アホだから踊る、だから見つける①
入学式の次の日。もう今日から授業が始まる。
「実際この授業は興味ない人には面白くない授業だと思います。合わないなと思ったら、どうぞ、外に出て行ってください。って言っても出て行きにくいのには変わりありませんが。」
最初の時間、俺が取ったのは哲学の講義だ。
哲学は俺がもともと興味のある分野だ。倫理とかそこら辺の授業は嫌いだが、哲学そのものには興味がある。終わりのない学問なんて、そんなのそそられるに決まっているやないか。
「ではまず、哲学または哲学者にどういうイメージを持っていますか?それについて考えてみてください。」
教授は俺たちにそう投げかける。いきなり哲学的なことを訊くものだ。これこそ「答えのない」質問だろう。俺は授業はじめに配られたB5の用紙に「答えのない学問」とか、「例え方が特殊すぎて、1回聞いただけでは何を言っているのか分からない」とか、そういう印象を書き連ねていく。
「あ、今は周りと話していいですよ。むしろそうして意見を交換してみてください。」
教授は歩き回りながら、そう言う。授業初日の一番初めの講義で話せる相手がいるのかとなるが、幸い俺には隣の席に桜がいる。
「どんな感じ?」
「難しそうとか、そんなイメージしかない。」
「あね。」
「久志は?」
「俺はこんな感じ。」
俺はプリントを見せる。すると桜は頷いて、それを自分のプリントに書き始めた。
「何やってんの?」
「こうでもせんとプリント埋まらなそうやから。」
そうこの講義はこれを埋めるだけで、6割が保証される。いわゆる楽単というやつだ。
「なるへそ。んじゃ俺も桜のを…って思っても書いてんの少なすぎやから意味ないか。」
「なんやと?ちょっと表出よか。」
小声でそんなやり取りをしていると、前の席の2人がこっちを向いた。
「2人とも1年よな?よろしく。」
「入学式の時から2人セットだけど、付き合ってるの?」
見た目からして経済のやつだと分かる。なんだろう、溢れ出す陽のオーラが凄い。
「よろしくな。2人も経済?」
「うん。俺は経済経済で、」
「俺が経済経営。お前らは?」
「俺が海洋先端で、」
「私が経済経済。やから一緒やな。よろしく。」
桜は軽くコミュ障を発動している。なんとなく予想できたことだが、やっぱりかって感じだ。
俺たちはそのあと意見を交換して、そのあとの授業も難なく乗り切った。桜が見つけてくれた方法のおかげで、プリントは下まで埋まり、ちゃんと点数につなげることができた。これで6割とか、この講義楽すぎやろ。