第二十六話 『タロウの二次試験』
二次試験当日。その日はひときわ寒く感じられた。
タロウは北関東医科大学の校門の前で一度立ち止まった。
5回目。
現役の時を含めて5回、この門の前に立った。
――今年こそ通せよ。
弱気な自分に負けない様に、心の中で悪態をつく。
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北関東医科大学の二次試験の試験科目は
数学、化学・生物、英語、面接を含む適性試験の4つだ。
タロウはこの日何故かすっかり落ち着いていた。
共通テストで「もう落ちた」「5浪確定」と結果を受け止めてしまったため
この2次試験はボーナスステージのような気持ちだったのかもしれない。
いつもは周りを見る余裕もなく、心臓バクバクでくぐっていた門。
――こんな形だったっけ。
5年目にして初めて校舎の全体を見渡した気がした。
頭の中はひどくクリアで
タロウは冷静に問題を解くことができた。
そして最後の教科・英語。
北関東医科大学の英語の定番かつ山場は英作文だ。
問題用紙が配られると、タロウはまず真っ先に英作文の問題を確認した。
テーマ:「困難を乗り越えた経験について述べよ」
――出た。大学入試の大好物テーマ。
タロウは自分の中で使えるカードを思い起こす。
・4浪カード
――……重い。
・彼女が生まれてから一度もできていないこと
――乗り越えられていない。
悩んだ末、タロウは数秒止まり、ある一つの出来事を思い起こした。
その出来事を書こうとしたが、少し書き始めたところで手が止まる。
――お前今まで散々ふざけてたくせに、急に真面目ぶるなよな。
少し悩んで、タロウは書き始めていた数単語を消しゴムで消し、
題材を変えて書き始める。
≪タロウの題材:4浪を乗り越えた経験について≫
全ての行を埋めて、見直すとちょうど終わりの鐘がなり、
回答用紙が回収される。
手元から離れた瞬間、
共通テスト後の俊の言葉を思い出す。
――タロウさんの短所は、ごまかすところですよ……。
タロウは鉛筆をぎゅっと握った。
今日はこのまま、面接だ。




