ただまっすぐに⑥
オリーブ公園を後にし、映画村や北の方の石切場跡などを見てまわり、フェリーに乗り込む。
「これでこの旅も終わりか。今回も短かったな。」
「そうやね。」
フェリーの展望デッキのベンチに座り、桜と缶コーヒーを飲みながら話す。目の前では、沈む夕焼けに奏と楓ときいが盛り上がり、音羽とカレンはどこに行ったか知らないけど、まあどーせ船内のどこかでイチャついているだろうという状況。いつも通りといえばいつも通りだが、大学生になっても同じとはどうしたものか。
「今年は去年と違って変なこととかはせんかったけど、たまにはこんなゆっくりした旅行をするのもいいね。」
「やな。たまにはこんなのも悪くない。でも、たまにはだな。」
「何それ?私との旅行はこれからも波乱万丈なの?」
「かもな。それが嫌なら別れるか?」
「嘘でもぶっ飛ばすよ。」
冷たい笑顔でそう言われるとさすがに怖いけど、まあ、笑って誤魔化す。
船はゆっくりと進み始めて、陸から離れていく。徐々に見えなくなっていく小豆島と夜空に輝き始める星たち。三日月は朧げな雲をまといながら白く輝き、俺たちを照らしている。
「綺麗。」
「うん。めっちゃ綺麗。」
フェリーのライトが届かないところに座った俺たちは、空を見上げながらそう呟く。今日は福井に帰ることはできないけど、そのお代としてはお釣りが出るほどの景色だ。
「ねぇ、久志。」
「なに?」
いつもよりもゆったりとした口調でそう話し始める桜。向けばいつもよりも穏やかな笑みを浮かべている。
「私ね。これからもいっぱい色んなところに久志と行きたい。小豆島もそう。沖縄に北海道。長野の山の上とか、それこそ海外も。もちろん、久志が行きたいところでもいいし、私も久志が行きたいところならどこでも行きたい。」
桜は俺の膝の上に手を置く。
「ねぇ、これからもできるだけ一緒に過ごそうね。ずっとなんて言わないから。そんな独りよがりな願いはしない。だから、できるだけ長い間。」
ずっとと言わないところが、桜の今までの人間関係で思ってきたことだろう。考えざるを得なかったことなんだろう。それに関しては俺も同じ気持ちだ。
「俺からも、永遠なんて言わないから、ずっとなんて言わないから……桜、色んなところに行って、バカみたいに笑いあって、そしてこんな感じでゆっくり過ごそう。」
膝に置かれた手に右手を重ねる。そして見つめあって、また空に視線を戻した。