神の錯乱!?
就職が決まった。
車の免許も取った。
資格試験も終わった。
やっと一段落つきました。
最近更新していなかった分を取り戻そうと思います。
【セヴィオール武闘会闘技場関係者席】
この闘技場で1番警備が厳しい観客席。
それが王族及び関係者しか入ることの許されないVIP席。
そこには国王、王妃、ティニアがいる。
普段はラフな格好のティニアも今回は王族の格好で席に座っている。
この席はバルコニーになっており、観客席の中でも1番高い所にある。
武舞台全体を見渡せる良い席であり、警備にも抜かりはない。
バルコニーを包むように結界魔法が何十にも張られており、バルコニーの入り口には城の兵士が警備に立っている。
そこに2人のメイドが入る。
「失礼します。」
「…失礼します。」
「遅い!」
リン、エルはバルコニーに入る早々にティニアに怒鳴られた。
ティニアはいささか不機嫌そうだった。
王様と王妃の前であるためににこやかに対応するが心の中ではその理不尽さに怒りを感じている2人。
「選手控え室からここまでどのくらいかかると思っているのですか?」
「…これでも急ぎました。」
ちなみにこのバルコニーと選手控え室は武舞台を挟んだ反対側にある。
会場を1周分の距離を急いできた2人の額には汗がにじんでいた。
「それで?クロトスの様子は?」
ティニアは2人の言い分など聞かずに尋ねた。
本当は自分が控え室にいるクロトスに会いに行きたかったのだが王女の自分が1人の選手を贔屓にするわけにもいかない。
もし、王女が控え室にいったら大騒ぎになってしまうだろう。
そこでリンとエルに様子を見に行ってもらったのだ。
「お兄ちゃんは…そのぅ…遊んでいました。」
エルはなんとも言いずらそうに答える。
「遊ぶ?」
控え室で他の選手とポーカーでもしているのかと考えたティニア。
「…周りの選手を挑発して遊んでいました。」
その予想をリンが打ち壊す。
「あいつは何をやってるのよ!?」
今大会の参加者人数は196名。
予選はA〜Jブロック分けられ、1ブロック20人に1つの控え室を与えている。
予選はバトルロワイヤルで舞台上でそのブロックの20人が一斉に戦うのだ。
無茶な戦いだがこの予選方法を決めた国王によると…
『その方が面白そうだし、早く終わるだろう。俺はティニアの大会での衣装の打ち合わせがあるからこの話は終わりだ!』
…だそうだ。
つまり、クロトスは控え室のブロック内の選手全員を挑発している。
必然的に試合ではクロトスは集中攻撃を受けるだろう。
そのことを考えるとティニアは頭を抱えた。
リン、エルも苦笑いであった。
「どうしてあのバカはそんなことをしているの!?」
普通はわざわざ自分の不利な状況を作るバカもいないだろう。
「ハンデだそうです。」
エルは苦笑いで答えるしかなかった。
エル自身も最初に聞いた時は耳を疑った。
「…『普通に戦ったら面白くないだろう?こんなチンピラくずれに負けるわけないし、弱い者イジメも好きじゃない。一斉にかかってきたら100兆分の1の確立でかすり傷ぐらいはこいつらでも傷つけられるかもしれないがな。一応、手は抜くが…助かったよ。女がいたら戦いづらいけど可哀想な顔の男しかいないから少しぐらい歪んでも人生に影響なさそうだから安心した。』って大声で言ってました。それを聞いた控え選手達が睨みつけていました。」
リンはクロトスの声を真似て1字1句正確に伝えた。
それを聞いたエルとティニアは…
「リンちゃん。お兄ちゃんの声マネ、うま〜い♪」
「………。」
ティニアは本当に頭痛がしてきた。
そういえば出会ったときもチンピラを挑発していた。
しかし、その時は3人だったが今度は20人だ。
ティニアは心の中でこっそりと神にクロトスの安全を祈っていた。
その神がこれから大会に参加するとも知らずに…