なぜもうちゃんとしたレポートを
部屋に響くキーボードの音。そして紙をめくる音。気分をあげるための音楽なんかかけずに、ただただ画面に向き合うだけ。
入学して2ヶ月が経とうとしている。今まで様々な課題が出されてきたが、今回のは訳が違う。そう、レポートだ。
実際、耐久したときに1回書いている。けど、それは先生からアウトライン的なものが出されている状態だったので書きやすかった。けど、今回は違う。今回のレポートは何も出されていない。これについて書けという指示はあれど、大体の構成が出されていないのだ。
「どんな感じ?寝れそ?」
「無理やな。普通にキツいかも。」
「そ。じゃ、今日は先寝とくわ。」
「うん。ごめん。」
桜からコーヒーを受け取り、ラムネを口の中に放り込んでまた書き始める。まだ始まったばかりだ。
半分と少しまで書き終わって、一度長めの休憩をとる。スマホを見て、軽く時間を潰す感じだ。
「当たり前やけど、静かやな。」
夜食を探すためにリビングに出てきたけど、誰もいない。桜ももう寝てるだろうし当たり前か。
目当てのチョコレートは見つからなかったので、パンを焼いて砂糖をまぶしたヤツを夜食に部屋に持ち込む。
「ん〜、うまい。」
一口かじったら口の中に暴力的な甘さが広がり、疲れた脳を癒してくれる。まさに薬だ。
脳の休憩が終わったので、また書き始める。今が1時過ぎだから、3時半くらいには終わるか。そんで、明日は1限から…しんどいな。
なんて思いつつも、やらないといけないものはやらないといけない。これが学生となった者の宿命か。
遠く響く電車の走行音とトラックの重たいエンジン音をBGMに書き進めていく。電気も消して、手元のライトしかつけていない。その分、孤独とか寂しさとか感じるが、ここまでやらなかった俺の責任でもある。学生って本当にめんどくせぇ。
コーヒーがもう冷め切ったころ、レポートを書ききる。
「んあ~!」
隣の部屋の邪魔にならないような声の大きさで伸びをして、ちゃんと保存されてることを確認してから、PCの電源を落とす。そして、コーヒーの入っていたカップと皿を持ってリビングにいった。
なぜか、リビングの電気がついている。消し忘れたのかなとか思いながら扉を開けると、桜がいた。
「あ、終わったんや。おつかれ。」
「何で起きてんの?」
「寝れんかってん。」
手元に持っているホットミルクを飲みながらそう言う。机の上に広がったお菓子の残骸を見る感じ、相当待たせたようだ。
「寝るか。」
「うん!」