久しぶりにやるか③
「お待たせ―!」
「遅いぞー。もう始めてるからな。」
「釣り違うやろ。それは。」
浜の方から歩いてやってきたよっさんは、俺の手元を見てそう笑う。手についた塩を舐めて、俺も竿の準備を始めた。
「久志は何年ぶり?」
「2年ぶりやな。ここは初めて。」
仕掛けを作って、エサのゴカイを針につけていく。今回使うのはジェット天秤と6号の針だ。時期がまだ早いので小さめにしている。
岩をぴょんぴょんと飛び越えて、波打ち際に立つ。潮風を一身に浴びるこの感じも久しぶりだ。
とりあえず軽めにキャスト。足場も悪いのでバランスを崩さない程度にだ。ゆっくりと底を引いてくるように巻いてくると、底の様子が分かってくる。奥から砂、そして藻場。手前になったら巻き上げないと根がかり一直線だな。
「アタリある?」
隣にいる蒼空にそう話しかける。蒼空もキス釣りをしているが、俺と同じような感じだ。まだ5月末だからか、まだ活性が低い。予想はしていたことだが、ここまで厳しい釣りになるとは。
すると、少し海側にいた鳥羽ニキが戻ってきた。
「最悪なんだけど。」
その手に握られてたのはちっさいフグ。食えないし針飲んでるし、ワンチャン仕掛けもろとも持っていかれる、最悪のヤツ。
「おつ!」
「お疲れ様!」
「がんばれよ!」
ここにきているメンバーがメンバーだからか、そんな声が投げかけられる。鳥羽ニキも釣りはよくしているので、フグを手早く外して復帰する。それから日没まで誰一人アタリはなかった。
陽が沈んだので、岩場は危なくなる。俺たちは浜の方に移動することにした。どちらかというと、こっちのほうが俺のテリトリーだ。
「んじゃやりますか。」
リュックを背負いながらキャストして、引いてを繰り返す。するとアタリがあった。でも合わせれない。
「アタリあったぞ。25~35mぐらいんとこ。」
「おーけー。」
情報伝達は欠かさずに、投げて、巻いてを繰り返す。すると、鳥羽ニキが騒ぎ始めた。
「きたきた!」
リールを巻いて引き上げる。すると、白い綺麗な魚体があがった。今日の本命のシロギスだ。サイズは少し小さいが、天ぷらにはいいサイズだ。
「ナイス―!」
今日イチの盛り上がりだ。鳥羽ニキは釣ったキスを袋の中に入れる。そんな姿を見ていた俺の竿にも反応が。
「きたきた!きた?ん?ばれた?」
きたと思ったら反応がすぐになくなる。合わせるのが早かったか?
すると、もう一度反応が。
「いや、きてるきてる!」
巻き上げると、同じようなサイズのキスが。これでボウズは免れた。