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神は白いネコ!?

「レディ〜ス エ〜ンド ジェントルメェン!」


騒がしい闘技会場が一斉に静まり返る。

観客の全員がある場所に視線を集める。


「厚化粧のババアに賭け事で家庭崩壊寸前の腐れジジイ!血の流れる闘技場に小さな子どもを連れてきたマッドマザーにファンキーファザー!ようこそ!!金と血、名誉と快楽を求める闘技場へ!!」


そこには実況席で仁王立ちする1人の男。


「今、ここにいるのはゲームとは名ばかりの合法暴力が許された戦いに参加したクレイジーとそれを見るクレイジーのみ!!」


長い赤いマフラーを首に巻き、マフラーの端は風にたなびいている。


「選手が求めるは金!名誉!!そして血肉踊る戦い!!!」


白いスーツを身を纏うのは血のように赤毛の長髪の若い男性。


「俺たちが求めるのは興奮!恐怖!!そして、血肉踊る戦い!!!」


胸ポケットにバラの花を刺す、シルクハットをかぶるこの男を人はこう呼ぶ。


「今日は狂い、奇声を上げ、雄たけびを挙げろ!選手はバーサーカー!我らは残虐非道の狂人!共に、この闘技場を血のワインで満たそうではないか!!」

「「「「「うおおおおぉぉぉぉっっっ――――――!!!!!!」」」」」


【鬼人伯爵】。

幼き頃より、髪を血で染めていると言われるこの男は戦いを狂気的に愛する。

今回のような大会があると聞くと世界中を渡り歩く狂人。

この男が歴代のこの大会の司会を務めている。


「それでは第1回戦!!1回戦は20人のバトルロワイヤルというクレイジー!提案者の国王もたまには面白い事をやるじゃねえか!今回は解説としてお馴染みのマッドサイエンティストのレイがきたぞ!!」


伯爵がそういい終わったと同時に伯爵の隣で爆発が起きた。

その爆発の煙は黄色で煙が晴れると煙と同じ色の髪の女性がいた。

白衣を着た30代と思われる女性で両手はポケットに入れている。


「けほっ、ゲホッ。れ、レイ…。毎回言ってるがその煙で登場するのはやめろ!」

「あら?わかってないわね。科学者は何処からともなく現れると昔から決まってるのよ。」


レイはポケットからタバコを取り出し、火を点けるとしゃあしゃあと答え、タバコを吸う。


「知らねぇよ。ババアの時代の頃の決まりなん…ふぁちゃあああぁぁぁああっっ!!」


伯爵が言い終わる前にレイは伯爵の眉間にタバコを押し付けた。

伯爵はその熱さにテーブルのコップに入った水を額にぶっ掛ける。


「伯爵。女性にババアなんて言っちゃ駄目よ。そんなんだから恋人の一人や二人できないのよ。」


何事もなかったかのようにポケットから次のタバコに火を点けて、吸う。


「…てめえに言われたくねえよ。いい年こいて未だに独身で友達は皆結婚して自分だけ余った…――――――っっっ!!!!」


レイは伯爵の口の中に火のついたタバコをほおりこんだ。

もはや、叫び声を出ない。

伯爵はコップの水で鎮火しようとするがさっき使ってしまった。

そこで、レイのコップを奪い、水を口に含んだ。


「それ。お酒よ。」

「ふぁあああああぁぁあぁあぁあぁっぁっぁぁあっぁあぁ!!!!!」


―少々お待ちください―


「それでは、生け贄となる選手の入場だぁぁぁ!!!!」


会場の医療チームの回復魔法で火傷を治療した伯爵は大きく叫んだ。

ちなみに、リンの酒は仕事中ということで没収された。


「第1試合は…おおっと!今大会の有力株の【断罪】のオルガの登場だ!!」


選手入場口から現れたのは4メートルを越す巨人ともいえる男。

色黒の肌に裾がボロボロのズボンのみの格好で一発で木を切り倒せそうな斧を担いでいる。

柄の長さを合わせると男と同じぐらいの大きさである。

長いぼさぼさの黒髪に鉄の仮面をつけた姿は伝説のフランケンシュタインを想像させる。


「大会で見るたびに思うのだけど、……本当に人間?」


会場にいる多くの者がそう思っているだろう。

他国からきた観客は恐れおののいている。

逆に国内の観客はオルガに声援を送る。


「さて、ここで残念なお知らせだ。耳の穴をかっぽじってききやがれ、愚民共!!」

「何かあったの?」


タバコをふかしながらレイは聞く。

大会運営委員会から周ってきた通知書を見ながら、伯爵は声を高らかに叫んだ。


「第1試合に出る予定の20選手中18名は………棄権して逃げ出しやがったとよ!ざけんじゃねぇぇぇぇっーーーーー!!!!」


一斉に会場中にブーイングが鳴り響いた。

しかし、誰があんな化け物級の大きさの男に立ち向かえるのであろう。


「があああぁあっぁぁぁあぁ!!!次の試合行くぞ!!第2試合……。」

「ち、ちょっと!第1試合はどうするのよ?」

「相手がいねえだろうが!?」

「自分で18人が棄権って言ったんでしょう?2人残ってるのではなくて?」


伯爵は荒い息を治め、ゆっくりと通知書を見直した。


「…でもよ?誰があの化け物に勝てるって言うんだ?対戦者の名前、見たことないから初出場の奴だぞ?」

「やらないわけにもいかないでしょう?」


2人は小さな声で相談し始めた。

その相談は数分かかり、観客が訝しげた頃。


「第1試合をはじめるぜ!【断罪】のオルガに立ち向かうクレイジーを通り越して愚か者の選手だ。皆はそいつが死なないように祈りやがれ!!クロトス選手の入場だ!!!!!」


観客が選手入場口に目線をやると………固まった。

選手入場口より現れたのは……白いネコだった。

正確には白いネコのきぐるみだった。

会場中が静寂に包まれた中でネコは舞台まで歩き出した。

ピコッ♪

ネコが一歩足を出すと静寂の会場に確かに聞こえた。

ピコッ♪ピコッ♪

ネコが歩くたびに音が鳴る。

ピコッ♪ピコッ♪ピコッ♪

どうやら、足に音の鳴る仕掛けがしているらしい。

ピコッ♪ピコッ♪ピコッ♪ピコッ♪

両手を振りながら子どもの行進のように歩くネコは舞台に上がるためにせりあがっている舞台の階段に足をかけた。

ピコッ♪ピコッ♪ピコッ♪コテッ…

数段の階段を上りきった所で足を引っ掛けて転んだ。

しばらく動かないネコだったが突然に起き上がり、頭をプルプルっと振る。

そして、しっかりとした足つきでオルガから5メートルほど離れた場所で止まった。

会場中が復活してない中で静寂に包まれた舞台の大きな男の前でネコは片手を顔の横辺りまで上げて言った。


「にゃあ〜♪」


静寂。

そして、怒号。

ある者はその非常識さに怒りの叫び。

ある者はその可愛さに黄色い叫び。

ある者は理解できずに奇声の叫び。

叫びが交じり合い、すさまじい奇声のスコールが舞台に降り注ぐ。


「何たる!何たるクレイジー!!これはなんだ!大きな斧をもったネコが白くてかわいらしいオルガの前に立ちふさがった!!!?」

「いや、逆よ!」


もはや、まともな思考の持ち主なら混乱必須であろう。

混乱を極めた会場。

そこへ1つの怒号が響きわたる。


「静まりなさい!!!」


再び、静寂。

観客の視線は一点に集中した。

すなわち、エイン王妃のところへ。

王妃は椅子から立ち上がり、会場中を見渡す。


「大会規約には服装に制限はないわ。ルール違反はしてない。よって、このまま試合を続行します!」


そう言うと椅子に座り、ティニアに耳打ちする。


「あれって……『彼』よね?」

「………たぶん。」


ため息を吐くティニアの後ろではエルとリンがこそこそとささやき合う。


「お兄ちゃん、本当にあの格好で出るんだ。」

「…控え室であの格好でいた時は冗談かと思ったのに。」


お互いに冷や汗を掻く2人。

そんなことも知らずにクロトスはというと…


「にゃ〜♪」

「「「「「「「キャーーー!!!!」」」」」」」


次々と会場中の女性をとりこにしていた。

顔をふいたり、手(前足?)を振るなどで会場中にアピールし、女性だけではなく子どもも引き付けられた。

ネコ(クロトス)が手を振ると女性や子どもも手を振り返す。


「え〜と、ここでやっと大会運営委員会からの通達が届きやがったぞ!え〜、『かわいいから許可♪』…。」


通達書(ピンクの便箋)は丸文字でかわいらしく書かれていた。

伯爵はげんなりしてそれを投げ捨てる。

大会運営委員会役員は全員が40歳以上。

ちなみに、これを書いたのはトメさん(56歳)。

便箋の端にキスマークもあったとかなかったとか。


「やった♪」


伯爵の言葉を聞いたレイは小さくガッツポーズした。


「レイ。なんでお前が喜ぶ?」


レイは照れ隠しにタバコを吸い、空に向かって吐くと伯爵の方に作った無表情で言い放った。


「私はネコが好きなのよ。」

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