ただまっすぐに③
聞こえてくる地元の高校のブラスバンド部の演奏。そして少年少女たちが騒いでいる声。土庄中学校のグラウンドで行われている小豆島まつりは盛り上がっている。
「何食べる〜?」
「とりあえずたこ焼きとかは食べたいなぁ」
自然とカップル単位に分かれたので桜と行動する。きいは今日は奏と楓について行った。だから2人だ。
「あ、あそこオリーブ牛の試食してる。」
「ホンマや。行こ。」
桜が奥の方のテントでオリーブ牛の試食をしているのを見つけて、俺たちはとりあえずそこに向かうことに。
テントではオリーブ牛が焼かれていて、その出来たのがトレイの上に置かれていた。1個だけ。
「ありゃ」
「まあ、こんなときもあるわな。桜が食べたら?」
「いや、久志が食べたらええやん。」
「桜が食べーさ。別に他んとこでも食べれるんやし。」
「そーう?」
そんな感じで押し付けあっていたら、なんだか温かい視線が。テントの中のおじさんたちが、生暖かい視線を向けているのに気づいて、恥ずかしくなる。
「じゃあ、じゃんけんで勝った方な。」
「やな。」
「「最初はグー!じゃんけんほい!」」
出した手は俺がグーで桜がパー。桜が食べることになった。
「んじゃ、いただきまーす!」
桜は爪楊枝に刺さった牛肉を口の中に放り込むと頬に手を当てて目を細めた。
「うんまぁ!」
「そんな美味いん?」
「口ん中でとろけるわぁ」
「それはよかった。」
見ればホットプレートで次の牛肉を焼いている。
「次焼き上がんの待つ?」
「いや、他んとこまわろ。」
「久志がそれでええんやったら。」
俺たちは次の屋台に足を向けた。
晩飯兼ライブのアテの屋台飯を買い込んだ俺たちはライブスペースの前に陣取った。そう、今から目当てのライブが見られるのだ。
「みんな、ただいま!」
浴衣を着たその人がギターを肩に下げながら出てきて、マイクを通してそう言う。その瞬間に観客の盛り上がりは最高潮に。グッズを手にする人も少なくない。
そのまま、MCとともにライブが始まり、劇場版の主題歌や劇中歌も歌っていく。その透き通る歌声に魅せられていき、目の前にはアニメのシーンが浮かぶ。そんな夢のような時間もあっという間に終わり、ライブが終わってしまった。
「それじゃあ、これから始まる抽選会や花火大会も楽しんでくださいねー!」
『うおおおお!』
そして大抽選会が終わり、閉会の言葉を待たずして花火大会が行われる海岸に向かった。