楽な飯とはきっとこれ
『いただきます。』
毎週水曜日は桜が全休なので、先端のメンバーと一緒に食べることが多い。今日も横井と葛西、そして大本とベンチに座って食べている。
「由良の弁当って、いっつも彼女と同じだよね?毎朝作ってるの?」
大本は俺の弁当を覗き込みながらそう言う。今日の弁当は簡単に作った海苔弁。ご飯にキャベツと海苔をのせて、その上にフライを乗せただけのものだ。
「まぁ交代で作ってるな。1日ごとに料理担当交代して、どっちかに負担が偏らんようにしてる。」
「「「へぇ〜」」」
これは高校時代からずっとやってきてることだ。お互いに担当を分けることで、そこで揉めないようにする。しかもお互いがお互いの担当を分かっているから、フォローし合えたりもできる。ずっとやってきていることだから当たり前に思っていたが、どうやら珍しいことらしい。
「でも今日は俺だけやから簡単に終わらせてんで。しかも、桜、朝起きてこんかったし。」
「全休やったっけ?そら寝とるな。」
「そもそも今も起きてるかすら怪しいやろ。」
どっかから不穏なオーラを感じるけど、まあ気にしない気にしない。朝飯作っといたんやから許してほしいわ。
揚げ焼きにしたフライとご飯を一緒に食べる。こういうシンプルな料理が結局美味しいのは何でやろ。毎日これでもええわ。
「由良みたいに大学一緒に行ったカップル何組かおるけどさ、なかなか会われへんみたいやで。」
「俺の知っとるところもそんな感じ。」
「俺が知ってるところも。てか、由良みたいに毎日のように会ってる方が珍しいかもな。」
「マジか。こういうのって珍しいんや。周りが逆にこんなんばっかやからさ。」
奏は毎日のように楓と会っているらしい。お互いの弁当を作るのはもちろん、サークルも同じところに入って活動しているだとか。カレンと音羽は違う大学だから、大学では会えないけど夜にお互いの部屋を行き来していたりするらしい。高校時代にできたカップルの生き残りはほぼ俺たちだけになっているっぽく、聡とかと喋ってたら「まだ付き合ってんの?」とか言われた。
「まぁ、お前は特に珍しいかもな。」
「それはそう。」
「ここまで来て一緒に暮らしとる時点で大分ね。」
3人から羨ましそうな視線を向けられて少し恥ずかしくなる。
「お前らもすぐ出来るやろ。どーせ。」
「「「そんな簡単なことないて。」」」
俺たちはそのあとも講義開始ギリギリまで喋りながら食べた。案の定、講義には少しだけ遅れた。