端的に言ってアホである③
「あっ」
「ん?」
晩ご飯の準備をしようと冷蔵庫の中身を見てみたはいいものの……
「何もない。」
「あちゃー、買い物行くん忘れてたー。」
冷蔵庫の中身は空っぽ。そんでもって、冷凍庫には冷凍餃子が1人前しかない。2人分の飯にはならない。
さて、何を作るかとなるとこの時間から買い物に行かなくてはいけない。けど、車校からも帰ってきて、せっかくアニメを見始めた今、買い物に行く気になんかなれない。
「どうする?買いに行く?」
「ん〜、適当でいいか?」
「いいよー。」
棚の中から素麺を出して、それを見せる。これはもちろん、小豆島で買ったものだ。
「これでいいか?」
「いいよー。私も買いに行くん嫌やし。」
「じゃあもう2話ぐらい見てからやな。」
「あーい。」
晩ご飯のメニューは決まったので、とりあえずアニメ視聴を再開。ベッドにまた寝転んでアニメを見る。
こんな生活を続けたら怠惰極まりない大学生が2人も生まれてしまうのが目に見えている。夏休み明けが今から楽しみではあるが、俺も同じだろうから怖いものだ。
結局2話で終わることなく4話見てしまって、時間も遅くなってしまった。でも、作るのは素麺だ。ぱっぱと作れる。
サッと茹でて氷水で〆て冷やして、それを大きい器の中に入れる。
「はーい、できたぞー。机の上片付けてー。」
「ういー。」
アニメのオープニングが流れているPCは床の上に置いて、机の上を片付ける。そしてつゆと器を机の上に置いた。
「「いただきます!」」
手を合わせて食べ始める。たまにはこんな手抜き飯もいいなとか思いながら、でも物がいいから美味いなとか思う。
「小豆島の素麺って有名やもんな。」
「うん。やからってことでもないとは思うけど、美味しい。」
「やな。最高に美味い。こんな素麺食べんの初めてやな。」
そこら辺のスーパーで食べるのとは違う。だからこそ、これだけで十分だ。
そんな素麺を食べたあとは片付けと、そしてまだ続くアニメタイム。いつもならくつろぎながら見ているが、今日は少しだけやることがあるのでそれをしながら。
「先輩から頼まれたん?」
「そうそう。うちの代から4人ぐらいで書いてって言われたけど、とりあえず俺は書くとしてなぁ……あと3人か。」
「そう。」
アニメを横目にとりあえず書いていく。けど、あと3人集めるのは正直言って俺には高難度任務と言えるだろう。
「4人ぐらいって言われたんなら、2人で長編2本書いたらいいんちゃう?」
「ん?それでもいいとは思うけど、あと1人頼める人なんて……」
そう桜に目を向けると、少しだけむくれた顔が。
「今目の前にいるのは?」
「……書いてくれるのか?」
「もちろん。」
たったこれだけのために長編を書こうとするなんて。やはり桜も端的に言ってアホである。