端的に言ってアホである②
「おいおい、そんなけしか賭けんでええんか?」
「じゃあ、全部する!」
「俺も全部!」
子供たちの面倒を見るという仕事もあるこのバイトは、この夏休みの間、子供たちの預かり保育もすることがある。そして今やっているのは……
「じゃあ表向けるで〜、せーの!」
ひっくり返した2枚のトランプ。そしてその合計が21に近づけば近づくほど強いこのゲーム。そう、ブラックジャックだ。子供でも理解できるこのゲームは、こういう場合にも使える。
「は〜いブラックジャック〜!全員徴収な。」
『ちくしょー!』
笑いながらチップ(オセロ)を1枚ずつ徴収して、トランプをもう一度くる。そしてまた2枚ずつ配った。
「どうする?消費者金融からまた借りるか?」
「くっ、5枚。5枚ちょうだい!」
「俺は3枚。そんでオールインする!」
まさにギャンブラー。当たり前のようにオールインだ。まだ小学2年生のこいつらに何を教えてるのかって話だが、それは社員さんが教えたことなので、俺には関係ない。うん。関係ない。
「こんな感じでギャンブラーが増えていくんだね。」
「大阪連れていったら終わりすね。数年後に。」
そのギャンブルを教えた張本人がそう言う。誰が言ってんねんって話だけど、俺も俺で楽しいし、子供たちも楽しそうだからいい。親に見られなければなんの問題もないだろう。
「よぉ〜し、次ラストな。」
今のオールインした分は、俺が負けたので結構チップは持っていかれたが、時間も時間。俺は12時には帰って車校に行かないといけないので、これがラストゲームだ。
つまり、そうである。
「「「オォォォォ〜ルイン!」」」
積み上げたオセロを床に叩きつけ、全員がそう叫ぶ。その表情はまさにギャンブラーそのもの。その影は競馬場にいるおっさんや、パチ屋に朝イチからならぶパチカスたちのようにも見える。こんな小学生を作ってしまった俺たちは、果たして善か悪か。いや、悪だな。
トランプを2枚ずつ配って片方は表、片方は裏。そして交換を済ませる。俺の手札は20。ブラックジャックを出されたら俺の負け。
「それじゃあ表向けるで。」
裏に向けていたカードに指をかけ、ひっくり返す準備をする。
『せーの!』
全員がひっくり返して、その数字を見せ合う。結果は明らか。俺の勝ちだ。
結局ラスト1戦は俺(親)が勝利し、トランプを片付ける。ちょうど時間もいい時間で、子供たちはお弁当の時間だ。
「お弁当食べるよ〜!」
社員さんがそう言い、子供たちは嬉しそうにお弁当の準備を始める。そして俺は帰りの準備をした。
「先生!明日も来る?」
「来るけど。」
「じゃあ、明日もギャンブルしようね!」
この子供たち、端的に言ってアホである。