憂鬱な空と愉快な足取り①
「あ、やば」
ついさっきまで晴れていたのに急に響き始めた音。雨だ。今日は降る予報でもなかったし、大学から帰ってくるときもそんな雰囲気なかったのにいきなり。しかも朝から洗濯物を外に干してしまっている。
急いで窓を開け、外に干していた洗濯物を取り込む。幸い、気づいたのが早かったから濡れていない。
「よかった。」
イヤホンから流れ続ける講義の内容はもうあまり分からなくなってしまったが、あとからスライドを見たらまだ何とでもなる。私はもう一度パソコンに向き合った。
今日の3限は遠隔授業。なのでどこからでも受けれる。4限があったら大学で受けているけど、ないから昼に1度家に帰ることにした。同じ講義を受けている学生もそういう人が大半なので、そうしても別に不思議がられることはない。久志は3限が対面だからまだ大学に残っているが、この前もそうだった。
そんな矢先のこの雨。予報になかったから久志は傘を持っていってないはず。バス停からここまではちょっと距離あるし。
『―このような経緯です。』
あぁ、また聞いてなかった。とりあえず今は集中しよう。
授業が進むにつれて雨もだんだん強くなっていき、2時前にはついに本降りになった。ベランダの柵に叩きつける雨音が大きくなり、イヤホンをしていても聞こえてくるように。もうここまできたら折りたたみを持っていても濡れてしまう。
『それじゃあ最後の話ですね。―』
講義ももう終盤だ。受けながら食べていたパスタはもう冷めてしまった。なんせ1時間経ってるからね。固まりつつあるパスタを一口食べてお茶を飲む。講義を聞きながら、この後どうするか考えていた。
2時半に講義が終わって、退出する。今日はもう予定もないし、普段なら家でゴロゴロして、アニメを見る。けど、今日はそうしない。
1度着替えたジャージから外行きの服に着替え直し、髪を軽く整えて外に出る準備をする。そして久志にメッセージを入れる。
「買い出し一緒に行こ」
これは迎えに行くためのただの口実だ。こんなの本当は必要ないような関係だけど、ついしてしまった。もしかしたら杞憂に終わるかもしれない。けど、たまには、ね。
直ぐに既読がつき、『りょーかい』と返事がくる。その言葉に嬉しくなって、ルンルン気分でバス停に向かったのはここだけの秘密だ。