表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/146

ただまっすぐに②

「それじゃあ行くぞ〜!」

「「おー!」」


奏のそんな掛け声に反応して車がゆっくりと走り始める。見事にじゃんけんに負けて助手席に乗ることになった俺は、これからどんなことになるのかと思っていた。が、


「なんや、めっちゃ安定してるやん。」


小豆島町のあたり、ちょうど去年来た所らへんを通り過ぎる車は安定そのものだった。


「舐めんなって。俺らもちゃんと練習してきてるから、レンタカーなんて案出すねんから。」


そんな会話をしながら進んでいき、途中で左に曲がった。宿のある土庄港はこのまままっすぐの方が早いはずなのに。


「どこ行くん?」

「ん?あぁ、割と時間あるから寄り道。楓とも打ち合わせしてるからすぐ来ると思うで。」


奏が言ったように、後ろを振り返ると女子4人が乗った車が曲がってきているのが見えた。


「ホンマや。」

「やろ?この先には道の駅があってな、そこでちょっと休憩や。」

「「はーい!」」


 長い1本の下り坂を下っていくと、建物が見えてきた。どうやらあれが道の駅みたいだ。


「特に何もお土産はここで買う気はないからな。スマホと財布だけ持って降りよ。」

「何があんの?」

「ソフトクリーム。」

「「ソフトクリーム!」」


車のドアを開けると、ムワッとした空気が押し寄せてくる。それに外に出ることを拒まれそうになるが、「ソフトクリーム」の言葉を聞いた瞬間に身体が自然と動き出していた。女子陣の車からもきいと桜が飛び出してくる。我先にとソフトクリームを売っているレジのところに向かった。


「「「「ソフトクリーム1つください!」」」」


 全員ソフトクリームを買って、ベンチに座る。暑さで溶けるからとすぐに食べ始めた。


『うまぁ』


この暑さの中食べるアイス以上に絶品なものはないだろう。ましてや、それが海を見ながらとなれば尚更だ。


『うまぁ』


それ以上に言葉はいらない。ただ一言を呟き続けながら食べていく。溶ける前に全部食べきって、ふぅと息を吐き、海を見つめた。


「これからどうするん?」

「とりあえず宿行って、荷物整理したら祭りやな。ライブに間に合ってくれたらええやろ?」

「やっぱそれは外せんよな。」


今年行く、土庄町の小豆島まつりは、この小豆島を舞台にしたアニメの主題歌を歌った歌手のライブがある。これは外せない。


「まあ行こうぜ。まずは宿や。」

「あ〜うん。」

「分かってるけどさ〜」

「うーん」

「ちょっとね〜」

「そうそう」

「ほえー」

『動けへんなぁ〜』


すっと立ち上がるとは反対に、俺たちはまるで根が張ってしまったみたいに立ち上がることができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ