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1.何気ない朝
とある、フランスの田舎町。
金色の髪を靡かせながら、少女が鼻歌交じりに道を歩いていた。
光に透けるとキラキラ輝く髪に、深い青の瞳。
整った顔立ちは、まだ18の彼女とは似つかわしく大人びて見える。
「フローラ、またその歌うたってるの?」
母が彼女の鼻歌を聞き嘆息交じりに言うと、なんとも思ってないようで、最高の笑顔で答えた。
「だって、すきなんだもの!」
彼女が歌う歌は1つだけ。
小さな頃、誰か忘れたけれど教えてもらった簡単なメロディ。
「あらそう。」
もう、この会話は何回も行われているのだろう。適当な母親の返事が返ってくると同時に小さな紙と袋を渡される。
「はい。おつかい、いって来て。」
「えー…」
思わず顔をしかめる彼女に母親は満面の笑みで彼女の背を押して外へと追い出す。
「文句言わないのー、はい!行ってらっしゃい!!」
最後にドンっと強く押されニ、三歩前へ出ると背中の方でドアが締まる音がした。
「え、嘘でしょ!?もー、強引なんだからー!!」
大きく息を吐き出すと、開き直ったのかフローラは家に背を向け、町の方へと歩き出した。