもある老執事のジュニアールであった。

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