表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想いを音に乗せて  作者: 神崎寧々
3/9

3.偶然の産物

「あ。」



お気に入りの雑貨屋に入った時だった。

たまたま顔を上げると見たことのある顔がいた。


覚えられているのか微妙だった。だって、一瞬の出来事だったから。

むしろ、覚えられていてもきまづい。


無視しよう。



そう心の中で決めた彼女はゆっくり踵を返す。

本当は彼の前にあった物に用があったのだが、いた仕方ない。彼がその場をどくまで時間を潰そうと近くにあった小物を眺める。


どれくらいの時間がたっただろう。

何度かチラッと目的のほうへ目線をやったのだが、彼は全く動く気配はなかった。

見すぎると相手に気づかれる可能性があったので、ちらりとしか見てない。だから何を見ていたのかわからなかった。


だから、彼が何かをとってその場を離れるとフローラは慌ててその場へ行く。



「あれ…な、ない!!」



目当ての物があったはずの場所には何もなく、丁度その場所だけ変にスペースが空いている。




「こちらでよろしいでしょうか?」



店員さんの声に思わず振り返ると、そこにはあの男と狙っていた物があった。

まさかの事態に思わず体が硬直する。そして我に返った時には既に会計が終わっていた。



「う…うそだ……」



思わず口から漏れた言葉が彼の耳に入ったのか、商品を受け取って帰ろうとした足を止め視線がこちらを向く。



「あ、あの時の。」



どうやら覚えていたらしい。少し驚いた様な表情を見せた彼にフローラは思わず足を進め、その商品の袋ごと彼の手を包み込み嘆願した。



「お願いします!これ、譲ってください!!」


「は?」



突然のフローラの言葉に彼は眉根を寄せた。

でもここで引くわけにはいかない。それは譲れない。



「お願いします!これ、私に譲ってください!!」



もう一度叫ぶ。が、彼はパッと彼女の手を払うと蔑む様に彼女を見下す。



「無理。」




それだけを言い残し、颯爽と店を出て行く。

思わずあの顔に似合わない表情を向けられ、一瞬思考が固まってしまったが、すぐ我に返ると慌ててその背中を追いかけた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ