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番外2 秘密の報告書

今回は20話記念で王と王妃が主役。

最近になって気づいた。

「王様の名前決めてない!?」

…ごめんなさい。

今後に出番があったら名前をつけます。

……つけないかも?


夜中のとある王族の寝室。

そこには普段の煌びやかな格好とは違う男女。

ピンクのネグリジェを着ているこの王都の王妃であるエインは同じベットで寝ている夫であり、この国の王の隣で一冊の本のようなものを見ていた。

時折、笑みを漏らすエインの気配に隣でモソモソと王が起き出した。


「…起きていたのか。」

「ごめんなさい。起こしちゃったわね。」


目をショボショボとさせている王はエインに微笑む。


「かまわないさ。何を見ているんだ?」


エインが持っていたのは黒い革張りの本。


「リンとエルの報告書よ。ティニアの事やお城、町に関することで気づいた事をコレに書いて提出させているでしょう?」

「…ああ、そういえばそうだったな。」


寝ぼけているのか首をまわしながら答える王。


「どんな事が書いてあるんだ?」

「見る?」

「最近はあの若者のところに入り浸っているだろう?クロトス…とか言ったか?」


毎日のように男の所に入り浸る娘。

メイド2人が一緒ではあるが親としては心配である。


「年頃の娘の親としては気になる?」

「あいつの夫にはこの国の王になってもらうつもりだからな。変なやつだったら困るだろう。」

「フフッ…それもそうね。」


照れ隠しに顔を背ける夫に微笑むエイン。


「見てもいいか?」

「ええ。」


王がエインの持っている報告書を覗き込むが見た瞬間に言葉をなくす。


―――――


●月☆日 記入 エル


今日は王女様はお勉強です。

そして、今日も逃げ出しました。

逃げ出した王女様とケーキを食べました。

楽しかったです♪



―――――


「……これじゃあ報告書じゃなくて日記だろうが。」


報告書の隅にはクレヨンでケーキと人間の形をした何かが描かれていた。

多分、リンとエルにティニアなのであろう。

1番大きな人間の絵、ティニアなのであろうが手が以上に伸びていてケーキを鷲掴みにしている。

子どもらしい下手な絵であるが王は何処か温かみを感じた。


「あの子達はまだ14歳よ。子どもらしくてかわいいじゃない♪」


クスクス笑うエイン。

それを見て王は頭を掻く。


「それもそうか。」

「それよりも…『今日も逃げ出した』ということはたびたび逃げ出しているのね。」


突如として母親の顔になるエイン。


「元気があっていいんじゃないか?」

「限度があるわよ。今度、教育係に問いたださないと。」


怒り顔のエインを見て先ほどまでの眠気が吹っ飛ぶ王。


「そ、それよりも次だ。」


―――――


*月▲日 記入 リン


本日の仕事はお客様の観光案内兼住居探し。

お客様は他国から来た、この国の恩人とのこと。

名は不明のためにこれより乙と呼称する。

姉はさっそく乙を兄と呼んでいた。

町を案内していると町の荒くれ者達と争っている王女を発見。

劣勢の王女様を乙は救助。

戦術は異国の剣術と考えられる。

また、杖無しでの呪文詠唱可能の可能性有り。

至急、調査されたし。

王女と合流後にはぐれた姉とパン屋にて合流。

そこで乙の名を『クロトス』と呼称することが可決。

これより乙をクロにぃと呼称する。

クロにぃの住居探しを開始するものの条件該当物件は皆無。

その後はクロにぃの希望により元は喫茶店だった場所に決定。

廃墟に近かったために4人での掃除と買出しを開始。

食器、家具などの住居に関する費用は国が支払うという話でしたので私が立て替えた料金は経理を通して請求しました。


―――――


「これを書いたのは本当にリンなのか?」


エルと違ってしっかりとした文字だがリンにしては文章が長い。

あまり多くを語らないリンの事をよく知っている王にとっては信じられない。


「そうよ。普段はシャイで無口だけど文章だとおしゃべりになるのね。」

「口調はどっちも子どもらしくないけどな。」

「責任感が強いのよ。妹のために大人に混じって仕事をしていたから自然と言葉使いも大人びてきたのよ。」

「あいつらがこの城に来てから何年だったかな?」


王はどこか遠い目をする。


「9年よ。あの子達が5歳の頃に協会から貴方が引き取ったんでしょう?」

「ティニアは城から出れなかったからな。友達になってくれればと思ったんだが。」

「今じゃあ姉妹同然だものね。」

「俺は養子にしてもよかったんだがな。」

「振られたものね。」

「しかたないさ。あの子達が選んだ道だ。それに親子じゃなくても支える事はできる。」


と言いつつも少々残念そうに言う王。


「それもそうよね。…それよりも。」

「ああ、わかっている。娘に手を出す愚か者にはそれ相応の罰を与えよう。」


2人はこの報告書を見て初めて王女が荒くれ者に襲われていた事を知った。

このための報告書でもある。


「次のも見ようか。」


―――――


△月○日 記入 エル


今日はおにいちゃんの喫茶店に遊びに行きました。

今日も王女様はお城を抜け出しました。

喫茶店にはネコさんがいました。

おにいちゃんは宣伝のためにお城を爆発させる話をリンちゃんとしていました。

結局は大会に出ることになりました。

少し残念でした。


―――――


「「………。」」


2人はある1文に注目する。


『おにいちゃんは宣伝のためにお城を爆発させる話をリンちゃんとしていました。』


「さらっとすごいことが書いてあるな。」

「まさか…しないわよね?」


冷や汗を流すエイン。


「わからんぞ、リンだからな。」

「…それもそうね。」


腹黒さは国内1と城内で噂されるリン。

ちなみにエインも王もリンのイタズラの被害者である。

さらに言えば先ほどのクロトスの喫茶店に関する改装費用はクロトスが力を使ったのでお金はほとんどかかっていない。

これを世間では『水増し請求』という(このお金は3人の喫茶店での飲食代となっているので王女公認)。


「警備の強化をしておくか?」

「…一応しておきましょうか。」


―――――


◆月▼日 記入 リン


パシフィス国主催第142回 セヴィオール武闘会開催当日。

王女様のご命令で参加者控え室に行くとクロにぃはネコさんの格好をしていた。

控え室ではクロにぃは周りの選手を挑発していた。

しかし、試合開始には行方不明になっていた。

クロにぃはあの人達は逃げ出したというので大会本部に通達。

試合はオルガ選手との一騎打ちだった。

勝敗はクロにぃが勝利だが試合終了後にクロにぃは落ち込んでいた。

宣伝やらサプライズがどうのと呟いていた。

王女様と姉と一緒に喫茶店で祝勝会をすることになった。

途中の道でボロボロの男達が裏道で倒れていたのを見た。

クロにぃの控え室にいた人達に見えたが気のせいであろう。

町の美観に関わるので後でお城の兵士に掃除してもらった。


―――――


「…見なかった事にしないか?」

「…その方がいいかもね。」


―――――


□月★日 記入 エル


今日はおにいちゃんの喫茶店を手伝いました。

女性のお客さんがいっぱい来ました。

王女様が手伝うと言いましたが邪魔なのでリンちゃんに説得してもらいました。

リンちゃんが王女様に何か言ったら王女様の顔がみるみると青くなりました。

何を言ったか聞いてもリンちゃんはクスクス笑うだけで教えてくれませんでした。

時々リンちゃんはイジワルさんです。

午後にオルガのおじちゃんが来ました。

店に入ろうとしたら大きすぎて店に入れませんでした。

かわいそうなので今度ケーキを持ってってあげようと思いました。


―――――


「あのオルガが喫茶店?」

「ケーキを食べるの?」


2人はオルガが喫茶店でケーキを食べる姿を想像してみた。


………

……


「「プッッ!」」


見た目が熊のようなオルガがケーキを食べて満面の笑みを浮かべる姿を想像して思わず噴き出す2人。


「そ、そう言えば猫愛好会の【マタタビ飯の会】会員だったな。」

「結構かわいいところがあるのね。…それはそうと。」


突然ピタッと笑いをやめるエイン。

むしろどこか怒っているように見える。


「その【マタタビ飯の会】って国王公認だったわね?」


一気に青ざめる王。


「補助金も出してるんだっけ?」

「そ、その話はもう終わっただろう?」

「それもそうなんだけどね。…思い出したらムカついてきたわ。」

「だから…そのぅ…な。」


しどろもどろの王に詰め寄るエイン。


「会員のネコミミビキニのコスプレ写真と引き換えって話だったわね?」

「あ、アハハッ…。」


笑ってごまかしながら後ずさる。


「そんなに私より若い子がいいのかしら?」

「それは無い。」

「…エッ!?」


キッパリとした否定に思わずどもる。


「俺はお前の方がいい。」

「…え、えっと。」


徐々に顔を赤くしながら狼狽するエイン。


「エイン…。」

「貴方…。」


………

……


―≪後日報告≫―

1,王女の勉強時間が2時間延長

2,城内の警備強化

3,国内で行方不明者3人

4,オルガにエルよりケーキの贈呈。

5,数ヵ月後に王妃の妊娠発覚



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