第2話『蛍火』
結論から言うと、俺は転生したらしい。
もちろん、転生した当時はこれが夢なんじゃないかと疑ったものだ。
しかし既に転生してから4年が経った。
流石に、夢ならばもう覚めている頃だろう。
故に、俺は転生した。
「フェイ様、何を読んでいるのですか?」
今の俺の名前はフェイズ・ルゼリアと言う。ちなみにフェイというのはあだ名だ。
ルイス家は地方にある、かなり大きい街の管理を任されているらしい。
俺はその家の三男として生まれた。
今話しかけてきた子は俺の世話係を任されている女の子で、名前をクリス・ミードルと言う。
「これ?魔法の入門書だよ」
そうそう、この世界には魔法が存在するらしい。
俺はある目的の為に、出来るだけ早く魔法を使えるようになりたかったため、父さんからクリスと一緒ならという条件で家の中を自由に歩き回っても良いと言われたその日から早速、家にある図書室に訪れていた。
話しかけられた俺は読書を中断し、読んでいた本をクリスにも見やすいように少し掲げながら本の題名を答える。
するとクリスは少し目を丸くし、驚いたように声を上げた。
「もうそんな本を読んでいるんですか!?私がフェイ様くらいの歳だった頃は児童用の絵本しか読んでませんでしたよ?やっぱりフェイ様は凄いですね〜」
俺は良く大人っぽいと呼ばれる。
俺からしてみれば中身は30過ぎのおっさんだから当たり前だろうと思うのだが、流石に転生の事を話しても信じて貰う事は出来ないだろうし、何も言うことが出来ずにもどかしい思いをしている。
(ふむ⋯⋯魔法を使うための第1歩は魔力を知覚すること、か)
本にはそう書いてあったが、その肝心な知覚方法が載っていない。
本には、身近の魔法が使える人に教えて貰おうと書いてある。
なんて他人任せな本なんだ⋯⋯と思いながらも、俺はダメ元でクリスに頼ってみる事にした。
「ねぇ、クリスって魔法使えるの?」
「魔法ですか?はい、簡単な家事魔法なら使えますよ」
ダメ元で聞いてみたが、どうやらクリスも魔法を使えるようだ。
家事魔法なんて物があるなら、俺が想像していた以上に魔法を使える人は多いのかもしれない。
「じゃあさ、魔力を知覚する方法とかって知ってる?」
「もちろんです。⋯⋯よろしければ、私が教えましょうか?」
「え、いいの!?じゃあお願い!」
年甲斐もなく、少しはしゃぎすぎてしまった。
クリスから微笑ましそうな笑みを向けられてしまい、少しだけ恥ずかしい。
「ではフェイ様、お手を拝借しますね」
クリスはそう言うと、俺の両手を自身の両手で包んだ。
この状況ではどうしても、前世の最期を思い出してしまう。
「少し驚くかもしれませんけど、我慢してくださいね」
「?、何を⋯⋯って何だこれ!?」
俺が言葉を言い切るよりも早く、何か温かい物がクリスの両手から俺の身体に入ってくるのを感じて、思わず手を引きそうになった。
「何か、温かい物が俺の体に⋯⋯」
「我慢してください、フェイ様。それは私の魔力です」
「これが、魔力⋯⋯?」
「はい。他人の魔力の感覚を知る事で、身体に馴染んで知覚しずらくなっている御自身の魔力を知覚しやすくするんですよ」
「な⋯⋯なるほど」
1分程でクリスは手を離し、同時に温かい物が流れてくる事は無くなった。
だが、先程まで注ぎ込まれていた魔力は俺の身体の中に留まっているのか、身体が少しポカポカと温かい。
「フェイ様の身体の中にはまだ少しだけ私の魔力が残っているでしょうから、次はその魔力を使って魔法を使ってみましょうか」
「魔法!?分かった!」
魔法と聞くと、やはりどうしてもテンションが上がってしまうのは、俺が男だからだろうか。
「では、家庭魔法の『光球』を使用してみましょう。いいですか?魔法を使用する際に最も重要なのはイメージです。
空中に光る球体の様な物をイメージしてみてください。そして、魔力を少しずつ身体の外に放出するんです」
「光る、球⋯⋯」
なるべく鮮明にイメージしようと、俺は目を閉じた。
そこでふと、前世の事を思い出す。
あれは確か、両親がまだ生きていた頃⋯⋯家族でキャンプに行った時の事だった。
川へ水汲みに行くと、沢山の光の玉が浮いていた。
あまりに幻想的だったので水汲みも忘れて見入ってしまい、後から母さんに拳骨を喰らってしまったのを覚えている。
「フェイ、様?⋯⋯何これ、綺麗⋯⋯」
クリスの声で我に返り、俺は目を開けた。
すると、図書室は無数の幽けき光に包まれていた。
「蛍⋯⋯?」
思わず、その言葉が口から溢れ出る。
それ程までに、この光達はあの時に見た物に似通っていた。
光は数秒で消えてしまい、その後急激に眠気が襲ってきて俺はその眠気に抗えず、その場で意識を手放した。
第2話をご覧頂きありがとうございました!
面白いと思っていただければ幸いです。
まだまだ拙い所はあると思いますが、ご愛読してくれると僕が狂ったように喜びます!




