懇談会②
会場に戻ると、人々がざわめいていた。
貴族達は遠巻きに見ていて、中心には人だかりがある
僕が近づくとレイとシオンとリア、教授たちが女性を囲んでいる
レイが抱き上げている人は、体から出た血でそこらじゅうを赤に染めていた。
下を見たら全部赤い。
しかしそれ以外は先程まで見覚えがあった。黒いドレスのその人は、さくらさんのように見えた。
「さくら‥!」
「レイ‥揺らしちゃだめだ‥」
さくらさんの肩を抱き上げてレイは泣いていた
リアはさくらさんの体にジャケットを掛けて、手を握っている。
僕が近づいて地面に膝をつけると、シオンが近寄ってきた
「どう‥どうして?」
「‥ハルを逃したあと、そのまま男を抱き留めたんだよ」
向かい合わせで手榴弾を挟む形になったから‥
僕はシオンに制止されても構わずリアのジャケットの下を見た。
そこは本来なら肌があるはずなのに、大きくえぐれていた。
「俺たちが後ろにいたから‥守護のない俺たちを巻き込まないようにしたんだよ‥」
レイがそう言って泣く。
至近距離で手榴弾の破片を浴びたら、皆大怪我だったことは間違いない
僕は力無く垂れる櫻子さんの手を握った
「まだ息があるんだ‥」
シオンがそう言って泣く。
耳を近づけると、呼吸の音がする。
「さくらさん‥さくらさ、どうしよう僕のせいだ‥こんな‥いやです‥僕を一人にしないで‥!」
僕が手を握り叫ぶ
そうしたら、手が強く握り返してきた
僕が泣きながら手を握る
シオンが息を呑む声がした
「は、なんだこれ‥」
レイがそう言って顔をあげた
長い髪の毛先から髪が赤になっていく
それは血のような、鮮やかな赤色だった
それが赤くなるにつれて、手や顔の色が良くなる。
「どう‥なって‥‥‥」
もう誰も喋れなかった
口元についた血はそのまま、ただ眠っているような姿になった。リアが恐る恐る胸にかけたジャケットを外すと、そこは布だけが破けて皮膚が見えていた
僕と繋いだままの手が強く握られて、ゆっくり目が開いた。そこには真っ赤な瞳が輝いていた。暗くて赤い、輝く赤色だった。
しばらくして目を閉じた。気を失ったらしい
髪色がまた赤から黒へと戻っていった。
そこには寝ているさくらさんと、内臓をあたりに散らばらせた男の亡き骸が残っていた。
「どうなってるんだ…」
レイが腕の中のさくらさんに向かって言う。
「‥生きていてくれるならなんでもいいよ」
僕はそう言ってまた泣いた。温かい手、脈打つ心臓。それだけでよかった
さくらさんは念のため救護室で診断を受け、家に帰された。
無傷の僕らは血まみれのその会場を後にした




