こころを綺麗に②
今回潜る施設に到着して、先輩を待つ。併設している水族館で時間を潰していると、先輩がやってきた。
「お久しぶりです。」
「今日はよろしくお願いします。」
交流会以来の顔合わせになる先輩にお辞儀する。そして、施設の人にも挨拶して、説明を受けた。
水着に着替えて、ウエットスーツとか諸々の準備をする。今日はタンクは背負わないので、少しだけ身体は軽いが、果たしてこれで潜れるのか不安だ。
「それじゃあ、階段まで行こっか。」
先輩の背中を追って、海岸線を歩いていく。澄んだ潮風の香りと、時折聞こえてくる波の音が心地いい。普段生活している環境とは程遠い環境だからこそ、心が綺麗になっていく気がする。
波打ち際でフィンを履き、泳ぎ始める。今回は海を中から見るのではなくて、上から見る番だ。並に揺られながら沖へ沖へと進んでいき、時折軽く潜ってまた浮上してを繰り返す。そこら中にいるベラやキュウセン、そしてキジハタ立ちを眺めながら進んでいくと、やがて大きな岩に辿り着いた。ここには沢山の根魚がいるのが、上から見ても分かる。
(めっちゃおるやん。)
海の中からでは見えない世界。全体を俯瞰して見れるようなそんな世界。また違う楽しみだ。
そして先輩は言っていた。スキューバと違うのは魚を捕れる点だと。
俺は1度潜って、魚たちの近くに近づく。すると、ベラたちが逃げていって、捕まえることなど到底できそうにない。
(もう1回)
もう一度潜ってみても結果は同じ。近くで見ることは出来ても、網を構えたら素早く逃げていく。そんな攻防が何回か続き、結局俺が諦めることに。
そして岸に近づき、1度休憩がてら座った。スキューバダイビングとは違う世界。これもこれでいい。そう思えるほどには楽しい。1度息を吐くと、浮き上がってきた先輩が聞いてくる。
「2人とも疲れどんな感じ?」
「ちょっと疲れてきたかなって感じです。」
「まだ行けます。」
雄之助はまだ余裕そうだが、俺は寝不足が少し響いていて疲れが溜まってきている。
「それじゃあ岸沿いに泳いで戻ろっか。」
「「了解です。」」
また潜ってゆっくりと戻っていく。水面を流されるように進んでいくと、また同じように魚たちの群れを見つけたり、クラゲと戯れたり。先輩は先輩でウミウシを見つけていたりして、海を満喫しながら、最初に潜り始めた場所にたどり着いた。
「もう終わりか。」
そう呟くと体に疲れがどっとやってくる。日はもう傾きそうになっていて、それだけの時間潜っていたんだと実感した。
海から上がって道具を脱いでいく。そして俺は海に向かって
「海だぁ〜!」
って叫ぶフリをした。




