いざ海の向こうの国へ
いつのまにか眠っていたようで、扉の開く音で目を覚ました。
ギィ‥と遠慮がちにゆっくり甲板へ続く扉が開いた。
甲板に続く扉を開けたのはさくらの背中で、思わず膝掛けを手に後を追いかけた。
甲板に出たさくらは、手すりに頭を乗せて地平線の方をぼんやりと見つめていた。
もう朝を迎えていて、海から太陽が顔を出していた。
「おはよう、眠れなかった?」
「‥起こしたか、ごめん」
さくらに膝掛けを掛けようとすると首を振って拒まれた。
「寒いから。もっとこっちに来てよ」
「いや‥私は大丈夫。レイはまだ眠った方がいい。着くのはまだ先だ」
「寝不足には慣れてるからさ」
俺が笑うと、さくらは黙って俺のそばに来た。
膝掛けを肩に掛けたら今度はありがとう、と言った。
船はまっすぐ地平線に向かって進んでいた。あと数時間もすれば、あそこに陸地が現れるだろう。
「そんなに帰りたくない?」
さくらは黙って数回頷く。
「4人に不快な思いをさせてしまうのが怖い‥皆が私をどう思うか‥」
「俺たちは大丈夫、絶対大丈夫だよ。」
いつもより小さく感じる背中を撫でた。
ふとさくらの顔を触ると海風で冷たくなっていた。
頬を手のひらで包むと、温かいな、と笑った。
思わず屈んでキスをすると遠慮がちに受け入れてくれた。
「‥さくらには俺がついてるよ。寒いから中に戻ってもう少し休もう?」
「そうだな‥気弱になっていては叔父に太刀打ちできないな‥ありがとう、レイ。」
その瞳はさっきまでより強く輝いていた。安心して頷くと元の部屋に戻った。
中に戻るとまだ皆寝ているようだった。それぞれソファで眠っている。
個室も用意されてるのに、全員遊んだまま眠っていたようだ。
さくらは個室の方に向かっていって、おやすみと言った。
数時間後また目を覚ますと、ハルたちがトランプをしていた。
「おはようレイ!いま10:00くらいだよ。お腹すいてるでしょ」
「‥うん、おはよう‥」
国を出てから8時間程度経っていた。後4時間でさくらの国に着いてしまう。
さくらも起きてきて、皆に挨拶をした。
フルーツやサラダ、パンを食べて皆でカードゲームをした。
チラチラと時計を見て、さくらはため息を吐く。
「‥そろそろ支度をしないとな。」
「そうだね、着替えよう」
1時間前になって、嫌そうな顔をしたさくらは一人個室の部屋に向かった。
俺たちもそれぞれ持ってきたシャツやジャケットを羽織る。堅苦しい服は嫌いだが、これは一種の武装だった。
櫻子の色を纏うことは、あの国では禁忌になる。本来なら真っ赤のジャケットで行きたいくらいだったが、大人しく黒の服にした。
手首についた腕輪の赤を中に仕舞う。
余計なことでさくらの足を引っ張らないように。
ガジャン!
その時、身支度をしたさくらが個室から出て来た。そちらを見たハルが手に持っていたグラスを床に落として壊していた。
さくらの服装は普段着ているワンピースや制服、ドレスとは全く違った。
「‥軍服?」
「‥私は姫扱いされてないって言ったはずだ。あの国で私はこの服しか許されない」
さくらは上から下まで真っ黒の軍服姿だった。
胸元には幾つかの黒い勲章が輝き、赤い髪は高い位置で束ねられ背中で揺れている。手には白の手袋、靴も革靴だった。
当たり前のように着こなしたさくらは、俺に手を差し出した。
俺は婚約者としてエスコートしなければならないのを思い出して、慌てて手を引いてソファに座る。
「さあ、我が父に会いに行こう‥戦争を吹っかけて娘を呼びつけた父親の顔を見なければな」
さくらの言葉を聞いてハルがこちらを見た。
「そういえば言ってなかった。さくらの婚約者が気に入らなかったら俺たちの王国に総攻撃するって宣言したんだってさ‥」
ぎこちなく微笑んだら、ハルたちは血の気が引いた顔をしている。
これはもう俺たちだけの話ではなく、国と国との外交問題にまでなっていた。
この国の軍事力を俺は知らないが、外れ値のさくらがいる以上安心は出来ない。
着船の汽笛が鳴る。それは戦争の始まりの音のようで鳥肌が立った。
さくらの手を引き、先頭で船を降りた。
俺たちを待ち構えていたのは人ではなく、馬車と馬だけだった。
「さくら、馬車は‥」
「早く乗ろう」
俺の手を借りてさくらは乗り込んだ。
4人乗りの馬車に5人で乗ったが、中はかなり広く問題なかった。
「よろしくお願いします。出してください」
さくらは行者に微笑んで、薄いカーテンを閉めた。
馬車が走り出すと、だんだん辛そうな顔になっていく。さくらは馬車に乗るのが苦手な事はここにいる誰もが知っていた。
「櫻子さん‥」
「‥大丈夫だから‥」
ガクガク震える体を止めようと目を閉じている。
「私‥訓練から逃げたくて、一度馬車に隠れて家から逃げ出したことがあるんだ。」
さくらは小さな声で話し出した。
「叔父に見つかった時‥屋根裏から吊るされて殴られて口を塞がれて封言も使えなくて‥‥それ以来馬車に乗るとこうなる‥」
俺が想像しているような関係じゃない、そう言ったさくらが思い出される。
何か怖がる理由があるとは思っていたけど、まさか罰のせいでトラウマになっていたなんて思わなかった。
「馬車じゃなくて、転移や馬だけ用意してくれたらいいのに‥」
「‥叔父たちは、私がこうなるのは、もちろんわかってるよ‥」
シオンは絶句した。
これすら、さくらの気力を減らすためにやっているのか。
「今ここで話したのは‥皆がこれから先、私がどんな扱いをされても大事にしないで欲しくて‥慣れて欲しいんだ」
それは約束出来なかった。
ハルは今にも国ごと燃やし尽くしそうだし、シオンとリアも怒りを感じているだろう
しばらくして馬車が止まった。さくらはしばらく息を整えて、よし降りよう。と言った。
馬車が止まったのは大きな神殿の前だった。
神殿だと思ったのは大きな女性の石像があるからだが、それはさくらに似ている気がした
「あれはこの国を作ったとされる王の石像だよ。この国は女でも国を継げるからな」
「‥そうなんだ」
さくらは前を歩いてそれに続いた。
大きな石の扉の前に立つ。
門番の男がひどい顔をしてさくらを見た。
「おい、余計なことをするなよ化け物」
門番の態度に腹が立って口を開こうとしたがさくらの手で止められる。
「私は大丈夫」
俺たちは黙るしかなかった。
ハルは泣きそうな顔をしていた。
「有栖川櫻 ここへ」
声がして扉が開いた。
扉の向こうには道の左右に人が居て、正面に段があり椅子に座る男性と女性がいた。
真ん中の道をさくらは歩いていく。
俺たちも続いた。
さくらが歩き出すと王の前だと言うのに囁きが聞こえる
「‥まだ生きていたのか」
「赤の化け物‥」
「王国で男を誑かすとは汚らわしい‥」
「なぜ王はわざわざ呼び出したのだ‥」
耳にするのも辛い。事前に言われていなければ叫びそうだった。
その中をさくらは平然と歩き、王と王妃の前に跪いた。俺たちも続いて床に片膝をつけた。
「輝ける王にご挨拶いたします。有栖川櫻でございます。」
周りは静かになった。
「久しいな櫻、髪は赤に戻したのか」
「‥ご不快のようなら染めましょう」
さくらが手を挙げると赤い髪は毛先からゆっくり黒になった。それを見てまた周りが騒ぐ。
王は手を挙げてその声を制し、さくらに声をかけた。
「此度は婚約者を伴っての帰国難儀であったな。突然なのだが、余は、お前を姫の立場に戻そうと思っているのだ。」
その王の言葉に驚いて思わずさくらを見た。さくらはぴくりとも動かず、そのまま聞いていた。
「お前が日々過ごすヴァレイン王国の王よりお前の活躍する話を聞き、思い直したのだ。この国にはお前が必要だとな。髪色や瞳など大したことではない。」
王はそう言うと書類を持って来させた。
「これよりこの櫻を王家の籍に戻す。長子はお前だ。良いな?櫻。いや、櫻子」
一体何がどうなってるんだ。
「さて、ずいぶん沢山連れて居るが、誰が櫻子の相手かな?」
そう言われて動揺しつつも口を開く。
「王にご挨拶を申し上げます。私はヴァレイン王国四家の後継者、レイアス・グレインと申します。櫻子さんの婚約者は私です。」
「ほう‥四家の一人だったか。しかも北の国か!櫻子はなかなか目が高いな!なぁ王妃」
顔を上げると王妃がこちらを見ているのがわかった。
さくらを睨みつけていて、それを誰も気にしない。王は気づいているだろうに、無視して話を続ける。
「後ろの者は?髪色から察するに、他の者も四家のようだが」
「‥はい。一ノ瀬家の後継者一ノ瀬ハルト、アウガス家の三男リア・アウガス、降谷家の五男降谷シオン。皆私の‥学園での友人です」
さくらはそう言って皆を紹介した。
「友人が出来たのだな!皆、櫻子を心配してついて来たなんて素晴らしい友情だ。良い日々を過ごせているようだな」
王の真意がわからない。
ここだけ見たら、娘の交流関係を喜ぶ父にしか見えない。
さくらから聞いていたのと随分印象が違っていて動揺してしまう。落ち着かなければ。どこで何が戦争の引き金になるかわからない。
「詳しい話は夜会で聞かせてくれ。この後のことは撫子に任せよう。久々に姉妹で交流するといい。櫻子、会えてよかったよ」
「‥はい、失礼致します」
立ち上がったさくらの後を追いかけるようにその場から出た。
広間を出て通された広い応接間のようなところでも、さくらは何も話さなかった。
コンコン
扉を叩く音がして、俺が対応した。返事をして扉を開くとそこには女性が立って
その女性は目の前に座るさくらと瓜二つだった。いや、よく見たら目元が少し幼いかな、言われないとよく似ていた。
写真で見たよりもっと、実物はそっくりただった。
「櫻子姉さま‥!!!撫子はとてもお会いしたかったです!!」
大きな声でそう言って、一目散にさくらに抱きついた。
「ああ、せっかく姉さまが帰って来てくれたのに父と母のあの様子は何ですか!!長子に戻すだとかなんとか言って身勝手すぎます!あの化け狸みたいな父せいで‥」
呆気に取られる俺たちを他所に、さくらは笑って受け入れている
「撫子、元気そうだな」
「姉さま!!!」
ぎゅーぎゅーと抱きついて微笑んでいる。
「帰ってきてくれたと思ったら、婚約者だとか友人だとか姉さまの周りをブンブンとコバエが‥‥だから私は王国に行くのは反対だったのです!!!」
「こ‥」
コバエってもしかして俺たち?
思わず皆と目を見合わせてしまう
さくらは心優しい妹と言ってなかったかな?
おかしいな‥全部が聞いてたのと違うな‥
「撫子‥私はこの国での居場所はないんだ。この国を継ぐのは撫子なんだよ」
「姉さまが王になられるならもちろん撫子は従いますわ!もちろん私はいつでも姉さまの味方ですわ」
こう聞くと確かに優しいのかもしれない
この国の中にもさくらの味方がいたのだと思うと、嬉しくてたまらない。
「撫子。改めて紹介するよ。」
「いえ!先程の謁見で聞いておりましたから紹介は不要ですわ。で、貴方が婚約者?」
妹は値踏みするような顔で俺を上から下まで見る。
「で、どれが姉さまの本当の想い人なのですか?全員ですか?」
「こら!撫子」
「姉さまのことならなんでも分かりますわ。この方は姉さまの好みではないです」
そう言われて胸が苦しくなった。やっぱり俺はさくらの好みじゃないのか。そう周りに思われるのであれば、ハルの方が適任だったのかもしれない。
「撫子さん、俺は本当にさくら‥櫻子さんを愛してます。櫻子さんもそうだから婚約したんです」
動揺してるなんて見せてはいけなかった。今ここで認めても、王の前で宣言したことは変わらない。
「そうだよ、きちんと私たちは好き合って婚約したんだよ」
「‥姉さまがそう言うなら」
不服そうな顔をしているが、ひとまず納得したようだ。
妹はさくらの横に立ち、俺は後ろをついて行った。
この城の中はどこで誰に見られてるかわからない。絶対にハルとさくらを二人きりにしてはいけないと思った。
「寝泊まりしていただく部屋はこちらですわ」
そう言って長い石の廊下を進んだ。どれだけ進んでも先があるようだった。
「姉さまと婚約者はここへ。もちろん同じ部屋でよろしいですわね?」
その言葉に澱みなく頷き答えると、妹はまた不服そうに鍵を手渡した。
「他の方は隣に一部屋ずつ。もしくは大部屋がありますがどちらがよろしいかしら?」
「‥大部屋の方がいいと思う。」
「そうですわね、私もそう思いますわ」
さくらと妹が頷き合い、3人を向かいの部屋に案内していく。
「準備ができたら庭園でお茶をしよう。こちらに来てくれ」
ハルたちに言って、俺たちは同じ部屋に入った。
妹はまた夕食の時に。と言って去って行った。
部屋の中は広く調度品も美しい。陶器が有名だと言っていただけあり、陶器のものが多かった。
「来てくれてありがとう、一緒に来られて嬉しいよ」
さくらは俺に微笑む。部屋の中でも見られている可能性があるのか、と寒気がする。
「俺の愛しい人のためならどこまででも行くよ」
頬を撫でてさくらにキスをする。
ここまでする必要があるかと思うが、さくらの警戒心は尋常ではなかった。
ベッドは二つ並んでいた。そこだけは安心したような、残念なような気持ちだった。
部屋の扉が叩かれてハルたちが入ってきた。
まだどこか固い表情の彼らと共に広い庭園に出た。
「‥ここなら恐らく誰にも聞こえないだろう」
庭園の真ん中で紅茶を囲みさくらが言った。
姿勢はあくまで崩さず、笑顔で話している。
それに頷き、同じように会話をした。
「なぜ櫻子さんを長子に戻すなんて‥」
「恐らくこの婚約が嘘だと思っているのだろうな‥少しでも怪しければ偽ったと糾弾して私を残し、王国に貴方たちを送り返すつもりだろう‥」
「‥そんな‥」
人の良さそうな王に見えたが、一国の主がそう甘い訳はなかった。ただ叔父に懐柔されて今回の件を起こしたのではないようだ。
「‥今頃になって私の能力を他国に譲るのが惜しくなったんだろう‥書類1枚で私が長子になろうが、撫子の支持は変わらないからな‥」
その時、花の後ろから人が飛び出してきた。
思わず身構えて立ちあがろうとしたが、人影はさくらを目掛けて剣を突き上げた。
庇うために手を伸ばした時、さくらが声を出した
「叔父さま、ご無沙汰しております」
その声で剣は止まり、さくらの背中に刃先が触れた。
「さくらっ」
刃先で切れたのか、背中側に傷が出来ている。軍服ならもう少し耐えてもいいのに脆いのか、しっかり穴が空いていた。
俺が思わず傷を見ると、叔父と言われたその人間は口を大きく開けて笑った
「まさかお前が、男を連れて帰る日をこの目で見るとはな!」
軍服を着た大柄の男が笑っている。
どことなく王妃に似た風貌のその人は、さくらの叔父だと言う。
「叔父さまはお変わりないようですね」
立ち上がって礼をしようとしたさくらを手で静止した
「やめろ。お前は今は形式的には皇女だ。配下のものに頭を下げてはいけない」
「‥はい。すみません、叔父さま」
さくらは諌められて姿勢を直した。いつもより淑やかに目を伏せている。相当叔父が怖いのか、そう躾けられているのかわからない。
その人は剣を鞘に納めると俺たちに向き直し、腕を胸に当てて礼をした。
「此度は我が国の皇女のためにここまでご足労いただき感謝いたします。私はこの国で国防を担っている大臣の有栖川です。姫は姪に当たりますが、私自身はただの軍人です。」
そう言われてその姿に、さくらに似た雰囲気を感じた。この叔父に育てられたというのは間違いないらしい。
「で、貴方が姫の婚約者様ですか。何度か交流の場で見たことがありますね。」
「ご挨拶が遅くなりました。レイアス・グレインと申します。」
肩の怪我が気になるが、慌てふためいている場合ではなかった。
その人は妹と同じように俺をしっかり見て、他の3人も見る。
「ここだけの話、貴方達が王の間に並んで入ってきたとき、私はてっきりそちらが姪の相手だと思いましたよ。」
そう言って指を指す先にはハルがいた。
またそれだ。妹も叔父もさくらの趣味を分かりすぎていないか?どれだけハルはさくらの趣味にぴったりなんだ。
「叔父さま、冗談が過ぎます。彼に失礼です」
さくらが諌めるとさらに笑った。
さくらの好みは昔から変わっていないのか、叔父は笑ってはいるが全く俺との婚約を信じていないという宣言にも聞こえる。
「彼女を口説き落としたのは俺です。有栖川様から見て、好みではないようで残念ですが‥」
「いや、これは失礼しました!グレイン様には、それだけの魅力があると言うことなんでしょうなぁ」
俺の言葉に首を横に振って笑った。
「まぁ仲は良いようで何よりですよ。我が国としては姪で結べる縁ならこの中のどれでも構わないんです。とにかく姪の子が赤くなければそれでいいんですから」
「なっ‥」
「叔父さま。まだ婚約したばかりの身には余る言葉です。」
「そうだな、悪かった!ではまた夜会で。」
反論の言葉を出しそうになったハルを制し、さくらが前に出て言った。叔父は笑って居なくなった。
「‥あれくらいは想定してたよな。」
推し黙っている全員に聞こえるように言った。自分でも手に力が入っているのがわかる。
この国は俺たちやさくらを利用することしか考えていない。
骨の髄まで利用しようと思っていることだけは確かだ。
そしてそれを恥と思っていない。当たり前だと言う口ぶりだった。
多少は思っていてもあそこまで言わないのが普通なのではないか。この国では、俺たちの常識は通用しない。
「‥すまない。あれでも叔父は化け物と呼ばれて生まれてすぐ殺されるはずだった私を育てる程度には人情がある人なんだが‥」
「櫻子さん、とにかく傷の手当てを‥」
ハルがそう言う通り、服から見える傷からはまだ血が流れ出ていた。
新年祭でハルを庇って負った怪我を気にしていなかった理由がわかった気がする。
「叔父は怪しんでいる。私の好みが‥いや、とにかく、グレイン家が婚約者を名乗った以上、それ以外の男性に肌を見せるのはまずい。レイに頼むよ」
「‥そう、だね」
「明日は外遊の予定だ、皆と私の国を見たい。それだけを楽しみに‥今夜はやるしかない‥」
立ち上がって庭園を後にした。
ハルは拒まれた手をしばらく見つめていた。




