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神の相手は美しき兄妹!?

なんとなく話も折り返しではないかという印象を受けます。

目標は100話だったけどこの分だと50話かな。

この試合が終わったら影が薄いティニアの話を入れようかと思います。

大会2回戦当日。

大幅なルールの改変にも関わらず、観客達にはそれほど大きな波紋は無かった。

観客に言わせれば、これぐらいで動揺しているようではこの国で生活するなど無理という意見もある。

他国にとってもほとんどの選手が棄権していまい、トーナメント表がガラガラになった試合などよりはこちらの方がおもしろいということとなった。

大半の選手も平和的な話し合い(武力行使)でしぶしぶではあるが了承した。

それでも不満はあるわけで……


「…ねぇ、帰ってもいいかしら?」


闘技場の舞台にはすでに不満を洩らすウリエルとクロトスがいた。

クロトスは頭にバンダナ、白いズボンに緑の服という動きやすい格好である。

これはクロトスがこの世界にきたばかりのときに着ていた服である。

ウリエルはレオタードの上から動きやすいように腰から足元にかけて切り開かれた薄地のドレスのような服であった。

右の胸から肩にかけて白いミスリルの肩当と腰には片刃の剣を収めた鞘が備え付けられている。

格好全体が白で統一されているために何処か神々しさを感じる。

しかし、その神々しさもウリエルの表情が影をさす。


「俺だけにアレの相手をしろっていうのか?」


ウリエルが実に嫌そうな表情で不満を洩らす横でクロトスが前を指差し、ウリエルの要望を断る。

2人はこの試合は気が進まなかった。

その原因は2人の目の前の人物。

クロトスが指差すもの。

そこには2人の男女。

男はいかにも魔術師といった緑のローブに杖といった格好の線の細い美男子、女は軽装の鎧を身にまとったスレンダーな美女剣士。

その2人はお互いの両手を取り合い、見つめ合っている。

何をしているのかというと……


「あ〜、お兄様!彼らが私達の事を見ているわ!きっとうらやましいのね!私がお兄様とこんなにくっついていることが!」


そう言って甘えるように男の魔術師に抱きつく女剣士。


「違うぞ、妹よ!彼らは見とれているのだろう!我らの愛の形を!その美しさに!神々しさに!我らの全てに嫉妬しているのだ!」


女剣士に抱きつかれている男の魔術師は両手を空へ高々と掲げながら高らかに叫ぶ。


「あ〜、お兄様!そうなのね!彼らはお兄様の美しさがうらやましいのね!」


頬を染めながら女剣士は男の魔術師に言うが微妙に話が噛み合っていない。


「そうだ!我らの愛の前では神々さえも嫉妬するのだ!!」


男の魔術師も話が噛み合っていない。

しかし、2人はそのようなことなど気にせずにお互いを抱きしめあった。


………

……


「第2回戦!緊急連絡で知っているとは思うがルールが変わった!知らん奴は後で確認しろ!」


実況席では伯爵が苛立ち混じりで叫んでいた。

何処か急いでる印象を受ける。

マニュアルではこの時に変更となったルールを説明するのだが伯爵は省いた。


「ちょっ、ちょっと、伯爵!マニュアルと違います。それに、レイ博士がいないみたいですけど!?」


慌てて大会実行委員の係員が飛んできた。


「こんな試合なんてさっさと終わらせろ!俺はあいつらのような変態は死ぬほど嫌いなんだ!レイなんて『生理的に受け付けないわ』とか言って選手専用の治療室に行ったぞ!」


その係員に伯爵は怒り混じりで言い放った。


「そんなっ!?困りますよ!大体、近親相姦なんて他国では認められている所も…。」


係員はそう反論する。

確かに他国には独自の文化と法律、宗教などがある国もあり、近親相姦を認めている国もある。


「あいつらはそれにオカマ、ホモも付いているんだぞ!」

「………はっ?」


伯爵の言葉に係員のみにならず会場中の観客の頭に?マークが浮かぶ。

ちなみに伯爵と係員の会話はマイクを通じて会場中に流れている。

伯爵は係員に舞台でイチャついている選手2人のプロフィールデータが書かれた書類を投げ渡す。


「これが何か?」

「あの女剣士は《男》だ!あれは《妹》じゃなくて《弟》だ!ここを見ろ!」


そう言って伯爵は係員が持っている書類の一箇所を指差す。

係員はその一箇所……『選手の性別』の欄に注目する。

………『性別 = 男』。

しかも、係員の視界の隅にあった『趣味』の記述が目に入った。

『最近の趣味は〜お兄様との〜○○○プレイかな(ハート♪)』

…係員の顔が青くなった。

ちなみに舞台ではイチャイチャする兄妹(弟)がさらに行動がヒートアップしている。


「しかも、オカマなホモで近親相姦なんて最悪の組み合わせだろうが!俺が魔法を使えたらあいつらを灰にしてやるぞ!」

「でも、仕事ですから…。それにあいつらの国は恋愛自由がモットーですから。たとえ、男同士であろうとハーレムであろうと動物であろうと結婚できるんですし。」

「ハーレムまでは俺だって認めるさ!むしろ歓迎だ!だが、あれは駄目だ!むしろ、動物の方がましだ!」


実況席では係員が伯爵を説得しているが伯爵の言葉に会場中の男が同意している。

女性に関しては子どもの目を塞ぐ者もいれば、ジッと見つめる者やなにやらメモをする者と様々である。


「あの人の意見に同意するわ。この世界から駆除しないと駄目よ。いえ、他の世界にもあっては駄目ね。」


ウリエルは害虫を見るような目で心底嫌そうな表情である。


「それはわかるが…俺らはこれからアレと戦うのか?」


クロトスはもはや人間として扱っていない。

目の前には免疫のない者には目を背けたくなる光景が広がっている。


「…近づきたくもないわ。あの人の言うように灰にしましょう。殺しも有りなのよね?」


いかにも当然そうなんでしょうといった顔で聞く。


「ルールが変わったから有りだけど…魔法は駄目だぞ。この世界は杖がないと魔法を使えないらしいから。」

「そんなもの知らないわよ。アレに近づく方が嫌よ。」


クロトスの言葉に耳を貸さないウリエルにクロトスはため息を吐く。


「色々と怪しまれるから魔法は使いたくないんだ。今はまだ目立った事はしたくない。」

「……………善処します。」


心底嫌そうな表情でウリエルは答えた。

クロトスも本当は同じ気持ちだがあまり目立った事をすると周りが怪しむ。

すなわち、『気味悪がられる=店のお客が減る=売り上げが下がる』。

手を抜いて戦うという事は意外とストレスが溜まるが仕方ない。

クロトスはストレス発散のために帰ったら店の地下でウリエルと実戦訓練でもやろうかとこの時思った。


「後、極力殺しはやめとけ。会場には子どももいるんだからな。」


クロトスの言葉にウリエルは周りを見た。

所々に子どもの観客がいた。

しかし、目の前の変態のためにほとんどの者が付き添いの保護者に目を塞がれている。

それでもクロトスの子どもに対する配慮の言葉、その優しさに先ほどまでの苛立ちが霧散した。


「かしこまりました。神王様。」


だからこそ臣下としてクロトスに敬意をもって接した。


「…敬語はやめろ。今の俺は…。」


といってもその主は気に入らないようだが。

長年の付き合いからクロトスが何を言いたいのかもわかっている。

『今の俺はクロトスであって神王ではない。』

しかし、ウリエルにも譲れないものがある。


「申し訳ございませんが貴方をお守りするのも私の仕事ですから。」


そう言ってウリエルも構える。


「…たとえ、相手が害虫だとしても全力で駆除いたしましょう。」


その時、係員と言い争っていた伯爵の叫びが会場中に響く。


「あ〜、試合開始!さっさと終わらせろ!」


ここに神々の王と天使の怒りを買った愚者の裁きが始まる。

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