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端的に言ってアホである⑤

 雨だ。しかもそこそこ強めの雨だ。パラパラって感じじゃなくてザアァァって感じの。道路には水たまりがあちこちにできていて、そこそこ大きいやつもちらほら。


「傘忘れたの?」

「あ、はい。傘忘れてしまって。」

「それは残念。止むまで時間かかるから中で待っておいたら?」

「そうさせてもらいます。」


店長さんとそう話して中で待つことに。椅子に座ってWeb小説を読んで暇を潰す。プールでは選手コースの練習が始まっていて、陽気な音楽が鳴っていた。今日はパラパラか。あ、店長踊ってる。


 しばらくすると、電話がかかってきた。


「もしもし桜?どうした?」

『どうしたも何も。傘もってへんやろ?どーする気なん?』

「どーするも何も、止むまで待つつもりやけど。」

『止むん明日の朝やで。』

「……え、マジ?」


桜から告げられた言葉に、さすがに驚愕する。まあ選手コースの練習が終わるくらいには止んでるか弱くなってるだろうと思っていたけど、まさか朝までコースとは。


『持ってこっか?私今日はバイトないし。』

「ええん?」

『ええで。ほんじゃ、30分ぐらい待ってて。』


そう言って桜は電話を切る。すると顔の横からぬっと顔が出てきた。


「彼女ですかい?」

「うおっ!」


驚いて思わず距離をとるが、すぐに頭を下げてスマホを机の上に置く。


「いやぁ、驚かせてごめんね。で、彼女?」

「ですけど。傘もってきてくれるみたいです。」

「よかったね〜。優しい彼女さんで。」


生暖かい目で見られているのはわかっているが、こうなった以上しょうがない。店長に桜のことを知られるのも時間の問題か。


 またWeb小説を読みながら時間を潰していると、桜から「着いた」との連絡がきた。俺は荷物を持って出ようとする。


「おっ、やっと来てくれたんか?」

「来ないでくださいね。今の店長の格好、分かってます?」

「ん?水着だけど。」

「そう、ブーメランの水着ですね。変態ですよ、外に出たら。」


そう言葉で制したら、「ちぇー」って言いながらプールに戻っていく。


 プールの管理室から出たら、すぐそこに桜が傘をさして待っていた。


「お疲れ。災難やったな。」

「ほんまそれな。あれ?俺の傘は?」


そんな桜の手には、今さしている自分の傘しかない。俺の分の傘がない。


「ほんまやなー」


白々しくそう言う。わざとやなと思いながらため息をつき、俺は靴を履いた。


「じゃあ半分失礼して。」

「……うん!」


これまで幾度となくしてきた相合傘。肩を寄せ合い歩幅を合わせて歩く。仕組まれてこの状況になったと分かっていても、これが楽しく感じてしまう。やはり俺は端的に言ってアホである。


「わざとやろ?」

「それ言うな!」

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