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何気ない日々の片隅に②

 晩ご飯を食べながら、ふいに久志の方を見る。言っちゃなんだが手抜き料理の今日の晩でも、美味しそうに食べてくれるのはありがたい。しかも、こんな時間もなんやかんや好きなんだと実感する。


「どうした?」

「ん?あっ、えっと……」


しばらくぼーっとしていると、私の視線に気づいた久志がそう聞いてくる。そんな長い時間見ていたとは思いもしなかった私は、少し恥ずかしくなってキャベツを頬張る。


「いやぁ、最近大したもん食べてないのに美味しそうに食べるなぁって思ってな。」

「そうか?まぁ、1人頭1食200円を目標にしてたらな。でも満足してるで。」

「そう。それならいいんやけど。」


上手くはぐらかせたかな。


 そう。悩んでいたのはそんなことではない。話は小豆島での夜まで遡る。


 男女で分かれて部屋を取っていたから、もちろん私たちの部屋では恋バナが始まるわけで……


「Qと桜ってさ、ラブラブって感じせぇへんよな?」


楓が急にそんなことを口走り始めた。すると音羽やきいもそれに乗っかって、


「それな。熟年夫婦みたい。」

「日常会話に『そろそろ結婚するか〜』みたいな感じの話も出てきそう。」


なんて言い出すのである。


 まあ私たちは互いに「好き」とかは言ったことがない。抱いている感情は、広義的に「好き」なんだとは分かっているが、その要素一つ一つを伝えあっている、分かりあっているって感じ。だからこそ、ラノベみたいなラブラブチュッチュしてるカップルみたいにはならなくて、悪く言えば倦怠期にも見える感じになっているわけだ。


「まあ、楓とか音羽たちみたいに『好きー!』って感じはないかも。」

「ってことは?」


分かりきっているのに、楓は悪そうな笑みを浮かべながらそう聞いてくる。私は恥ずかしくなって枕に顔を埋めるが、多分言わないと終わらせてくれないんだろうなと思って言うことにした。


「愛してる……ってこと……なんやと思う。面と向かっては言ったことないけど……」

「「「……」」」


無言になる3人に向けて、私は顔を上げる。苦笑いを浮かべる3人。そしてきいが口を開いた。


「おっも……」


 なんてことがあったのだ。それから私は、「私ってもしかしてめっちゃ重いんかな」と思い始めたのである。久志はこれまでの経験上、めっちゃライトな付き合いをして欲しいんだと思う。私もその方がいいし、別の異性と一緒にいたって何も思わない。だから軽いんだと思っていた。けど、きいの言葉で不安になったのだ。


「私って重いんかな?」


気づいたらそんな言葉が零れていた。

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