神の降臨。そして、悩殺。
ようやく神は貴方の守護天使!?の話のストック7話になりました。漢字と法律に自動車の資格の勉強と就職活動に学校の宿題のハードスケジュール!合間合間に書いています。
「1日を48時間にしてください、神様!」
「学校に出ている時間が倍になるぞ。」
「グハッ!」
【王都:パシフィス】
「「「KSYAAAAAAA!!」」」
「「「GOOOOHAAAAA!!」」」
「くっ、数が多すぎる!」
「団長!もう抑えきれません!」
「なんでこんなにモンスターが…。」
異常なことである。
王都パシフィスの騎士団長を務めるモリガンは王都の入り口でモンスターを必死にくい止めながらも頭の片隅では今の状況を冷静に分析していた。
モンスターが群れで行動する事はよくあることだ。
実際にゴブリンの群れが近隣の村を襲ったという事件も過去にあった。
しかし、異種族同士で群れをなすことはありえないはずである。
高い知能を持つ魔族達なら手を組んだ前例がある。
だが、下等知能のゴブリンとスライムの群れが共に町を襲うなどありえないはずなのだ。
同時に群れがここを襲撃したのなら異種族同士の争いもあるはずだ。
しかし、目の前の敵はむしろ人間ほどではないが統率の取れた戦い方であった。
ゴブリンが兵士を足止めし、スライムが足元から戦う騎士とゴブリンの隙間から襲う。
目の前にこんな光景が広がっていなければモリガンも信じなかっただろう。
王都の周りは高い城壁に囲まれており、さらにその外側を深い水路で囲んでいる。
王都と外を繋ぐ唯一の出入り口である橋の上では王都を守護する騎士団がモンスター達と戦っていた。
対岸にはゴブリンとスライムの群れが100匹以上控えていた。
騎士団員も死者はいないものの負傷者が多数おり、橋の上にはモンスターの死骸が山積みされていた。
さすがにこれ以上の戦闘は不可能であった。
しかし、騎士団の敗北はモンスター達を町の中に入れることを意味する。
そうなれば王都は壊滅的な被害を被る。
それだけは騎士団の誇りが許せなかった。
「団長!橋を落としましょう!」
部下がゴブリンの振り下ろす粗末な棍棒を盾で防ぎながら進言する。
その力強さに盾がミシミシと悲鳴を上げる。
モリガンもこのままでは結果がどのようになるかは痛いほどよくわかっている。
だが…
「だめだ!時間が無さ過ぎる!!」
王都を掛ける立派な橋。
その立派さが仇となり、橋を落とすとなると手間がかかり、とてもじゃないがモンスターを足止めしながら行う程の余裕はない。
「では…!」
解決案を模索していたがモンスター達が待っているはずもなく、再び襲い掛かろうとしたその時…
「なんだ!?」
「水?」
騎士団とモンスターの間に直径8センチほどの球体が突然出現した。
透き通るような静かな蒼色の球体である。
どこか神々しささえ感じる。
騎士たちもモンスターたちも呆気に取られるかのように呆然とその球を見つめる。
すると、その蒼い玉は徐々に膨らんでいた。
ついには直径2メートルほどになる。
「新手でしょうか?」
モリガンの部下がフラフラになりながらもその球に剣を構える。
「お前、戦う余力あるか?」
「いえいえ、団長にお譲りしますよ。」
「このやろう!」
互いに冗談は言っているが立っているのもやっとの騎士団員にモンスターと戦う余力などあるわけがない。
そして、蒼い玉は光輝き出し、爆発するかのように霧散した。
消滅したのかと思いきや、そこには一人の青年が足を抱えて浮かんでいた。
蒼髪の青年。
先ほどの球体と同じ色である。
目を丸くする双方の間で浮かんでいる青年の高度が徐々に下がり、すっと青年は地面に足をつけた。
そして、すっとその眼を開いた。
緑色の眼。
空のように蒼い髪と草木のように深い緑の眼。
草原のような印象の青年は周りを見渡した後、騎士団とモンスターの群れに目線を交互に向ける。
そして、モリガンと目が合った。
すると青年はモリガンに向けて何を思ったのかニコッと微笑む。
なぜか、モリガンは鼓動が早くなり、顔をほんの少しだけ赤らめてしまった。
「(落ち着け、俺!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!相手は男!…ってそうじゃなくて!あいつはなんなんだ!!)」
モリガンを混乱させるほどきれいに微笑む青年だった。
その青年はモリガンの葛藤を知らずにモリガンに近づいてくる。
美青年という言葉に相応しい顔つきであった。
周りの騎士団員もモンスターのことを忘れて2人を観察していた。
「あの…?」
その声は男性とも女性とも言えない中性的な声であった。
モリガンには声というよりはハープのような楽器と同じ印象を受けるほど綺麗な声であった。
「な、なんだ!?」
上ずった声で聞くモリガン。
モリガンの前の青年は言いにくそうにモリガンの目から若干、目を逸らして言った。
「ここは何処ですか?」
「…はぁっ!?」
「え〜と……そう!道に迷っちゃったんですよ!」
モリガンは思った。
なんなのだ!この青年は!?
迷子!?
このモンスターと俺達の間にいきなり出てきたこいつが!?
モンスターの前でも平然としているこいつが!?
というかあんな現れ方で俺達が信じると思っているのか!?
モリガンはますます混乱した。
「え〜と、お前はわかっているのか?」
とりあえず、モリガンは言葉を発した。
でなければこの状況がいつまでも続くような気がしたからだ。
「はい?」
首を傾げる青年。
「今の状況わかっているのか?」
「何がですか?」
「後ろのモンスターの群れだよ!」
青年が後ろを一瞥した。
モンスター達は突然、出現した青年に怯んでいた。
そのモンスターを見て、青年は顎に人差し指を当てて考え込む。
そして、1言…
「あれがなにか?」
「〜〜〜!!」
その言葉に言葉を失ったモリガンの様子を見て、察しがついたかのように聞いた。
「もしかして…お困りですか?」
「見ればわかるだろ!ここを通したら町は壊滅だ!!」
怒鳴る様に言うモリガンに青年は世間話の最中に苦労話を聞かされたかのように…
「大変なんですね〜」
と他人事かのように言った。
「ウガァァァアアァッァッァッァァァァ!!!!!!」
あまりにもめちゃくちゃで異質な青年にモリガンは苛立ちで奇声をあげた。
それを見た青年は自分のポケットをあさる。
「落ち着いてください。そんな時にこの『○○○配合牛乳EX これで貴方もフィーバーナイト♪』をどうぞ!」
「誰がそんな怪しいもの飲むか!ってか、○○○ってなんだ!?」
ポケットから出した牛乳(?)はあきらかに黒いオーラを発していた。
呪いや邪気、怨念、恨みが絶妙なバランスで混じったようなオーラである。
ちなみに色は白ではなく赤紫である。
……これを牛乳と呼んでいいのか?
モリガンの当然の疑問に青年は答えた。
「たぶん、カオスじゃないですか?」
「カオスってなんだ!?」
ちなみにカオス=混沌、無秩序を意味する。
間違っても牛乳に混じって良い代物ではない。
「大丈夫ですよ。これ開発した人は兵器開発の第一人者ですから」
「今、兵器って言ったよな!?危なくて飲めるわけないだろ!!」
確かに飲み物よりも毒物、むしろ、兵器と言った方がしっくり来てしまう牛乳らしきもの。
「………」
「その『こいつ空気読めよな。』的な顔はやめろ!」
「団長!!」
「なん…だ…ぁ、いや、うん……すまん。」
1人の騎士団員の呼び声に振り返ると騎士団員のほとんどが2人をにらんでいた。
モンスターそっちのけで喧嘩しているのを怒るなという方が無理であろう。
泣き顔の団員がいたことには良心がズキズキと痛む。
「すまんな。つい…」
「まあ、気にするな♪」
モリガンの言葉に他人事のように言う青年。
「お前のせいだろうが!」
「まあ、気にするな♪」
「するに決まってるだろうが!」
「まあ、気にするな♪」
「おい…」
「まあ、気にするな♪」
「ウガァァァアアァッァッァッァァァァ!!!!!!」
またもや奇声を発するモリガン。
もはや、モンスターのことなど忘れていた。
それを現実に戻したのは諸悪の根源と言っても良い青年の一言であった。
「じゃあ、取引しませんか?」
「何が『じゃあ』だ!?話がつながってないだろ!」
律儀に突っ込みを入れるモリガン。
これがモンスターの前でなければただの漫才コンビである。
その片割れは先ほどとは違うまじめな顔つきで一言。
「あいつらを僕一人で何とかしたら、しばらくの衣食住の面倒を見てくれませんか?」
「はぁ!?」
100匹はいるモンスターをなんとかするなど自殺行為である。
モリガンにとってこの青年はやる事成す事の全てが理解不能であった。
「いかがです?」
「できるものならやってみろ!!」
もはや自棄と混乱でそう叫んだモリガン。
その言葉に笑みを零す青年。
「わかりました(これでとしあえずは良しっと…。とりあえずどのくらい力が使えるか調べないとな。とりあえず、魔法を試すとするか)」
青年は計画通りにいった事にほくそ笑み、モリガンは若干だけ冷静になった思考で考える。
この青年が少しでも時間稼ぎをしてくれれば…。
騎士団員の体力回復、さらにモンスターの数を減らしてくれれば御の字である。
そう考えたが…。
「100匹ぐらいか。中級魔法で十分かな?」
「お前。魔法が使えるのか?」
一人事を言う青年にそれを聞いたモリガンが聞く。
「珍しいですか?(この世界に魔法の文化が無いのか?)」
不安を隠すように仮面を付けたかのように聞く。
「いや、魔法使いはこの王都にも多くいるが…。杖は無いのか?」
「何でですか?」
「魔法使いは杖が無いと使えないと聞いたが?」
『この世界』の人間は杖を媒介にして、呪文を使う。
人間1人では魔力が小さすぎるのだ。
大半の魔法使いは杖を媒介にして魔力を増幅させた状態でやっと使えるのが『この世界』。
しかし、『神王の世界』では…
「俺は大丈夫ですよ。(杖か…。必要ないが、怪しまれないように後で作っとこう)」
「しかし…」
不安そうなモリガンに苦笑する青年。
「ほら。【フレイムアンガー】!」
神王が右手の手のひらをモンスターに向けて呪文を唱える。
そして、手首をくるっと回し、指を鳴らした。
すると…
「「「「「「PIGYAAAAAA!!」」」」」」
巨大な火柱が出現し、モンスターを包み込んだ。
それも100匹全てを包み込むほどの炎である。
その時、発生したエネルギーは光となり、騎士団員の目を眩ませ、視界を奪う。
しばらくして、騎士団員達が目を開けると…
「「「「「なっ!!!」」」」」
モンスターの影どころか周りの木々をも消滅しており、モンスターのいた場所はクレーターが出来ていた。
青年は振り返り…
「ミッション・コンプリートってことで♪」
これがこの世界における『神王』の始まりである。
思うんですけど後書きって皆さん読むんですかね?
私はよく携帯で読みますけど1回も見た記憶はありませんね。