ぐらんぶるーに潜りたくて④
まぁダイビングをするにも、自分で準備しないといけないものはあって、今日はそれを買いに行こうと学科のヤツらと集まった。
「久志、どう?」
「普通にキモいぞ、お前。」
「キモいってなんやねん。」
「そのセリフはな、女子が言うから意味があんのよ。男子が言ったらキモいだけや。」
いつものエルパではなく、その隣にあるスポーツ用品店で水着選びをする男子大学生5人。元々8人いたけど…そいつらは近くの釣具屋に吸い込まれていった。うん。そういうことにしておこう。
てことで、男子だけの水着選びとかいう、ラブコメの欠片もないイベントを進行しているが、やはり終わっている。
「いいじゃん。文芸部で書く小説のいい材料でしょ?」
「いや、こんなシーン参考にもならんわ。」
「んじゃ、中一緒に入る?見られたくない同級生が急にやってきたときのシーンの参考に。」
ニヤニヤと笑いながらそう言ってくる鳥羽ニキに軽く舌打ちして、そのカーテンをシャッと閉める。中から「ざーんねん」と聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
てか、釣具屋に行った3人は一向に帰ってこーへんな。どんなけ遊んでんねん。
「久志は買わんの?」
「俺はバイトで使ってる水着で行くから。」
「そういうの、元水泳部って強いよな。」
「中学時代やけどな。水着もまだ生きてたし。」
バイトを始めるにあたって、クローゼットの中を掘り返さないといけないくらいには、奥底深くに眠っていたらしいけど。あの時は杏から大量の文句を受けたものだ。
そもそも、水着なのにだいたい全部が揃うエルパで買っていない理由はただ1つ。どうやらダイビングではぴっちりとした水着の方がいいらしい。それなら安めの練習用水着で十分だろうと判断して、こっちに連れてきた。数人「安い?」ってなっていたけど。
ライセンスを取る以上、やはりこれから潜ることも多くなる。そういう意味ではしっかりした、俺が履いているような生地の分厚めの水着の方をおすすめしたいけど、それはまあ、高い。それに、それはこんな店では売ってないし買うならネットか直販店だ。
「俺もこれで決まり!買ってくるわ。」
「「いてら」」
鳥羽ニキも水着を決めたようでフィッティングルームから出てきて、レジに向かう。あいつらが帰ってくるのはいつかは知らんけど、もうすぐこっちは終わりそうだから帰りたい。
「てか、久志はどんな水着にしたん?」
蒼空は興味津々にそんなことを聞いてくる。写真フォルダの中にあるかな?中学時代の写真。
下の方までスクロールしていくと、懐かしい写真を見つけた。これは卒業記念に撮った、部員全員集合の写真だ。
「こんなん。」
そう言って見せると、見た2人は目を丸くした。
「「パンツやん。」」