かーみ様100数年後の技術に驚く
本宮楓に連れられ、かーみ様は本宮亭の玄関先に立つと、ぐるりと家全体を見回した。
かーみ様「へぇ……」
感心したように、素直な声が漏れる。
かーみ様「和の作りが基礎だけど、所々が洋風だね。
畳と床が自然に繋がってるし、障子もあるのにガラス戸もある。
和洋折衷、ってやつ?」
楓は少し驚いた顔で頷いた。
楓「よく分かりますね」
かーみ様「だって、私が知ってる家は、ここまで混ざってなかったもの。
でも嫌いじゃないな。住みやすそう」
そう言って、かーみは楽しそうに廊下を進んでいく。
居間に入った瞬間――
かーみ様の足が、ぴたりと止まった。
かーみ様「……なに、これ」
視線の先にあるのは、大きなテレビと、その横に置かれたパソコン。
かーみ様「鏡……じゃないよね?
板? 箱? え、これ動くの?」
恐る恐る近づき、画面を覗き込む。
楓がリモコンでテレビの電源を入れた瞬間、
画面が光り、音が流れ出す。
かーみ様「――っ!?」
かーみ様は一歩後ずさり、目を丸くした。
かーみ様「な、なに今の!?
中に人が入ってる!? 絵が動いてる!!」
楓「入ってません。電気と映像です」
「でんき……?」
理解が追いつかない様子で、かーみ様は頭を抱える。
かーみ様「明治より先、変わりすぎない?……
そもそも、文面栄え過ぎてない?」
その後も、パソコンの画面が切り替わるたび、
マウスが動くたび、いちいち驚きの声を上げるかーみを見て、
楓は思わず苦笑してしまった。
けれど――
夕食の準備をし、食卓に和食が並ぶと、
かーみ様はほっとしたように表情を緩めた。
かーみ様「……あ、これは分かる」
味噌汁の湯気を吸い込み、安心したように頷く。
かーみ様「うん。和食はあんまり変わってないね。
良かった……これまで全部知らない世界だったらどうしようかと思った」
楓「そこは、安心してください」
楓はそう言って、箸を取る。
本当は、この家で一人で過ごすつもりだった。
静かで、人と関わらない生活を選んだはずだった。
それなのに。
向かいの席で、初めて見る家電に一々驚き、
味噌汁に安堵する土地神の姿を見ていると――
「……不思議ですね」
ぽつりと、楓は心の中で呟いた。
ひとりのはずなのに。
誰かが“いる”だけで。
なぜか、少しだけ――
胸の奥が、あたたかい。
おまけ
かーみ様「あっ、お酒はあっても出さないでね。
私、飲めないんだ」
楓「宗教的な理由というか……
やはり現世のお酒は駄目、とかそんな感じですか?」
かーみ様「ううん。普通に下戸だから」
あっさりと言い切る。
かーみ様「これはね、大人の身体になっても変わらなかったんだ。
多分、本気で体質的にダメなんだと思う」
楓「……シンプルだった!!」




