部室を掃除しよう!①
「「お疲れ様です。」」
「おつかれ〜!」
「来てくれたんだ。ありがとう。」
週末の授業終わり。普段なら帰っているが、今日は部室に足を運んでいる。部室を開けたのは、木崎先輩と森本先輩で、その他には誰もいない。というか、誰も足を入れられないという感じだ。
文芸部の活動は不定期。何か作品を提出するにしても、最近はデータのやり取りだけで十分だし、製本作業以外に揃う必要があまりない。
だからと言えばなんだが、部室の中はそこら中に本と原稿が散らばっていて、お粗末にもキレイとは言えない。
「ごめんね。急に掃除するとか言い出して。」
「まあ、こんな状況ですしね。空きコマとかで使うとなると掃除くらいはきちんとしといたほうがいいですから。」
そんなことを話しながら、木崎先輩から渡される空き箱や空き箱、空き箱、空き箱…空き箱しかないなこれ。あっ、なんかバドのラケットある。これガットゆるゆるやん。そんなゴミたちを放り出していく。
「ホンマにゴミ多いですね。」
「そうそう。部誌とかそこら辺のアルバム関連は捨てられへんけど、散らばってたりするし。この部屋も古いからね。壁のペンキも剥がれてたりするんだよ。」
桜は森本先輩と一緒に本棚の掃除と整理。横に倒れていたり、ジャンルがバラバラだったりとかなり整理しないといけない感じだ。さらには上にも色々乗っているという始末。
しばらく片付けていくと、やっと足の踏み場が。
「一旦休憩!ゆーすけ!じゃんけん!」
「「最初はグー!じゃんけん!」」
出した手は木崎先輩がグーで森本先輩がパー。
「ぐぬぬぬぬ」
「やっぱり持ち出したほうが負けるんよな。こういうの。」
「うるさい!ゆーすけはいつものでいいよね?2人は?」
「え?」
「何がですか?」
負けた木崎先輩は財布を持ち、立ち上がる。その姿はなんか手慣れているような感じがするが、気のせいだろう。
「飲み物。買ってきてあげるから。」
「え?」
「いいですよ、そんなことしなくて。」
「いいの。ここは先輩に甘えておきなって。」
先輩は笑ってそう言う。
「それじゃ、俺はお茶で。」
「私も同じで。」
「おっけー。ちょっと待っててね。」
木崎先輩は靴を履いて、買いに行く。本当にいいのかなとか思っていると、森本先輩が口を開いた。
「これくらい甘えとけって。まだまだ先は長いんだし。」
「「え?」」
まだまだ先は長い?それはいったい…
「今流れてるのは掃除始めるときに観始めたアニメだ。今日はこれが終わるまでは残るからな。」
木崎先輩の手元のアニメは現在第5話。少なくとも残り時間は3時間くらいだ。
「「え〜っ!」」
明らかになった衝撃の事実に、俺たちは驚愕を隠せなかった。