神は旅立つ。
目標100話突破!!
どのくらいかかるかわかりませんががんばります。
とある世界のとある可能性のお話。
数多にある世界のほんの一欠けら。
その一欠けらのほんの一部の世界での出来事。
―神界【アウェンティヌス城 執務室】―
「ウリエル様!神王様がまたいなくなりました!!」
「あの方は…ご自分の立場というものをご理解しておられるのか!?」
【アウェンティヌス城】
数多の世界にある宗教にも出てくる神々が暮らす天界とよばれる世界。
その神の一つ一つが強大な力を持ちながらもそれを治める神々の王の神王が住む城。
純白の城壁に数多の世界から集められた建築材料にしては神秘的な輝くを放つような装飾がされた壮大な城。
その城の執務室で嘆く、この世界の天使と呼ばれる種族の中でもその力の強大さと美しさで四大天使の一人と言われるウリエルは天使の中でも2大女天使とも言われる一人。
深い漆黒のような黒い長い髪と突き刺すような細く、鋭い目を持ち、そのスタイルは女性の理想型と称えられるほどの美貌の持ち主でもある。
三対六枚の純白の翼を持ち、女性としても天使としてもその美しさは天界1とも言われる。
彼女はこの世界でもっとも強大かつ、偉大と言われる神王の秘書であり、お目付け、教育係で幼馴染でもある。
多くの者が神を全知全能と考えているがウリエルから言わせればそのようなことは決してない。
実際、神の身体能力は人間以上だがそれ以外はあまり変わらない。
人間との違いは神特有の力があることのみである。
天使は翼があるだけで一部を除いてそのような特殊な力はない。
全知全能に相応しい神は天界を統治する神王のみだとウリエルは思っている。
…これで性格も少しはマシになればウリエルも苦労しないのだが。
全知全能と言われる神王もウリエルから言わせればやんちゃでめんどくさがりな幼馴染である。
自分の目の前で息を切らしながらも神王を逃がした失態で冷や汗を掻く自分の部下をギロッと睨みつける。
「警備は何をしているの!神王の執務室の出入り口には私と貴方達で魔法で封印して、見張りもつけたでしょう!?」
そう。確かに入り口と窓には封印の魔法をかけた。
数人がかりの封印結界は神王といえども苦戦する強度のはずである。
見張りも屈強な者を2人つけたはずである。
「ウリエル様が執務室から離れた後、神王様があっさりと封印を解き、幻術で幻を見せた見張りの顔に落書きをしていった後に逃げ出したようです」
どうも、数人がかりでも時間稼ぎにもならなかったようだ。
執務中であったウリエルは思わず、自分の机に頭を打ち付けてしまい、重要な書類が辺りに散らばったがウリエルは目線もくれずに叫んだ。
「なんで脱走の技術ばかりうまくなるの!他の勉強はサボるくせに!!」
「神王様ですから」
あっさり言う自分の部下を腹いせに魔法で黒焦げにした。
しかし、部下の言うことももっともで神王絡みのトラブルの大半の事はそれで済んでしまう。
脱走など大人しいほうだ。
「あ〜、もうっ!どこいったかわからないの?」
黒焦げにされた部下は何事もなかったかのように懐からなぜか燃えていない真っ白な封筒を取り出す。
しかし、その手紙を扱う様子は黒焦げながらもまるで爆弾でも扱っているかのような慎重さである。
「神王様の執務室に封筒がありました」
それを聞いたウリエルの顔は一瞬で青ざめた。
しかも、嫌な汗が体中から滲みだしてきた。
「……じ、じゃあ、貴方が…」
震えるような声で絞り出すように言うウリエルの言葉を部下は遮るように、ウリエルにとっては死刑宣告をされたかのようにズバッと言い放つ。
「【ウリエル様宛】なのでウリエル様がお読みください」
特に【ウリエル様宛】という言葉を噛み締めるかのように強調して言った。
「…どうしても?」
上目使いの目線で言うウリエル。
男であれば誰もが魅了されたであろう。
部下が女性でなければ…。
「神王様の指定です」
「…わかったわよ」
そう言って恐る恐る受け取ると部下は逃げるように部屋から逃げ出した。
しかも、足音が複数ということは聞き耳を立てていたものがいたようだ。
しかし、ウリエルは手の中の危険物体で頭がいっぱいでそれどころではなかった。
(今度はなにかしら?前は開けたとたんに封筒の中でカエルが召喚されて、封筒からカエルの群れが飛び出してきて、執務室をカエルだらけにしたし…)」
恐る恐る開封するとなにも起きなかった。
安心して中の手紙を開くと次のように書かれていた。
『我が親愛なるウリエルへ
いい加減に仕事に飽きたからどっかの異世界に数年間ぐらい遊びに行ってくる。
俺のやる予定だった書類は全部残しておいたから全部お前のやる。
100年分ぐらいはあるからそれが終わるまで俺を探すな。
ってか、無理して探さなくてもいいぞ。
その間にどっかの異世界の英雄にでもなって豪遊してくるんでよろしく♪
PS. なお、この手紙は読み終わった5秒後に爆発するように魔法をかけた。
ちゃんとお前の頭がアフロヘアーになりようにサービスしておいたぞ。(^_-)-☆
貴方の神ちゃんより』
………
……
…
「あの馬鹿〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
執務室は光に包まれた。
その頃、神王はというと…
「現段階において、オーディン様の43杯!神王様が51杯目!!」
とある酒場にて飲み比べをしていた。
城とは裏腹に何処か寂れたごく普通の酒場。
だがこの店の客は酒とこの店の雰囲気に酔いしれるのが好きなものばかりであった。
その酒場の一か所でテーブルを囲む多くの神々。
姿形は様々だが気楽で陽気な姿は他の種族と何ら変わることのない。
「オーディン様ぁ〜!今月の酒代賭けてんだ!頼むから勝ってくれ〜!」
そう言って声援と嘆きの声を送るのは褐色の肌が見えるような薄着の顔が犬のような者。
名をインプゥ。
またの名をエジプト神話に出てくる冥界の神、アヌビス。
「やっぱり、いくらオーディン様でも神王様には勝てなかったな。これでお前は今月禁酒だな」
「くそぉ〜〜〜〜!!」
アヌビスを笑う紅い鎖で装飾された黒いローブを着た灰色の翼を背に宿した少年。
アヌビスと同じくその身の死を宿したアヌビスの友、名をタナトス。
その存在は死そのものともいえるギリシア神話の死を神格化された神。
「さあ、勝負もいよいよ佳境へと入りました!解説のロキさん。現在の状況をどう思いますか?」
「キャハハハハ♪オーちゃんが神ちゃんに勝てるわけないでしょ!オーちゃんも年なんだから諦めたら?」
日本神話の神なのだがなぜかセーラー服を着た若い女の子にしか見えない天照大神と北欧神話の悪戯好きな神でオーディンの義兄弟のロキ。
「な、何を言う…。わしゃあ…まだま…だ現役…じゃわ…ぃ」
と言いつつも口を押さえるのは片目が無く、長い白髭の老人。
つばの広い帽子を被り、古臭いが何処か神々しい杖を持っている。
彼こそが北欧神話の神であり、知神とも言われるオーディンである。
もっとも今はただの飲みすぎた、ただの爺さんではあるが。
「爺さんもいい加減に降参したら?ポックリと逝っちゃうよ」
そのオーディンに情けの声をかける青年。
もしくはもっと若いかもしれない。
「まだまだ…」
「無理したら孫のフレイヤちゃんが悲しむよ。」
「なんじゃとぉ!!」
目を見開くオーディンに黒い笑みを浮かべる青年。
「あ〜あ、フレイヤちゃんが枕を涙で濡らす光景が目に浮かぶな〜」
「くぅ〜〜〜〜!!」
ちなみにフレイヤも北欧神話の女神の一人でオーディンの孫。
そのフレイヤをオーディンは目に入れてもかわいいというぐらい溺愛している。
ぶっちゃけ、親馬鹿ならぬ爺馬鹿である。
「どうすんのかな?」
「降参じゃ…。」
「決まった〜〜〜!!ただいまを持ちまして『第503回 どちらが牛乳に恋してるのか?愛があればできるはず!牛乳早飲み競争』のチャンプは我らが神王様!!」
「「「「「「「「「「ウヲオォォォォォーーーー!!!!」」」」」」」」」」
そう、オーディンと勝負していた青年こそが神王。
短い空のように蒼色の髪を逆立てて、赤いバンダナを頭に巻き、白いズボンと緑の服を着ていて、その上から動きやすい金属の胸当てを付けた何処にでもいそうな普通の青年。
今や多くの周りの神々にもみくちゃにされ、しまいには胴上げされたこの青年こそが…
「爺さん、約束は守ってもらうぞ」
その多彩な才能から全知全能と多くの者から称えられ…
「しかたないのぅ…」
多くの神々より強大な力を持っていることから歴代最強と噂され…
「今度、ウリエルの生写真やるからさ」
強大な神々を統括するだけでなく、魔界や地獄界の者たちからも一目置かれる最高神。
「約束だぞ!!」
それがこの青年…
「ああ!(このエロ爺、扱いやすくて助かる)」
【神王】である。
………
……
…
世界を体現する【ユグドラシル】。
世界樹という木という説が主流だが実際は違う。
確かにユグドラシルはオーディンが管理している。
神は世界の管理が仕事である。
繁栄すればそれが悪しき方向に向かないように、滅びようとすればそれを防ぐ、時には良くも悪くも大きな神の試練ともいえる大きな運命を動かすといった調整が神の仕事と言える。
では、神々は世界をどのように管理しているのか。
実は神々の多くはポケットに世界を入れている。
それだけ聞けば神のポケットはどれだけでかいのかと勘違いするだろう。
大きさ、色は1つ1つ違うが見ためはビー玉と同じなのである。
何代か前の神王が考案したシステムでビー玉と同じ大きさなので持ち運びにも便利で世界に干渉するのが楽になったらしい。
この玉を【宝玉】といい、神によってはファションとして首飾りなどにしている者もいる。
オーディンはこの宝玉を売っている店【ユグドラシル商店】の店主なのだ。
「あれは高かったんじゃぞ。それをただでやるなんてもったいない」
「勝負に負けたんだからごちゃごちゃ言うなって。後でウリエルの着替え写真もやるからさ」
「こっちじゃ、神王様!」
「ああ(エロジジイ…)」
2人はユグドラシル商店の地下の倉庫をさらに降りた地下保管金庫へと向かっていた。
先ほどの牛乳早飲み勝負、その内容とは…
『神王が勝ったら激レア宝玉を、オーディンが勝ったらウリエルの入浴写真を敗者から貰う』
という最低のものであったのである。
それに神王が勝ち、こうして宝玉の中でもオーディンのとっておきの品を頂きにきたのだ。
薄暗い階段を降り、地下水が染み出しているのか水の滴る音が時折聞こえる少し肌寒い通路を通って、地下保管金庫に降り立った2人。
そこはただの多くの本棚がある普通の倉庫のように見えた。
しかし、本棚には様々な色と大きさの宝玉とその一つ一つに分厚いファイルが横に保管してあった。
多分、あのファイル一つ一つにその世界の出来事が記録されているのであろう。
神王はその時は知らなかったがそのファイルの名をアカシックレコードと呼ばれる。
オーディンは倉庫の奥から直径8センチほどの蒼い玉をもってきた。
透き通るような静かな色であった。
確かに美しさに関して言うなら上等な品であろう。
「きれいなことはきれいだけどよ。大騒ぎするほどの物でもないと思うが?」
オーディンから渡された宝玉を色々な角度から見てみるがこれといって変わったところはない。
「わかっておらんのう。この光沢、肌触り、色もいいがこの宝玉は人を選ぶのじゃ」
その言葉に怪訝そうにオーディンに顔を向ける。
「宝玉が管理者を選ぶなんて聞いたことがないぞ」
「あたりまえじゃ。わしだって聞いたことないぐらいじゃ。他の者が知っとるわけないじゃろ」
まるでお手上げのようにしわくちゃな両手を広げる。
「宝玉が選ぶって宝玉に意思があるのか?」
「あるわけないじゃろ。宝玉自体はただのケース、器じゃ」
そう言って神王が持つ宝玉をコンコンっと叩く。
「ということは…中の異世界にいる【なにか】が原因か?」
真剣な神王の眼差しに自然とオーディンもその表情を引き締まる。
「もしくはその世界の……。まあ、専門家のわしと神王様がわからんのじゃ。誰に聞いてもわからんのじゃろ」
その結論に2人はあまり納得はいかなかったが仕方ないことである。
「まぁ、わかった。んで、俺は行けるのか、この異世界の中に?」
「この世界の管理者になれば可能じゃが…。」
宝玉の中の世界に対して神が出来ること。
それは【千里眼】【干渉】【降臨】である。
宝玉の中の世界を監視する【千里眼】。
世界を監視し、イレギュラーが発生すれば世界の運命を操作する【干渉】。
干渉は世界に関する全ての事柄を自由に改変できる。
そして、異世界の中に入る【降臨】。
しかし、これでは独裁と変わりない。
世界を自由に作り上げ、理想郷で豪遊する神も昔はいた。
それを取り締まるのがアウェンティヌス城の警備隊の仕事でもある。
神王がやろうとしていることはその中の降臨。
降臨は宝玉の所有者である管理者の意思で行くことができる。
つまり、この宝玉の中の世界は管理者がいないため降臨できない。
「じゃあ、俺がなる!」
はっきりと宣言する神王にオーディンはやれやれと肩を落とす。
「仕事はどうするんじゃ?ウリエルが怒るぞ」
というかすでに手遅れではあるがこの時はオーディンも知らなかった。
オーディンの言葉にムンッと胸を張り、堂々と言い放つ。
「俺は神王だ!俺が法律!俺が良いならALL O.K.♪」
何処かの独裁者のようなセリフを言う何度も言うが神々を統べる神王なのである。
「まあ、いつものことじゃがな…」
常に神王の傍にいるウリエルに同情し、哀れみをこめた長いため息をはくオーディン。
この神王のトラブル事を起こす回数は神界1である。
やんちゃで好奇心旺盛。
イタズラ、目立つことが大好きで1日3叫だとウリエルが言う。
つまり、1日3回は神王のせいでウリエルが絶叫することらしい。
ちなみに、最低回数である。
多いときは2桁の絶叫が城に響き渡る。
ちなみに、どのようなことを過去にしたかというと…
【三途の川の船頭に幻術をかけ、水恐怖症にして死者の橋渡しをできなくする。】
【魔界の王女に1目ぼれされ、300本の食人薔薇を城宛にプレゼントされた。負傷者258名。】
【ユグドラシルの宝玉を異世界のびーだま?という玩具に変えて神界を混乱】
今回の件でウリエルは絶叫するだろう。
いや、もうしたかもしれない。
というかした気がする。
「契約方法は他の宝玉と同じか?」
「あ、ああ。呪文を唱えるんじゃが…。」
それを聞いた神王は軽く咳払いをする。
そして、両手で宝玉を持ち、構える。
「え〜と、【我、ここに契約す。我はここに楔を打ち込み、創世を誓う者なり。元は世界。素は我。素は元になり、元は素へ返る。この普遍を誓う創世の主とならん。】」
………
……
…
「………」
「………」
部屋に静寂が訪れる。
「何にも起きんな」
「………」
オーディンが残念そうに呟くが神王はピクリとも動かない。
「神王様でも無理なら他の者にも無理だろうじゃな…」
「………」
その時、オーディンは神王の様子がおかしい事に気づいた。
「…神王様?」
「………」
神王はオーディンの言葉に反応せずにただ宝玉を見つめる。
「………?」
「………来る」
「はっ?」
何を言い出したのかと思い、オディーンが近づくと彼もその異変に気づいた。
宝玉が脈動しているのだ。
ドクン、ドクンっとまるで心臓のように。
初めは小さかった脈動も少しずつ大きくなる。
次第に淡い黄色の光の筋が宝玉に現れる。
ありえないことだが宝玉が生きてるみたいであった。
心臓の如く脈動を続ける宝玉を見ると生命が誕生する瞬間を連想させる。
次第に脈動と光は大きくなり、2人を包む。
オーディンはそのまぶしさで目を隠し、光が止み、目を開けて辺りを見回すと神王の姿が消えていた。
宝玉の輝きと共に…。
この話は就職活動中に書いているものです。
自分自身に対してあえて言おう!
『さっさと就職場所決めやがれ!』
『決めれるものなら決めてる!』
就職先が決まるのはいつになることやら(泣)