Prologue
これまた10年以上前の作品の移植になります。
加筆修正はしていきますが、読み辛い点あるかもしれません。
ご連絡いただければ幸いです。
鍵。
それは閉ざされた扉を開くものであり、隠された財宝を奪うもの。
それは何かを守るためにあり、何かを裏切るためにある。
鍵。
少しばかり夢見な者の言葉では、それは隠蔽された世界をこじ開ける最速の法。
不可視にされた、もうひとつの時間を暴くもの。
鍵。
詩歌いの調べによれば、それは網目のように分かれ並び流れる歴史と物語の源流。
滅びと再生を繰り返し、絶えず変化を続け漸進する世界の理。
その伝説は未完のまま、世界に埋もれていた。
「始まりの鍵」「終焉の棺」
どこかに存在するのだと語られる、世界の起点と終点。
それが歴史から消えて幾百年。
伝説は子ども達の子守り歌となり、おとぎ話となり、空想の物語となった。
始まりの鍵を持ち、終焉の棺を開けた者はね──……。
だが、誰も伝説の最後を知らない。
誰もその物語を閉じることはできない。
昔話めいた言葉は、石に刻まれることもなく、紙に遺されることもなく、まるで秘密の呪文のように音だけを足跡にして時代を渡る。
「何を望む。何を知る。何を紡ぐ。何を――」
鍵に記されているのは四つの言葉。
しかし最後の問いは誰も知らない。
そう。だからこそ伝説は未完なのだ。
しかし再び鍵は現われた。
再び、歴史の表へと。
過去の伝説は鍵を巡り、色鮮やかに甦る。
過去の憎悪は鍵を巡り、世界に甦る。
そして未来を創り、未来へ向かう。
校正時BGM 梶浦由記「Key of the Twilight」