期末テストがやってくる②
「やるか…」
「やるしかねぇよな…」
ごくりと唾を飲み込む。目の前のプリントに書かれているのはロシア語。そう、第二外国語でとっているロシア語のテスト勉強だ。この授業では意味を覚えることはそこまで重要ではないと言われていた。だから、今までは文の中でよく出てくる単語の意味しか覚えていなかった。
それなのに、だ。いざ、テスト対策問題をやってみると意味を覚えていないと解けない問題や単語を覚えていないと解けない問題があったのだ。しかももうテスト1週間前。全部覚えている暇はない。
「これと、これと、これは結構出てきたよな?」
「あとこれもたまに出てきてた。」
同じくロシア語の授業をとっている航生と孝太郎と集まって、配られた単語リストの中から出てきそうな単語をピックアップしていく。
「これさ、名詞より動詞の方がヤバない?変化するし。」
「それな。юとかなるし。」
「でも、規則性はあるから大丈夫じゃない?」
ロシア語は性別によって様々な変化をする。このことはよく知られていることだが、それを覚えておかないとまず点数はないだろう。
とりあえず出そうな単語にチェックを入れてそこを重点的に覚えるようにする。しかし、単語だけが全てではない。
「Дайте мне , пожалуйстаで私に〜をくださいっと。これは覚えとかんとな。」
「せやな。絶対出る。」
これは定型文だ。何かを注文するときに使う。授業中にそんなことを言っていたし、何回も読まされたから出る可能性は高めだろう。
「あとは名詞の対格だな。」
「それは問題ないでしょ?女性名詞はуにするだけだし。」
「その女性名詞を見分けるのが難しいんだよ。」
「基本的にаになるやつしか出さないでしょ?あの先生、優しいし。」
孝太郎が言っていることは的を得ている。ロシア語の担当の先生は、先輩たちからも優しいと有名な人だ。俺はそんな話を知らずにこの授業をとっているが、そんな理由で選んだ人も少なくない。そんな人のテストだ。そんな目向いて鼻向くほど難しいテストとは予想できない。
「せやな。」
そんな単語や活用などをまとめる。あとはこれを覚えるだけや。
「どーする?問題出しあったりする?」
「そーしよーぜ。どうせ家帰っても何もやらんねんし。」
「そうだな。」
俺たちは最終バスの時間までカフェで問題を出し合った。




