ただまっすぐに⑤
2日目。今日は小豆島をゆっくりと巡って夕方には帰るつもりだ。
「と、言うわけで」
『せーの!』
その白い風車の下で、ほうきに跨ってジャンプする。そして、写真を撮影した。
小豆島にあるオリーブ公園。ここはアニメの実写版のロケ地にもなっていて、そのキャラである魔女のようにほうきに跨り、写真を撮ることができる。
「はーい!こんな感じでOK?」
写真を撮ってくれた女の人から奏がスマホを受け取り、俺たちはその画面を見る。
『うおおおお!』
7人全員でジャンプして笑っている写真はまるで青春の1ページ。いや、人生の1ページを切り取ったみたいだ。
「すっげー!飛んでるみたい。」
「音羽ちゃん、魔女感出ててええわぁ。」
「誰が魔女って?魔法少女って言いなさい。魔法少女って。」
そう言いながらカレンの頬を抓る音羽のその姿はまさに
「魔女だ。」
「魔女やな。」
「なんも文句言えへん。」
「楓、奏、きい、後でね。」
「「「ひぇっ!」」」
冷たい瞳を向けてくる音羽に若干の恐怖感を覚えながら、車に戻っていく。その途中のオリーブの木の中にハート型の葉っぱを見つけた。
「Q、何見つけたん?」
奏が話しかけてきたので、その葉っぱを見せる。
「へぇー。たまに紛れてんのか。」
「そそ。でも、数は少なそうやな。」
「ふーん。俺も楓にあげよっかな?」
「似合わねぇ〜」
少しだけ顔を赤くしながらそう言う奏に、そう悪態をつく。
結局、奏とカレンもハート型の葉っぱを運良く見つけて、それを気付かれずに道の駅まで持って帰ってくる。そこにはハート型のオリーブの葉をしおりにできる場所があった。幸い女子陣はまだほうきで遊んでいる。
「作るか。」
「やな。」
「もちろん。」
結局作ることにした俺たちは、それぞれ台紙の上に葉を置いて、それをラミレートした。
ほうきで遊んでいた4人が帰ってきて、片付けに行きがてら、俺は桜にしおりをプレゼントした。
「どしたん?別になんも記念日でもないよな。」
「まあ、バイトとか授業とかで家の事ほぼ任せっきりやから。そのお礼。」
「ふーん。」
桜はそのしおりをライトにかざす。そこに書かれている文字は、「幸せ祈願」。桜はため息を1つして、俺に笑顔を向けてきた。
「こんなのなくても、別に幸せやで。」
まっすぐなその言葉に少しだけ恥ずかしくなって、俺は思わず顔を逸らした。